従来、強固な防空網と航空戦力を備えた軍隊に空爆を行うのは不可能であった。あの地域大国だったイラク軍でさえ、湾岸戦争やイラク戦争では米軍への空爆は実行できていない。それが2015年以降、ゲリラ組織が空爆を実行できるようになった。デビッド・パーキンス米陸軍大将の表現を借りれば「アマゾンで注文した200ドルのドローン」に爆弾を搭載し、実際に盛んに実施されている。イスラム国は2017年だけでも200以上の爆撃動画を投稿しているし、シリアやイラクの他の武装勢力も同様に多くの動画を投稿している。

 この事実がいかに衝撃的であるかは、いみじくも米空軍が今年1月4日に「我々の地上軍は、朝鮮戦争以来、65年間も敵航空機による攻撃を受けていない」と述べたことからも明らかである。要するに、65年ぶりに世界の大国は航空機による脅威に晒されているのである。実際、モスルに進軍中の米軍部隊はドローン攻撃を受けたという。

Skywalker X8

 特に彼らは回転翼式(クワッドコプター)ではなく、「Skywalker X8」等のような運搬能力に優れた固定翼タイプを使用し始めている。しかも、これらは安価に入手することが可能である。例えばSkywalker X8は2~3万円程度で入手できる。

 今回の事例は、まさにこの動向を象徴するものであった。インド国防省から資金提供を受けているシンクタンクIDSAの研究員、アトゥル・パンツ氏はこの事例について、「ここ数年来、安全保障アナリストは、テロリストによる膨大な無人機によるスウォーム(群れ)攻撃は、もはや『もしも』ではなく『いつ』『どこで』の問題であると言ってきた。この事件は、おそらく無人機によるスウォーム攻撃の始まりである」と指摘している。かねてからの懸念がいよいよ実現してきたということである。

民生ドローン攻撃は装甲車両も撃破可能

 今回の出来事の衝撃が大きいもう1つの理由は、民生ドローン爆撃の効果が馬鹿にならない可能性を秘めているからである。