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【栃木】

イチゴ品種流出 損失220億円 とちおとめなど韓国で無断栽培

県が11年かけて開発したとちおとめ(県提供)

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 日本のイチゴ品種が韓国へ流出して無断栽培されたために輸出機会を奪われ、生産者らが五年間で最大二百二十億円の損失を被ったとの推計を農林水産省がまとめた。他の農産物でも品種流出が後を絶たない。同省は日本の法令の効力が及ばない海外で開発者が品種登録し、権利を守れるよう支援に乗り出している。

 農水省によると、韓国では、県が開発した「とちおとめ」や個人開発の「章姫」「レッドパール」などを勝手に交配したイチゴが全栽培面積の九割以上を占め、アジア諸国への輸出も活発だ。二〇一二年に「錦香(クムヒャン)」「雪香(ソルヒャン)」などの独自品種として登録され、栽培を差し止められないでいる。

 日本からのイチゴ輸出は直近で年五百トン程度なのに対し、一五年の韓国からのイチゴ輸出は四千トンに上る。損失推計はこれを目安に、韓国産が全て日本産に置き換わった場合を想定した。

 イチゴ以外の推計はないが、国の研究機関が生んだ高級ブドウ「シャインマスカット」が中国で無断栽培された例や、熊本県のイグサ品種「ひのみどり」製の中国産の畳などが確認されている。

 海外での品種登録は通常百万~二百万円かかる。国ごとの出願が必要で、出願可能な期間に制約もある。農水省は一六年度第二次補正予算から出願経費の補助事業を盛り込んだほか、国別の手引書を作り、対応を呼び掛けている。

◆県が11年かけ開発

 とちおとめは県が十一年かけて開発し、一九九六年に品種登録した。八五年に登録した「女峰」を味、大きさ、収穫量の面で改善しようと育成を始めた。大きめの果実、糖度と酸度のバランスがとれた味わいが特徴だ。

 促成栽培に適しており、栃木など主に東日本で生産されている。イチゴの品種の中では全国の作付面積が最も大きく、消費者によく知られている。

 県によると、県産イチゴはとちおとめのほか、二〇一四年度に品種登録した「スカイベリー」を東南アジアに輸出した。一六年度の輸出額はコメ、ナシ、ブドウと合わせて約四千万円。種類別の額は非公表だが、イチゴはごく一部という。(高橋淳)

 

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