冷凍野菜100万トン突破 国産高騰で需要急増 17年の輸入量
2018年02月26日
2017年の冷凍野菜の輸入量が、初めて100万トンを突破した。国産野菜の高騰を受け、割安感を訴求できる商材として小売店が売り込みを強め、需要が急激に高まっている。そのままゆでたり揚げたりして食べられる、調理の簡便性も支持を集める。産地関係者は「国内野菜産地の大きな脅威になっている」と警戒する。(音道洋範)
財務省の貿易統計によると、冷凍野菜(調製品含む)の輸入量は1990年代後半から増加傾向で推移。2017年に過去最高を更新した。中国産と米国産が大半を占め、炒め物に使うミックスベジタブルや煮物向けの土物類など、主に業務向けに取引されてきた。
17年の輸入量は100万9000トンで、前年を7%上回った。増加が目立つのが葉茎菜類で、ブロッコリーが4万9000トン、ホウレンソウが4万6000トンと、共に7%増。日本冷凍食品協会は「業務用だけでなく、国産野菜の高値を受けて、家庭用の消費が伸びている」と分析する。
全体の 4割弱を占めるジャガイモは、37万8000トンで8%増。16年産の国産が 不作となり、高値が続いたことが響いた。肉料理の添え物やスープなどに使われるスイートコーンは、7%増の5万4000トンだった。
小売りの販売の伸びも目立つ。大手コンビニエンスチェーン「ローソンストア100」では、1月の冷凍野菜全体の売り上げが前年同月に比べ2割増えた。特にブロッコリーやホウレンソウは5割も増えた。1袋100円で品ぞろえする値頃感が受けたとみており、同社は「価格が変動しやすい生鮮野菜に比べ、消費者の注目が集まっている」と指摘する。
首都圏の中堅スーパーも「生鮮で高値が続いた葉茎菜類を中心に、冷凍野菜の売り上げが2、3割増えた」と説明する。
今後もまとまった輸入が続くとの見方が強い。東京都内の別のスーパーは「共働き家庭の増加で、カット野菜や総菜のように手軽に調理できる商材として定着している」と指摘する。
産地には警戒感が広がる。ホウレンソウなどの冷凍野菜を製造・販売するJA宮崎経済連は「産地にこだわりを持たない加工業者は、割安な輸入物の仕入れを強める動きが高まっている」と指摘。さらに輸入冷凍野菜の出回りが増えれば、「生鮮を含めた国産の需要が奪われかねない」と不安視する。
財務省の貿易統計によると、冷凍野菜(調製品含む)の輸入量は1990年代後半から増加傾向で推移。2017年に過去最高を更新した。中国産と米国産が大半を占め、炒め物に使うミックスベジタブルや煮物向けの土物類など、主に業務向けに取引されてきた。
17年の輸入量は100万9000トンで、前年を7%上回った。増加が目立つのが葉茎菜類で、ブロッコリーが4万9000トン、ホウレンソウが4万6000トンと、共に7%増。日本冷凍食品協会は「業務用だけでなく、国産野菜の高値を受けて、家庭用の消費が伸びている」と分析する。
全体の 4割弱を占めるジャガイモは、37万8000トンで8%増。16年産の国産が 不作となり、高値が続いたことが響いた。肉料理の添え物やスープなどに使われるスイートコーンは、7%増の5万4000トンだった。
小売りの販売の伸びも目立つ。大手コンビニエンスチェーン「ローソンストア100」では、1月の冷凍野菜全体の売り上げが前年同月に比べ2割増えた。特にブロッコリーやホウレンソウは5割も増えた。1袋100円で品ぞろえする値頃感が受けたとみており、同社は「価格が変動しやすい生鮮野菜に比べ、消費者の注目が集まっている」と指摘する。
首都圏の中堅スーパーも「生鮮で高値が続いた葉茎菜類を中心に、冷凍野菜の売り上げが2、3割増えた」と説明する。
今後もまとまった輸入が続くとの見方が強い。東京都内の別のスーパーは「共働き家庭の増加で、カット野菜や総菜のように手軽に調理できる商材として定着している」と指摘する。
産地には警戒感が広がる。ホウレンソウなどの冷凍野菜を製造・販売するJA宮崎経済連は「産地にこだわりを持たない加工業者は、割安な輸入物の仕入れを強める動きが高まっている」と指摘。さらに輸入冷凍野菜の出回りが増えれば、「生鮮を含めた国産の需要が奪われかねない」と不安視する。
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直売所の集出荷支援 巡回トラック 機材レンタル システム構築へ 農水省
農水省は2018年度、農産物直売所の集出荷システムの取り組みを支援する方針だ。集荷拠点を巡回するトラックや野菜をいったん保管しておく冷蔵庫などのレンタル費用を助成する他、人件費の補填(ほてん)にも活用できる。同省は「システムの構築で直売所の売り上げの向上につなげてほしい」としている。
来年度予算案の新規事業として食料産業・6次産業化交付金(16億7800万円)の中から充てる。新たに集出荷を始めたり、再構築したりするケースが該当する。
集出荷事業は出荷者が近くのJA支店や集会所などに商品を持ち込み、直売所から出向いたトラックが集めて回り、店舗に届けるのが一般的。ただ、費用負担と人材不足がネックとなる。
そこで、集荷用のトラックや、夏場の軟弱野菜の鮮度を保たせるための拠点に冷蔵庫や保管庫の整備を支援。生産者が直売所に行かなくても商品に貼るバーコードを取り出せるよう、拠点には必要な器材の設置も後押しする。集荷トラックや必要な器材は購入すると高額になるため全てレンタルとし、その費用を支援する。経費の大半を占めるガソリン代、運転手の人件費も対象とする。
支援を受けるには、出荷希望者はどれくらいいるのかや、拠点の確保、商品保管、効率的な運行ルート、運行コストなどを試算しなければならない。そのための先進地視察、専門家や講師派遣の経費も支援する。
都市農山漁村交流活性化機構が17年に行った調査によると、直売所を運営する上で最大の課題は「出荷者の高齢化」(89%)、次いで「出荷量の減少」(57%)だった。店舗の課題でも「商品不足」(56%)が最も多いなど、品ぞろえが大きな課題となっている。専業農家にとっても毎日直売所まで運ぶ手間を省きたいところだ。
同省は、「集出荷の要望は各地で出ている。まずレンタルという形で試してもらい、地域に合ったシステムが構築できればいい」(食文化・市場開拓課)と期待する。
交付金は県を通して市町村から配分される。交付率は3分の1、市町村が6次産業化戦略を策定していれば2分の1になる。対象となる交付金総額は3億5800万円。集出荷システムの他に直売所の新商品開発、観光事業者とのツアー企画も支援する。
同省は6次産業化の拡大へ、加工・直売分野の市場規模を現状(15年度)の2兆1000億円から20年度までに3兆2000億円に高める目標を掲げている。
2018年02月24日
農作業死亡事故 救える命がそこにある
農作業事故根絶へ。政治の意思と実行力を示す時だ。1日平均1人が死亡する業種は農業以外ない。しかも半世紀、事態は改善されていない。3月から春の農作業安全運動が始まる。関係機関が総力を挙げ実効策を打とう。安全が担保されない産業に持続可能性はない。
農水省によると2016年の農作業死亡事故は312件。前年より26件減った。1971年の統計開始以来、最少となったが、農家が減り続ける現状を考えれば危機は深まっている。
それを端的に示すのが10万人当たりの死亡事故発生件数。農業は16・2で、近年右肩上がりで増加する。全産業の平均が1・4程度で推移する中、いかに突出しているかが分かる。かつて農業と同様、危険業種とされた建設業が業界を挙げた安全対策で6・0にまで下げたことと対照的だ。特に見過ごせないのが高齢農家の犠牲者が多いこと。65歳以上だと20・3に跳ね上がる。実に死亡者の4割近くが80歳以上で「高齢農業」の厳しい現実を物語る。
死亡事故の内訳は、やはりトラクターなど農業機械によるものが7割を占める。ただ乗用型トラクターの死亡事故は、安全キャブや安全フレームの普及で減少しつつある。だがここでも80歳以上は増加傾向にあり、安全装備の有無、操作技術の衰えなどを点検すべきだ。
犠牲者の一人一人が、世帯主や担い手として、一家の経営や地域農業になくてはならない存在だったに違いない。悲劇を繰り返さないために、注意喚起の段階はとうに過ぎた。
事故予防の科学的なノウハウの構築と実践が急務だ。事故データの収集・分析、リスク・アセスメント(影響評価)手法の共有と周知、農業機械の安全装置の推進(片ブレーキ防止装置や自脱コンバイン手こぎ部緊急停止装置など)、区画整理など作業環境の改善、農作業安全アドバイザーの養成、労災保険特別加入の促進、IT活用など産官学がそれぞれの立場で、あるいは連携してやるべきことは明確だ。
生産現場では法人経営体の増加に伴い、農業生産工程管理(GAP)を活用した安全対策の取り組みも進めたい。GAPを導入した経営者は「リスクを評価し、作業ルールを作ることで、より安全な作業ができる」とその効果を語る。
農水省は来年度、高齢農業者対策に力を入れ、自治体と連携した健康診断、農機の総点検、先進事例の発信などに取り組む方針だ。斎藤健農相は衆院予算委員会で「(農作業事故)ゼロを目指して取り組みを強化する」と表明。農相がここまで踏み込んだことを評価するが、要は実行である。事故件数削減の数値目標と実行工程表を示し、もっと予算も手厚くすべきだ。
春の農作業安全運動が始まる。合言葉は「ワンチェック、ワンアクション」。3月から5月の事故が最も多い。無事に帰る。安全に勝る経営はない。
2018年02月21日
宇宙グルメ 日本食挑む 地方発 高校生も JAも
日本食は今、海外だけでなく宇宙へ──。日本人宇宙飛行士の活動の源となる「宇宙日本食」の開発が進んでいる。食べ慣れた食事で飛行士の宇宙での活動を支えようと、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が認証する。厳しい審査はあるが、認証されると“宇宙規模”のお墨付きが得られるとして、製品や農産物のPRにつなげようと大手メーカーや高校生、JAが挑戦している。
JAXA認証 産品のお墨付き
福井県立若狭高校(小浜市)は、海洋科学科の生徒が作る「サバ醤油味付け缶詰」で宇宙日本食の認証を目指す。
小浜市は京都への海産物の物流ルート「鯖街道」起点の地。同科の前身の小浜水産高校の時代から数えると、実習でのサバの缶詰作りは100年以上の歴史がある。同校は、より高いレベルで食品衛生を管理するため2006年に危害分析重要管理点(HACCP)を取得。高い技術を生かそうと、生徒が「サバ缶を宇宙に飛ばしてみたい」と声を上げ、挑戦が始まった。
宇宙では味覚が変化するとされ、味を濃くしたり、無重力空間で汁が飛び散らないように地元のくず粉を使って粘性を高めたりと研究を重ね、14年に宇宙日本食の候補に選ばれた。1次、2次審査で安全性や保存性などの項目をクリアし、認証へ一歩ずつ近づいている。同科の小坂康之教諭は「宇宙日本食を通じて地域の宝、高い技術力を示したい」と話す。
◇
北海道十勝地方のJA帯広かわにしは昨年から、台湾や米国などにも輸出する特産「十勝川西長いも」と豆類を使い、宇宙日本食に認証される加工品の開発や、宇宙日本食への食材提供の研究に着手している。
JAは08年に「十勝川西長いも」の洗浄選果施設でHACCP認証を取得。さらに昨年は国際的に最も厳しい食品安全基準のSQF認証も取得して安全・安心な農産物の提供を追求してきた。
同地方は民間企業がロケット打ち上げに挑戦するなど、地域を挙げて宇宙への機運を高めている。「(宇宙日本食で)さらに一歩先を目指し、産地の自信と誇りを示したい」と、安全・安心な農産物で飛躍を誓う。
米飯、茶、ラーメン PR効果 期待
宇宙日本食は、これまで食品メーカー15社が認証を受けている。日清食品は05年、同社開発の宇宙食ラーメンをスペースシャトル、ディスカバリー号で送り出した。創業者、安藤百福氏の「宇宙食を開発したい」との思いを実現した。
亀田製菓は昨年8月、おやつに楽しんでもらおうと、「亀田の柿の種」で認証を取得。無重力でも飛び散らないように工夫した。
同社の子会社で米飯加工メーカーの尾西食品は07年、乾燥米飯のアルファ米「白飯」「赤飯」「山菜おこわ」「おにぎり鮭」で認証を取得。原料米の選定からこだわり、低アミロース米に「あきたこまち」をブレンドするなど、風味豊かに仕上げた。
宇宙日本食は、日本の食を国際宇宙ステーション(ISS)で楽しんでもらおうと開発が始まった。これまで米飯や麺類、カレー、茶、菓子、など31品目が認証されている。宇宙飛行士の健康や宇宙での安全性を守るため、栄養、品質の検査や常温で1年半の保存試験など厳格な審査があり、製造設備はHACCP導入が求められる。
ISSに長期滞在する宇宙飛行士、金井宣茂さんは、ツイッターでようかんや茶を楽しむ様子を報告している。JAXAは認証ロゴマークでPRに協力。今後はイベントでの利用など、販路拡大への協力も検討する。(猪塚麻紀子)
2018年02月21日
市況見て 買い物上手 カートに端末 スーパーで新サービス
スーパーの買い物客が、ショッピングカートに取り付けたタブレット端末から、農産物の市況情報を受け取れるサービス「ショピモ」が注目を集めている。三井物産子会社のマーケティング・グラビティ(東京都港区)が昨年12月から提案を進め、大手スーパーなどで導入が進む。日本農業新聞の市況情報を活用し、野菜や果実の相場変動や価格をランキング形式で紹介。消費者の購買を後押しする。
ショピモは各小売店の会員カードと連動したサービス。カートに取り付けた端末にカードをかざしてログインすると、市況情報の他、商品クーポンやレシピ、売り場情報などが買い物客に提供される。現在、首都圏の大手スーパーを中心に3店舗が導入している。
新たに提供する農産物情報は、野菜と果実いずれか1品目の相場動向を表示する「市場価格変動」と、各品目で価格の上げ下げが大きかった品目五つをランキングで表示する「値上がり値下がりランキング」の二つ。1週間ごとに更新する。「価格変化に敏感な消費者に対して納得感を与えられる情報」と、マーケティング・グラビティの担当者は説明する。
イトーヨーカドー食品館(千葉県流山市)は昨年末から、店内20台のショピモ対応カートで新サービスの配信を開始した。週に2回以上利用するという同県柏市の40代女性は「買い物や献立を考える参考になる」と好感触。同社は今後、「利用客の声や店舗の利用層を見て、提供情報の拡充を検討したい」と意気込む。
2018年02月21日
日本産水産物輸入規制 韓国は協定違反 WTO紛争小委
世界貿易機関(WTO)の紛争解決小委員会は、韓国による日本産水産物の輸入規制がWTO協定違反だとして、韓国に是正を求める報告書をまとめた。東京電力福島第1原子力発電所事故を受けた農林水産物・食品の輸入規制について、WTOが判断を示したのは初めて。日本の主張を受け入れる結果となった。日本政府は今回の判決を受けて、各国が行う日本産輸入規制の緩和への働き掛けを強化する。
紛争解決小委員会は裁判の1審に当たる。報告書では、韓国による福島、茨城など8県産の水産物の輸入禁止措置について、リスクの度合いに対して過剰に厳しい規制であり、WTOの衛生植物検疫措置(SPS)協定で禁止する「恣意的または不当な差別」に当たると判断した。日本産の全食品に対して韓国が行う放射性物質の追加検査要求についても、同様の判断を下した。
今後、全加盟国による紛争解決機関が1審の報告書を承認すれば、WTOの最終決定となるが、韓国が上訴すれば、2審に当たる上級委員会で検討を継続。2審の結論は90日以内に決定することになっているが、それ以上長引く可能性があるという。
韓国は原発事故を受け、青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の8県のヤマメやスズキなど一部水産物の輸入を禁止した。2013年9月には汚染水漏れを理由に、禁止対象を8県の全水産物に拡大。さらに日本産の全食品に対して、セシウムなどが微量でも検出された場合に他の放射性物質の検査報告書を求めるなど輸入規制を強化していた。
日本はこれに対して、「日本産食品に含まれる放射性物質の含有量が韓国の基準値を超える可能性は、韓国産や他国産と同様に低い」として、WTOに提訴していた。
原発事故から約7年たつが、香港や中国など28カ国が、輸入規制を続ける。日本政府は輸出額1兆円を目指すが、輸入規制が課題となっている。
2018年02月23日
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冷凍野菜100万トン突破 国産高騰で需要急増 17年の輸入量
2017年の冷凍野菜の輸入量が、初めて100万トンを突破した。国産野菜の高騰を受け、割安感を訴求できる商材として小売店が売り込みを強め、需要が急激に高まっている。そのままゆでたり揚げたりして食べられる、調理の簡便性も支持を集める。産地関係者は「国内野菜産地の大きな脅威になっている」と警戒する。(音道洋範)
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17年の輸入量は100万9000トンで、前年を7%上回った。増加が目立つのが葉茎菜類で、ブロッコリーが4万9000トン、ホウレンソウが4万6000トンと、共に7%増。日本冷凍食品協会は「業務用だけでなく、国産野菜の高値を受けて、家庭用の消費が伸びている」と分析する。
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2018年02月26日
[活写] 虹色の春 もうすぐ
3月3日の「桃の節句」に向けて福井県大野市の米菓会社、吉村甘露堂が、ひなあられの出荷を進めている。
同社は材料に県内産を中心とした「カグラモチ」「タンチョウモチ」などの国産もち米を使用。天然色素やしょうゆで色と味を付けた7種類のあられを、カラフルな袋詰めに仕上げている。
当初は、今月中旬までに県内や関西地方の顧客に合わせて約10万袋を届ける予定だった。しかし、上旬に北陸地方を襲った記録的な大雪で製造や出荷が一時止まり、納期に間に合わない商品も出た。同社は、ひなまつり間際の今月末まで出荷を続け、需要に応える考えだ。
吉村文雄社長(51)は「注文がある限り出荷を続けたい。華やぐ春の雰囲気を感じて、心まで温かくなってほしい」と話す。(木村泰之)
2018年02月26日
中央市場 施設老朽化、再整備が急務 自治体、卸に重い負担 使用料増額壁に
全国各地の中央卸売市場で、施設の老朽化に伴う移転や再整備の計画が進んでいる。全61市場のうち、約3分の2が竣工(しゅんこう)から35年以上経過しているものの、開設自治体にとって再整備にかかる事業費は大きな負担となる。卸や仲卸などの事業者も施設使用料が増える場合が多く、経営を揺さぶる。事業者の再編問題に加え、政府による卸売市場改革も絡み、再整備の合意形成が難航する市場も出ている。
2018年02月25日
青森リンゴでべっぴんに 渡辺直美さんがPR
青森県の生産、流通団体などでつくるりんご対策協議会は24日、千葉市で県産リンゴのPRイベントを開いた。2014年から展開する「青森りんごでべっぴん倍増計画」プロジェクトで委員長を務める、芸人の渡辺直美さんが登場。赤いリンゴの飾りを頭に付け、女王をイメージした衣装に身を包み、県産リンゴのおいしさや美容効果をアピールした。
イベントは同協議会と吉本興業(大阪市)が連携したPRプロジェクトの一環で、今年で4年目。渡辺さんは3年連続で委員長を務めており、CM出演の他、写真を共有するインターネット交流サイト(SNS)「インスタグラム」で自身のPRの様子を発信している。
この日は同協議会の加川雅人会長がリンゴを輪切り状にする食べ方を紹介。渡辺さんは蜜の入り具合を確かめながら「斬新な切り方だけど食べやすい」とアピール。また、これまでの情報発信の功績をたたえ、同協議会から「青森りんご一生無料券」が贈呈されると、渡辺さんは「リンゴを食べると肌が本当につるつるになる。これからも青森のリンゴをずっと食べ続ける」と話した。
会場では、同県産の「ふじ」「王林」の販売会も開いた。加川会長は「昨年8月の天候不順で小玉傾向だが、食味は良く、何度食べても飽きがこないような出来になっている」と語った。
2018年02月25日
冬春ピーマン サーチャージ発動 3月14日まで 10年ぶり上乗せ 宮崎経済連
JA宮崎経済連は、農業用重油の高止まりを受け、重油価格の変動を青果物の価格に反映させる「青果物燃料価格調整金(サーチャージ)」を発動した。対象は全国38市場と契約取引する冬春ピーマン。3月14日までの設定価格を、2月は1袋(130グラム)110円に3円、3月は同105円に2円それぞれ引き上げる。価格を上乗せするのはサーチャージを導入した2008年以来10年ぶり。
サーチャージは重油価格の乱高下による生産コストの変動を、青果物の契約販売価格に反映させ、農家経営の安定につなげる取り組み。前年7月8日の重油価格を基準に、毎月8日の価格が15%以上動いていた場合に発動する。同月15日~翌月14日販売分までの単価に変動分を転嫁する仕組み。昨年7月は1リットル70円だったが、今月8日は80円を突破し、基準を超えた。
宮崎経済連販売流通課によると、今冬は重油価格の高騰に加えて、寒波で県内の平均気温が低く重油の使用量も増えている。同課の廣瀬誠博課長は「全国の消費者にピーマンを安定供給するための措置。重油価格が青果物に影響することを消費者にも知ってほしい」と話す。
15、16年は重油代が下落したことから、サーチャージで価格を引き下げている。
2018年02月23日
SBS米 全量落札 5年ぶり、年間枠10万トン
農水省は20日、輸入米の2017年度の第5回売買同時入札(SBS)で、新たに1万4898トンが取引され、年間枠の10万トンが全量落札となったと発表した。全量落札は、東日本大震災の影響で米需給が逼迫した12年度以来、5年ぶりとなる。
2018年02月21日
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◇
北海道十勝地方のJA帯広かわにしは昨年から、台湾や米国などにも輸出する特産「十勝川西長いも」と豆類を使い、宇宙日本食に認証される加工品の開発や、宇宙日本食への食材提供の研究に着手している。
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同社の子会社で米飯加工メーカーの尾西食品は07年、乾燥米飯のアルファ米「白飯」「赤飯」「山菜おこわ」「おにぎり鮭」で認証を取得。原料米の選定からこだわり、低アミロース米に「あきたこまち」をブレンドするなど、風味豊かに仕上げた。
宇宙日本食は、日本の食を国際宇宙ステーション(ISS)で楽しんでもらおうと開発が始まった。これまで米飯や麺類、カレー、茶、菓子、など31品目が認証されている。宇宙飛行士の健康や宇宙での安全性を守るため、栄養、品質の検査や常温で1年半の保存試験など厳格な審査があり、製造設備はHACCP導入が求められる。
ISSに長期滞在する宇宙飛行士、金井宣茂さんは、ツイッターでようかんや茶を楽しむ様子を報告している。JAXAは認証ロゴマークでPRに協力。今後はイベントでの利用など、販路拡大への協力も検討する。(猪塚麻紀子)
2018年02月21日
一村逸品大賞 「美濃いびジェラート」 岐阜県勢で初 JAいび川
日本農業新聞は19日、第14回一村逸品大賞の中央審査会を東京都内で開き、大賞に岐阜県のJAいび川の「美濃いびジェラート」を選んだ。同県勢が同賞を受賞するのは初めて。
2018年02月20日
日本酒世界へ 若い発想 市場を開拓
若者が“新時代”の日本酒を製造して、世界に販路を広げている。山形県では洋食に合うフルーティーな日本酒をワインだるで醸造し、1年足らずで4カ国・地域へ輸出した。山口県では、新酒が好まれる日本酒で数年寝かせるビンテージ物を商品化。ドバイで1本約60万円の価格を付けた。若者たちは既存の概念にとらわれず、海外の日本酒人気を追い風に世界へ躍進している。
洋食との相性 とことん追求 WAKAZE 山形県鶴岡市
「洋食に合う日本酒を」と開発し、発売からわずか1年足らずで、海外から引っ張りだこの日本酒がある。山形県鶴岡市のベンチャー企業、WAKAZE(ワカゼ)が製造・販売する「ORBIA(オルビア)」だ。
ワカゼ代表の稲川琢磨さん(29)が「洋食に合う、県産米を使った濃厚で香り高い日本酒を」と、2017年3月に開発した。果実の風味を出すためにワインだるで仕込み、白こうじを使って酸味を強調するなどの工夫を施し、フランスの飲食業界から「酸味がしっかりしていて食中酒に最適」と高評価を得た。
東京都出身の稲川さんは、フランスに住み食文化にも触れた経験を持ち、日本酒は欧州の食に合うと直感。外資系の企業コンサルタントを経て16年に起業し、洋食向けの日本酒製造に乗り出した。鶴岡市の食材や文化、人情にほれ込んで同市に企業を移転。地元の老舗酒造、渡會(わたらい)本店と新酒を開発した。「ベンチャーの使命は、既存市場への参入ではなく新市場の開拓」と力を込める。
初年度の17年は1万本を生産し、1割をフランス、シンガポール、タイ、香港へ輸出する。国内では県内の空港や土産物店で1本(500ミリリットル)約3000円で販売する。今年の生産予定は2万5000本。輸出割合を3割に増やし、米国にも出荷を始める。
鶴岡市の商店街の祭りで1月末に販売したところ、24本が1時間で完売した。山形市から駆け付けた中川輝宣さん(27)は「売り切れ寸前で何とか買えた」と、満面の笑みを浮かべた。
貯蔵 じっくり 1本60万円 ARCHIS 山口市
山口市のベンチャー企業、ARCHIS(アーキス)は、16年に開発した純米大吟醸酒「夢雀(むじゃく)」をアラブ首長国連邦、香港に輸出する。世界中の富裕層が訪れるドバイでは最高級ホテルが1本(750ミリリットル)約60万円で販売。香港では20万円、国内では百貨店の高島屋が8万8000円(税別)の価格を付ける。
夢雀を生み出したのは同社代表の松浦奈津子さん(37)。「過疎化する地元を活性化させるため、世界で通用する物を作りたい」と、出身地・岩国市の老舗酒造、堀江酒場と連携。ワインのように数年寝かせて希少性と味わいを持たせる新しい日本酒を開発した。地元産米「イセヒカリ」を18%まで磨いて醸造した酒は、海外バイヤーも「濃厚で華やか。寝かせた後の味も楽しみ」と絶賛する。
16年は1000本を生産し、うち100本を試験的にビンテージとして保存。今年4月、17年産の1000本と、ビンテージの16年産100本を国内外に発売する。国内では高島屋がビンテージに10万8000円の価格を設定する予定だ。
新用途提案が鍵 和食ブームで輸出右肩上がり
財務省の貿易統計によると、清酒輸出量と金額は8年連続で過去最高値を更新中だ。17年の輸出量は2万3482キロリットル、金額は186億8000万円と、どちらも前年比約2割増だ。
海外での日本酒の盛り上がりを受け、大手酒造メーカーは現地での増産に乗り出す。宝ホールディングス(京都市)は17年、米国・カリフォルニア州の清酒工場の生産能力を2割増強。月桂冠(同市)も25年までに同州工場の生産能力を現状の7500キロリットルから1万キロリットルに伸ばす。
日本酒造組合中央会によると国内出荷量はピーク時に170万キロリットルを超えていたが、10年以降は60万キロリットル以下だ。同会は「若者のアイデアで新しい日本酒の用途を提案すれば、海外での消費が和食レストラン以外でも広がる」と期待する。(齋藤花)
2018年02月20日