2019年10月に消費税率が10%に引き上げられるのにともない、生活必需品の軽減税率制度の導入が検討されている。政府はその財源として6000億円を準備するとしているが、その巨額を拠出するための施策として財務省内でささやかれているのが、株式の配当や売買にかかる金融所得に関する増税だ。
乱高下はありながらも、アベノミクス以降徐々に値を上げてきた株式市場にマイナスの影響がありそうだが、この政策の実現性はどれほどあるのか。
この金融所得課税が興味深いのは、単なる政策論ではなく、今秋の自民党総裁選に微妙に絡んでいるところだ。というのも、財務大臣は安倍首相の盟友といわれる麻生太郎氏だが、麻生氏も政治家である以上、首相の座を狙う一人である。
麻生氏は一度首相を経験しているが、総選挙で大敗北して民主党に政権移譲するという最大の屈辱を味わっている。1回目で大きな成果を出せなかった安倍首相も返り咲いたのだから、麻生氏にだって可能性が残されていないわけではない。
麻生氏本人は首相になれると思っていないかもしれないが、心中には安倍首相の自民党総裁三選阻止が目標にある。このことを一番知っているのは安倍首相である。だから政権発足以来、麻生氏を副総理・財務大臣として重用し閣内に封じ込めてきたのだ。
安倍首相は「ポスト安倍」の芽をうまく摘んできた。まず最有力だった石破茂氏を地方創生大臣として閣内に取り込んだ。地方創生大臣は立派な肩書にみえるが、内閣府特命担当大臣なので、予算などの実権はない。結局、石破氏は閣外に出ざるを得なかった。その後、安倍批判のダシには使われるが、自民党内で総裁待望論は出ていない。
近ごろ首相候補として名前がよく挙がる岸田文雄氏だが、彼も石破氏のように閣内に取り込まれ、「禅譲」という言葉をちらつかせる安倍首相にまんまと骨抜きにされてしまった。