1995年の戦後50年の節目に製作された沖縄戦映画「GAMA 月桃の花」。初上映から20年以上たった昨年も、東京を中心に約150回の上映会があり、根強い人気を誇る。これまでの観客数は延べ300万人を超えた。一方、昨年の県内での上映会は2回のみ。映画製作と音楽を担当した海勢頭豊さん(74)=西原町=は「戦争へ向かう不穏な動きがある今こそ、全県民に見てもらいたい」と訴える。(社会部・宮里美紀)
映画は、沖縄戦終結50周年の戦没者調査をかたくなに拒むおばあが抱えた「語るに語れない過去」をたどる。中城村から逃げ惑う途中に身内5人を失い、たどり着いたガマでは日本兵に銃口を突き付けられる。終戦後、娘と結婚した米兵はベトナムで戦死。戦争のむごさに加え、戦後も続く葛藤や苦しみを描いた。
海勢頭さんは22年間上映され続ける理由を「主演以外は県出身俳優にこだわり、ストーリーも元北中城村議の安里要江さんの実話を基にした。なまりや空気感など沖縄戦のリアルが伝わるから」とみている。
県外での上映会は、主に修学旅行の事前学習用だ。上映を担当する佐藤雅之さん(46)=東京都=によると、中高校生の感想では「衝撃」という言葉が多く使われるという。
特に、故平良とみさん演じるノロがしまくとぅばで日本兵に意見する場面は印象に残るようで、佐藤さんは「沖縄戦とは何かを詰め込んだ映画。生徒たちは授業で沖縄戦を教えられているが、映画を見て初めて沖縄戦を自分の中に落とし込んでいる」と評する。
DVDなどデジタル映像化はせずにフィルムを使った上映スタイルを貫く。「真っ暗なガマでの映像は、フィルムだからこそ出る雰囲気がある。デジタル化すると重みが失われる気がして」と海勢頭さん。
一方で、県内での上映が減り「今では歌だけが残り、映画を知らない若い先生が増えた」と嘆く。新基地建設が強行される名護市辺野古へ毎週足を運び、平和への思いを強くする。「戦争中、日本軍は私たち住民を守らないし、また軍も国に守られなかった。戦争から得た教訓を詰め込んだ映画。こんな時代だからこそ、子どもだけでなく大人にも見てほしい」と願う。
上映会の問い合わせはホームページ、http://www.gettounohana.com/