転職時の給与額交渉 絶対口にしてはいけない10のこと
「私は1年前にこの仕事に就きました。他にも1社から内定をもらっていましたが、給与の交渉で失敗しました。今の仕事の方が自分には合っていたので良いのですが──」。私は「どんな交渉をしたのか、ぜひ教えてください」と言った。
若者は次のように話した。「この会社からは、現職とほぼ同額の5万2000ドル(約550万円)を提示されました。それでも良かったのですが、当時の職場では2週間後に年次人事評価と昇給を控えていたので、増額を交渉してみようと思いました。採用責任者には『5万5000ドル(約590万円)ほどの給与をいただけるなら、今すぐにでも内定承諾書に署名します』と言いました」
採用責任者は何と答えたのだろう? 彼によると「それでは自分が増額に値すると考える適切な理由を教えてください。上司を説得する必要があるので、あなたの考えを聞かせてください」と言ったのだ。
「ここでぼろが出ました」と彼。「私は本当にばかなことを言いました。『私ほど、この職務に適した人物は見つかりません。これが、給料を3000ドル増やしていただく理由になるでしょう』と言ったのです」
「それがまずかったのですね」と私が言うと、「その通り」と彼。「採用責任者は『それは分かっていますよ。だからこそあなたに内定を出したのです。5万2000ドルの給与を受け入れていただけない場合は、採用を諦めるしかないでしょう』と言いました」
彼は次のように続けた。「その時点で、雰囲気がなんとなくおかしくなりました。私はこの大学からも内定を受けていたので、こちらの仕事を選びました」
内定の条件を交渉したい人は多いが、そのやり方を理解していない人も多い。交渉の理由として「私ほどの適材はいません」という答えが効果的かというと、そうではない。あなたが最高の候補者でなければ、そもそも内定をもらっていないはずだ。
ここでは、内定で提示された給与を交渉する際、絶対に口にしてはいけない10のことを紹介する。
1. 私には、他にも多くの会社から採用したいと声が掛かっています。
2. 私を採用していただければ、素晴らしい従業員になります。
3. 私を採用して良かったと思わせます。週末勤務など、希望されることは何でもします。
4. 私には多額の出費があります。
5. 私は働き者です。
6. 私は数年前、これよりも多くの給与を稼いでいました。
7. 私は学校で、クラストップの成績でした。
8. 私には、提示された給与額以上の価値があります。
9. この給与額は侮辱的です。
10. 条件を改善していただけない場合、内定を受けません。そうすれば御社は困るでしょう。
分別とプロ意識が感じられる唯一の交渉姿勢は「この仕事を受けたいのですが、私の希望給与との間に非常に大きな差があります。〇〇ドルだったら承諾できます。この差を埋める話し合いをするのに、今は適切なタイミングでしょうか?」と聞くことだ。
また、次のように言っても良い。「他社からは5万6000ドル(約600万円)の条件で内定をもらっています。御社の内定を受けたいのはやまやまですが、この差は大きすぎて無視できません。どうすれば、御社のチームに加われるよう条件を改善できますか?」
実際の内定通知は誰にも見せる必要はない。他社から内定をもらっている場合、もう一社がその給与額に届かなければ辞退すれば良いだけだ。他社からの内定があることを信じてくれない会社は、あなたを採用すべきではない。
1か月の支出や学校での成績は、給料の交渉とは何の関係もない。提示された条件が侮辱的な場合は、ただ内定を辞退して相手にしなければ良い。また、給与にかかわらず一生懸命働くことは当然期待されていることだし、採用してくれれば素晴らしい従業員になりますというのは未熟で無能な議論だ。
将来の雇用主に対し、昼夜を通して働くことを約束しないこと。良い従業員は、仕事を中断して帰宅すべき時を心得ている。自分は寝る間も惜しんで働くと言っても、誰も感心しない。数年前の方が給料が高くても、それは雇用主や職務とは何ら関係のないことだ。
交渉は一種の芸術で、他の芸術と同様、練習が必要になる。最悪なのは交渉を避けていることだ。逃げていては何も学ぶことはできない。いつまでたっても強くなれず、自信もつかず、自分が得るべき給与ももらえない。