以前にスタートアップの経営者・人事向け「成長フェーズ別の取り組むべき採用課題まとめ」というブログを書き多くの人に読んでいただきました。また、「ハイスキルなエンジニアのプレミアム転職Findy」をリリース後、多くの企業のエンジニア採用担当にお会いする中でヒアリングしてきたことを踏まえて、今回はそのエンジニア採用特化版を作成しましたのでご紹介できればと思います。
なお、本資料は先週登壇したICCでの発表にて使用したものですが、発表時にどの資料よりも写真を撮って頂いたので、需要があるのではないかと思い記事にすることにしました。
こちらが、当日のスライドです。
創業期
では、まず創業期からです。創業期に最も求められる仕事は、これはエンジニアには限らずですが、何よりもプロダクトをリリースすること、そして自分たちの作っているプロダクトがマーケットに受け入れられるかどうか、いち早く確認することです。多くのスタートアップが一つ目のプロダクトで必ず成功しているわけではありませんのでスピードが命です。
従って、出来る限り早くプロトタイプを出し、そしてユーザーからフィードバックをもらい、自分たちの考えているプロダクトが本当に世の中に求められているかどうかクイックに、資金が尽きる前に確認する必要があります。
そんな創業期に最も求められる人材、なんでもできる人です。エンジニアで言えば、フロントエンドからサーバーサイドそしてインフラまで一通り見ることができ、プロダクトのリースを最短で実現できる人が求められます。創業期の CTO は比較的こういった能力が高い方が多いのではないでしょうか
では次にその創業期における採用の課題について見ていきたいと思います。
リファラル採用力
まず一つ目ですがやはり経営陣のリファラル採用力です。これが最も重要な創業期の採用課題です。優秀な人を惹きつけられない経営陣であれば、人こそすべてのスタートアップにおいて、たとえ一つ目のプロダクトをリリースできたとしても、その後の改善力や成長力には疑問符がつくのではないでしょうか。これは現在の我々Findy自身も直面している課題ではありますが、やはり経営陣が率先して優秀な人材に自社に魅力を持ってもらい、更にはジョインしてもらうということが最も大事な仕事です。
フリーランス、副業の活用
次に課題として上がってくるのがフリーランスや副業の方の活用、サポートです。当たり前ですがスタートアップはメガベンチャーや数十億円調達しているベンチャー企業に比較すると人気がありません。ましてや10人以下のスタートアップは調達こそすれど、まだまだ知名度が低く、いきなり入社するハードルが高い会社が多いのが現実です。そんな時にプロダクトのリリースやリリース後の改善を強力にサポートしてくれるのがフリーランスや最近では副業の方の存在が必須です。
Findyでも、プロダクトリリース直後からフリーランスや副業の方に参画いただきプロダクトの改善が進んできた経緯があります。実際に、その後副業から本格的に正社員として関わってくれているスタッフもいます。そうした思いもあり、先日Findyのフリーランス・副業版ではある「フリーランス・副業エンジニア向け単価保証型の案件紹介サービスFindy Freelance」もリリースしました。
特に、副業や兼業が一般化する中でスタートアップの立ち上げ期に副業の方をどれだけ巻き込んで行けるかというのは、今後伸びるスタートアップの初期段階において経営陣としては重要な能力になってくるのではないでしょうか。
インターン、アルバイトからの採用
また、金銭的には恵まれていない初期のスタートアップにおいて、インターンやアルバイトの学生のサポート、及びそこから正社員になるというスタッフの存在も非常に重要です。 チーム開発の経験やテストコードをしっかり書けるかどうかといった面ではまだまだ荒削りな方が多いのも学生のアルバイトやインターの特徴ではありますが、とはいえそういった学生のサポートがあってこそスタートアップの立ち上がりが成り立つというのも事実です。
また学生にとってもスタートアップはやる気さえあれば自由に且つ思いっきり仕事に取り組める環境ではあるので双方にとって成長できるWin-Winの機会になるのではないでしょうか。
急成長期
次に急成長期です プロダクト・マーケット・フィットを確認した後にいよいよ本格的に成長期に入ってくる時期です。全体の従業員数も10名を超え、初期スタートアップからの脱皮を目指すタイミングです。
この時期の会社としての最大の課題は急拡大への対応です。特に、プロダクトはリリースしているはずなので、どちらかというとスピーディーなユーザーニーズへの対応であったり、アクセス数の急激な増加に対応するインフラの拡張といった仕事が重要になってきます。
従って、何でもできるフルスタックの人材だけでなく、その分野に特化したエンジニアの存在も必要になってきます。このタイミングで例えばフロントエンドやサーバーサイド、インフラといったそれぞれのエンジニア職種に特化した専門家が必要になってきます
そんな時期の採用における課題についてもご説明します
リファラル採用強化
リファラル採用の強化は最も効果的な初期のスタートアップにおける採用手段です。特に、この時期の特徴として10人以下のスタートアップの時代に入ったコミットメントの高いメンバーがさらに人を呼んで来てくれるという経営者にとっては非常に非常に嬉しい現象が起き始めます。
コミットメントの高い彼らはめちゃめちゃ優秀な友人・知人を紹介してくれるというリファラル採用においても最も効果的な時代を迎えます。一番大事なのは会社の成長やミッションへの思いを感じてもらい、スタッフと一緒にスタートアップを作り上げてくれる仲間を探していこうと語り合う時間だと考えています。こちらもトップ、経営陣の腕の見せ所ですね
採用媒体、人材紹介の活用
急成長していればしているほどリファラル採用だけでは十分な採用人数を満たせなくなる傾向にあります。この時期から採用媒体や人材紹介といったお金はかかるけれどもスピードを出すことができる採用手段の利用を始めます。 最近は自社プロダクトの分野における競争が激しい場合において、とにかく早いタイミングで優秀な人材を採用し、他社よりも早くプロダクトを改善するということが重要になってきています。
そんな時に採用媒体や人材紹介を活用して採用を加速させるということは非常に重要です。ただしこの際に本当にフィットした人材を採用してさらに成長を加速させられるかどうかにこだわる必要があります。後ほどの欲しい人材の定義というところで詳細をご説明します
フリーランス、副業の活用
こちらも急成長期への対応です。 スタートアップは魅力的な成長市場へのプロダクトリリースとなるため、この時期になると競合の存在も意識し始めます。
競合よりも先んじてプロダクトのレベルを上げていくために開発スピードの更なる加速は必要です。その際に正社員採用だけで追いつかない場合は、フリーランスや副業の存在も重要となってきます。多様な人材の参画によりライバルに負けないように開発スピードを上げていくため、こうした取り組みは継続する必要があるのではないでしょうか
欲しい人材の定義付け
次に欲しい人材がどんな人材なのかの定義づけも非常に重要になっています。冒頭に急成長期に入ると採用したい人材が専門職に分解されていくという話も書きました。また、採用媒体や人材紹介の利用も始まると書きました。このタイミングで一番大事なのがどんな人を採用したいかという定義づけとその認識の社内でのすり合わせです。
現実には、まだまだ30人以下の小さなスタートアップである以上、1人の入社の影響はまだまだ大きい時期です。そんなタイミングの一人の採用は非常に重要な存在で、雰囲気だけで採用を決めてはいけません。だからこそどんな人が採用したいのか、定義づけに時間をかけてほしいと感じております。Findyでは、人材の定義付けこそ大事だという思いからAI求人票採点サービスFindy Scoreをリリースした経緯もあります。
CTOの採用力強化
そして急成長期の最後は CTOの採用力強化です。 創業初期はファラルを含め採用の前線はトップは努めます。しかしながら、急成長期に入ってくると会社の規模や参画する人数が一気に増えてくるため、社長が全ての採用を担うのは不可能になってきます。
その時に重要になってくるのが各分野のリーダー、経営陣が採用の前線に立っていけるかどうかというところです。特にエンジニア採用の場合はCTOの存在が重要になってきます。じゃあ、どう対応力を強化するかというところですが、こちらについてはその CTO の個性を十分に発揮すればいいのではないでしょうか。技術に詳しい人であれは技術に特化し、一方で技術一本よりはどちらかと言うと経営や事業へのコミットメントを重視する人であればそういった部分を強みに、採用活動をしていけばと思います。何より大事なのはCTOからの”発信”です。
安定成長期
会社全体の社員数が30人を超えてくると上場も見据え、安定成長期に入ってくる企業が増えるのではないでしょうか。このタイミングで必要になる人材は会社の安定化に向けて 組織づくりや会社全体のエンジニアの技術レベル底上げができるような人材です。
従ってエンジニアの専門的な能力はもちろんのこと、それ以上にマネジメントをできる人材やあるいは幅広く技術について理解があるテックリードのような存在が必要になってきます。つまり、よりスキルや経験値の高い人材が必要になってくるということです。
そんな時期の採用課題についても見ていきます。
経験者採用後の既存スタッフのデモチ
この時期の最大の課題、採用そのものと若干異なる課題でもありますが、経験者やスキルの高い方を採用していく中で既存のスタッフのデモチが起こってしまうことです。これはマネジメントや技術力がより高いスタッフが安定した組織を作るために必要になってくるのため、彼らを採用するのですが、一方でもともとスタートアップの成長を支えてきた人材がそのマネジメント下に入ったり、あるいは前ほどの影響力を発揮できなくなるということが起きてしまいます。
成長の痛みでもあるのですがそういった変化が会社の中で起きてくるということに対して、敏感に対応していく必要があります。またスキルのあるスタッフを単純に外から採用してくるだけではなく内部のスタッフの成長および昇格というところも意識してマネジメントをする必要があります。
急速な採用増によるスキル基準の低下
次にこの時期になると急速に採用してきた結果また、継続して急速に採用しているため会社全体の技術力・スキルレベルが下がってくるということが、エンジニア職種に限らず起きがちになります。いかにこの時期の採用基準を維持するのかというのは採用担当の腕の見せ所です。
実際にこのタイミングで採用基準を落としてしまい、結果として人が増えるけれども全く成長しない会社になってしまうというケースもスタートアップの世界ではよく見かけます。この時期になると会社の知名度も上がってくるので応募者もそれほど苦労しなくても集まる傾向になるため、よりこのスキル基準あるいは人材基準みたいなものをより明確にしていく必要があります
採用の優先順位付
また、このタイミングで採用の優先順位付けをしっかりと行うことは非常に重要です。これはエンジニア以外の職種についても全て言えることですが、マネジメントを担える人材を採用したいのかあるいは、各分野に専門的な知識のある方を採用したいのか、或いは将来事業部長を担ってもらえるような成長性の高い人材を採用して育成をしたいのか、会社によって課題は異なるかと思います。大事なのは、自分たちが今一番向き合わなければいけない課題、そしてそれを実現するための採用基準は何なのか、採用の優先順位は何なのかというところをしっかりとクリアにしておくべき時期といえます。
変革期
社員数が50人を超え安定的な成長基盤を作ったスタートアップに求められる次のアクションは、非連続な成長の実現です。会社によっては新規事業の立ち上げや、あるいは海外展開といった更なる急成長を作るためのアクションが求められている時期ではないでしょうか。
そんな時期に必要となってくるのは事業の立ち上げに加えて組織の変革といった変化をつけるアクションも必要になってきます。また、エンジニアに求められるスキルも単純にサービスを作るというところだけではなくサービスの運用や新しいサービスの立ち上げを含めてより経営、事業に近い部分に関わっていくエンジニアが増えていきます。そうした中エンジニア出身のプロダクトマネージャーや、あるいは VP of engineer と言ったより高度な職種を担う人材も増えてくるのではないでしょうか
リファラル採用の再活性化
この時期に必要になってくるのがリファラル採用の再活性化です。特にこのタイミングでは組織の中にいる個人に頼り切ったリファラル採用ではなく会社として仕組みを作ってリファラル採用を強化していく必要があります。
創業初期のメンバーは経営陣との距離感も近くコミットメントも高いので自発的にリファラル採用に取り組んでいくれる傾向が非常に高いです。一方で、組織の規模がこれだけ大きくなってくるとリファラル採用に取り組む意味やそれに取り組んだ人の評価といったものもしっかり定義付けないとなかなかリファラル採用が増えなくなってきます。従ってリファラル採用に積極的な社員を賞賛する仕組みやこの時期に経営陣が先頭に立ってリファラル採用に取り組む姿勢を見せる必要が出てきます。人事にとってもここにコミットしてくれる経営陣は心強いのではないでしょうか。
採用ブランドの構築
次に採用ブランドの構築です。会社の規模が小さい頃は社長やCTO、或いは中心となるメンバーが個人としてブランディングをし、社外に発信していくことが採用における最も重要なブランド力でした。しかしながら会社規模が大きくなってくるとスタッフの存在や働き方をいかに社会に対しても発信していくかということが重要になってきます。
従って会社の広報やマーケティング部門を巻き込みながら、自社の人材の強みや他社との違いをしっかりと体系化してアピールしていく必要が出てきます。自社でブログやオウンドメディアを構築し社会に対して発信をしていく企業が増えていくタイミングがないでしょうか。
新卒採用の開始
また、新卒採用の開始も重要な採用戦略の一つになってきます。これまでは急成長を実現するために中途採用に頼って組織を拡張した企業が多いのではないでしょうか。しかしながらプロダクトマネージャーを担うエンジニアあるいは事業を担うようなエンジニアの存在は当然中途採用の市場では最も人気の高い職種の一つでもあります。またテックリードや技術的に非常にレベルの高い方も同様です。従って、競合の多い中途採用市場で”待つ”だけではなく自分たちで育てていこうという会社も増えていくのがこのタイミングです。
再急成長期
変革期で、変革を実行できた会社のみこの再急成長期とタイミングに入ってきます。このタイミングの会社の課題は「複数事業の運営」になってくる企業も多いのではないでしょうか。従って事業責任者の採用や育成は最も重要な課題になってきます。エンジニアに特化して言えば、技術面を抑えた上で事業を担える存在は非常に貴重です。
また、複数の事業を並行して運用していくような組織になっている場合、会社全体の技術基盤を担う部門の存在も必要になってきます。合わせて、現在の技術基盤を作るだけでなく、将来他社と技術的に差別化するためにも、研究開発チームの立ち上げなども必要になってきます。
以上いかがでしたでしょうかスタートアップが取り組むべきエンジニア採用課題まとめを成長フェーズ別に書いてみました。
この資料をFindyのCTOとも議論したところ、「やばい、やるべきを理解できたけど、やらないといけないこといっぱいある」という反応でした。我々、Findyも一つのスタートアップとしてはまだまだこれからですので、いろいろと学びながら、このスライドを進化させられるように頑張ってまいります。
また、エンジニアで転職を意識している方、採用にお困りの方はぜひぜひ「ハイスキルなエンジニアのプレミアム転職Findy」もご活用ください。(企業様のお問合わせはこちらです)
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