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 仮想通貨交換業者コインチェックで仮想通貨「NEM」580億円相当が流出してから1カ月が経過した。流出したNEMコインは複数のアドレス(仮想通貨における口座)に散逸し、取り戻すメドは立っていない。

 NEM関連技術の普及促進を担うNEM財団は、盗まれたコインの流れを流出直後からブロックチェーン上で追跡している。だが、盗まれたコインの一部は既に別の仮想通貨などに交換されたとみられる。NEM財団のジェフ・マクドナルド(Jeff McDonald)副代表に、追跡の見通しや、安全なコイン管理の手法、NEMブロックチェーンの開発方針について話を聞いた。

(聞き手は浅川 直輝)


NEM財団の役割は。

 NEM財団は、NEM技術の普及促進や教育に注力している。NEMのコア開発者とエコシステムパートナーをつなぐマーケターの役割を担っている。

NEM財団のジェフ・マクドナルド副代表
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コインチェックから盗まれたNEMコインの追跡は成功しているのか、失敗しているのか。

 NEM財団は今も、盗まれたコインを追跡し続けている。コインを受け取ったアドレスにタグ付けをし、世界の仮想通貨交換所に対して「タグ付きアドレスからの取引を受け入れないように」と要請している。

 ほとんどの交換所は我々の活動に賛同している。多くの取引所はコインチェックに同情的であり、仮想通貨を盗んだハッカーの活動を助けることはしたくない考えている。

 だが、いくつかの交換所は動きがやや遅い。具体的な交換所名は控えるが、我々もそれらの交換所とうまくコミュニケーションできていない。一部の取引はブロックできた一方、一部は成立したようだ。

 さらにコインを盗んだハッカーはダークウェブ(通常のブラウザーではアクセスできず、Torなどの匿名化ツールを通じてアクセスできるWebサイト)でNEMコインを交換しているようだ。ダークウェブには我々もコンタクトできず、実態は把握できない。ただコインの移動自体は、ダークウェブを使ったか否かに限らず全てブロックチェーン上に記録され、追跡できる。引き続きコインの行方を追跡し、換金されないよう交換所への要請を続ける考えだ。