だが、これらはドローンよりも移動が難しく、何より練度練成と維持に多大の労力を要す。例えば、自衛隊であれば、砲兵を育てるのに2~3年、高練度を望むなら4~5年はかかる。しかし、ドローンであれば1カ月も練習すれば爆撃可能である。
また、迫撃砲は家電量販店では売っていない。ホームセンターで作るのも不可能だし、そもそも高価である。他方、ドローンは家電量販店やアマゾンで購入できるし、シリアの例が証明したように自作も可能だ。最近では、慣性航法装置も安価に入手できるので、改造すればGPS妨害を受けても爆撃可能である。
これは、かつての弓と鉄砲の関係に似ている。初期の鉄砲は、雨天では使用できず、火薬がなければ撃てず、命中率は著しく劣った。他方、弓は熟練した人間が扱えば命中率は高く、雨天でも扱え、腕力が続く限り撃てた。しかし、結局、弓は銃に駆逐された。銃が誰でも扱えたからである。
ドローンも同様で、誰でも使うことができる。しかも、迫撃砲よりも高い命中率を実現できる。また、敵地に潜入した工作員も含めて練度維持や補給もはるかに容易である。ジェームズタウン財団上級アナリストのマイケル・ホートン氏は、今回の事件の無人機が「ほぼ自動操縦であった可能性」を指摘しているが、これは将来的には練度維持すら不要になることを示唆している。事実、米国、イラン、イスラエル、ポーランド等が自爆ドローンを導入しつつあるのはその証左である。ハメスはドローンを「空軍の民主化」と指摘したが、けだし名言というべきであろう。