少女アイドルに熱中する日本 「崇拝」か「小児性愛」か
「あいちゃん6さい(現在の活動名は「あいちゃん7さい」)」は髪にリボンを着け大人のようなメイクを施しているが、まだ非常にあどけない。
あいちゃんのように小規模なステージで活動する少女たちを日本では「地下アイドル」と呼び、それが問題視されることもない。しかし、ここで見られるある風潮が未成年者を危険にさらしていると人権団体は訴える。日本では幼い少女を性の対象にすることへの危機意識が極めて乏しいというのだ。
日本では児童ポルノの「単純所持」が2015年にようやく摘発対象となったばかり。先進国の水準に追いつかんとするが、子どもの性を商品化するビジネスは法の目をかいくぐり、当局とのいたちごっこが続く。
ある地下アイドルのライブ。セキソウイチロウさん(当時40)は男性ファンの人混みの中にいた。週2回はステージに立つ少女たちを見に来るという。彼自身はアイドルの女の子たちを応援しているだけで何らやましさはないと強調するが、中には彼女たちを性的な対象として見ているファンもいると話す。
「例えば、ここにいるのと歌舞伎町のキャバクラにいるのと本質としてはたぶん変わらない。あとは本人たちがどう捉えるかだけの問題」だと語った。
16歳から活動しているアイドルの姫乃たま(Tama Himeno)さん(25)は、自身のライブに来る男性たちはアイドルを崇拝し、普段はとることのできない若い女の子たちとのコミュニケーションを切望しているのだと語る。
使用済みのパンストを3万円で売ってくれと持ち掛けられたこともあるというが、ファンの大半は「純粋」だと擁護する。
「小さい女の子を崇拝するというのは、確かにほかの国よりはある」と言い、「源氏物語(The Tale of Genji)」を例に挙げた。11世紀に誕生したこの古典文学は、貴族の男性と幼い少女を含むさまざまな女性との恋愛関係を描いている。
■外国人には「異様な光景」
男性たちは「どこにでもいるような女の子」と触れ合うことに引きつけられていると話すのは、あいちゃんのマネージャー、大隈秀徳(Hidenori Okuma)さんだ。
「(ライブに)高校生アイドルが出てくると、行ってしゃべったら楽しい。それでみんな集まってくる」と大隈さん。「今だと小学生グループも出ていて(中略)私は小学生の女の子が好きですって堂々と言う人が多くて。そう言える空間が用意されている」
あいちゃんの母親ヤマザキマミ(Mami Yamazaki)さん(当時26)によると、あいちゃんがアイドルになりたいと思うようになったのはスターの座を目指して努力する少女たちを描いたアニメ「アイカツ」がきっかけだという。
「テレビを見れば子どもたちがドラマやCMに映っていて、子ども服の雑誌を見ればきちんとお仕事としてモデルをやっている子どもたちがいる」、「(あいちゃんがやっていることは)雑誌やテレビで映っている子どもたちとあんまり変わらない」とヤマザキさんは語る。
自身も10代の頃にバンド活動をしていたというヤマザキさんは、娘の活動はアイドルとして成功する道だと考えている。
まれに見る成功を収めたアイドルグループの一つ「AKB48」が示してみせたように、こうした活動は有名になるための手段となり得るのかもしれない。彼女たちが秋葉原の小劇場から活動をスタートさせたとき、AKB48の最年少メンバーは11歳だった。
しかし、地下アイドルのライブに訪れる観客の圧倒的多数は成人男性だ。彼女たちの活動が成功への足掛かりだとするならば、それは少女たちが成人のファンと交流したり、一緒に写真を撮ったり、Tシャツの背中にサインをしたりしなければならないということでもある。
外国人には「異様な光景ですよね」と姫乃さんはいう。一方で、ファンからの性的なアプローチは絶対に「ダメ」だと強調した。
日本社会に潜む小児性愛(ペドフィリア)の問題は数字からも見て取れる。警察庁の統計によると、児童ポルノの被害が確認された未成年者の数はこの10年間で5倍に増加した。
■18歳で価値が下がると少女たちに思わせる社会
男性客に10代の少女と「散歩」するなどのサービスを提供するいわゆるJK(女子高生)ビジネスが日本では買春の温床になっているが、警察は一掃できずにいる。
幼い少女が小さな水着などを着てポーズを取る疑似ポルノ「着エロ」画像も法の網をかいくぐり、インターネット上で容易に見つけることができる。
子ども虐待、性犯罪をなくす会「Think Kids(シンクキッズ)」代表理事で弁護士の後藤啓二(Keiji Goto)さんは、これは法的な問題というよりも社会の問題だと主張する。多くの日本人は幼い少女を性的な対象として見ることをタブーとはせず「グレーぐらいに」しか考えていないと話す。
もちろん、子どもが性の対象にされるという問題を抱える国は日本だけではない。
米国では、子どもの美人コンテストや、こうしたコンテストの様子を追跡するリアリティー番組「Toddlers and Tiaras(子どもとティアラ)」におけるハイパー・セクシュアライゼーション(Hyper-sexualisation、子どもの性的特徴を過度に強調すること)に対し懸念が生じている。フランスでは2010年、米ファッション誌ヴォーグ(Vogue)に10歳の子どもの扇情的な写真が掲載され議論が巻き起こった。これを受け議会は、13歳未満の少女を対象とした「ミニミス」コンテストを禁止する法案を2014年に可決している。
しかし、日本ではこうした問題について公の議論がほとんど行われていない。
小児性愛者の治療も行う精神科医の福井裕輝(Hiroki Fukui)氏は、日本では潜在的な性犯罪者から子どもを守らなければならないという意識が「本当に希薄だ」と指摘し、「日本の状況は普通ではないんだと理解し、変えるべきは変えていく必要がある」と話す。
人身取引や性的搾取の被害者支援を行うNGO「ライトハウス(Lighthouse)」代表、藤原志帆子(Shihoko Fujiwara)さんは、少女たち自身の考え方に与える影響について警鐘を鳴らす。「自分が18歳になると価値が下がるから、お客さんが今自分に夢中なのは自分が子どもだからだろうな」と、日本の社会が彼女たちにそう思わせてしまうというのだ。
「子どもにそんな価値観を植えつける社会に、本当の意味で子どもを守ることはできません」
【翻訳編集】AFPBB News