宮内庁が所蔵する明治時代前期の各地の風景を撮影した写真を収めた本が発行された。急速に近代化が進んだ当時の様子を知ることができる資料だ。
写真集の題は「各地勝景一 旧江戸城・東京ほか 各地勝景二 北海道開拓・台湾出兵ほか」。収録された写真は明治天皇に各地の様子を報告するために集められたもので、宮内庁三の丸尚蔵館に保管されている。明治5~18(1872~85)年に撮影されたとみられる197枚を収めた。
旧江戸城の写真には、現在は残っていない「百人二重櫓(やぐら)」や「松倉櫓」などの建物が写っている。壁のしっくいがはがれ、修繕されないままになっている状況もうかがえる。
隅田川で船に乗る人々の写真には、ちょんまげ姿や、短く髪を刈った「ザンギリ頭」の男性が登場する。
群馬県富岡市の富岡製糸場の写真は、操業翌年の1873年1月に撮影されたもので、当時「女工」と呼ばれた従業員らの姿が写っている。
開業間もない大阪市の造幣寮(現在の造幣局)や、建設中の札幌市の開拓使札幌本庁舎の写真もある。
書籍は菊葉文化協会刊。2500円。皇居東御苑大手休憩所で販売している。配送も行っている。問い合わせは同協会(03・5222・0012)。【高島博之】