明治維新後のインフラ整備で優先順位が低かったことに端を発する

 アメリカやドイツなど、多くの先進国では高速料金はタダだ。なのに日本ではバカ高い料金を取られる。これはいったいナゼだろう? 歴史をひも解くと、その理由が見えてくる。

 まず、なぜ日本では高速道路が有料なのか。答えは、日本が貧乏だったからだ。「日本は貧乏じゃない! 世界有数の金持ち国のはずだ!」という反論もあろうが、高速道路の建設が始まったのは1960年代。太平洋戦争が終わった約20年後で、当時の日本はやはり貧乏だった。

 なにしろ日本は戦争に負けて、主要工業地帯は焼け野原になってしまった。その時点で大貧乏である。しかも日本は敗戦前から、もともと道路インフラが極端に貧しかった。なにしろ江戸時代まで、日本の街道は基本的に徒歩用で「クルマ」の使用は禁止。馬車なんかなかったが、人が曳く荷車すら「道が傷む」という理由でほぼ使用が禁止されていた。

 明治政府は、富国強兵のために社会インフラが必要であることを強く認識したが、限られた予算は大量輸送に向く鉄道に振り向けられ、道路はずっと後回しとなった。おかげで日本は戦後のクルマ社会の到来とともに、まず一般道の整備をやらねばどうしようもない状況で、それに加えて高速道路まで税金で造るのは不可能だった。

 たとえば東京では戦後まもなく、超野心的な道路計画が立案されたが、これを税金で完成させるには約500年必要で、結局ほぼ手付かずとなった。代わりに建設されたのが、公用地(川や道路など)の上空を通すことで比較的低予算・短期間で建設でき、しかも一般道より多くのクルマを流せる首都高速道路だ。これを有料とすることで、クルマ社会になんとか対応した。

 東名や名神などの都市間高速道路も同様だった。税金では国道の整備が精一杯。なにせ当時は国道だってほとんど未舗装で、雨が降れば泥だらけという状況だ。高速道路を有料にすることで、まず借金で建設し、それを料金収入で返していくという現在の形を採用しなかったら、いまだ日本には高速道路がロクになかった可能性がある。もちろん道路公団時代にはいろいろなムダもあったが、先に造るという形を取ったのは、われわれドライバーにとって大きな恩恵だった。

 もうひとつの疑問。なぜ日本の高速道路料金はこんなに高いのか。フランス、イタリア、韓国、中国など、有料道路制を採っている国はほかにもあるが、日本はそれら各国の数倍も料金が高い。理由は、建設単価が数倍かかるからだ。

 日本は地形が険しく、地価も高く、地震がケタはずれに多い。平野部は地盤も軟弱、そしてどこにでも家屋がある。環境が極めて特殊なのである。耐震基準を落とせば建設費は大幅に縮減できるが、阪神大震災の教訓により逆に強化された。こうして考えて行くと、高速道路料金が高いのは、日本の宿命かもしれない。