70歳過ぎの高齢者にフリーWiFiの接続方法について尋ねられた。
ここはショッピングモールのカフェ、「WiFi接続無料」を売りにしている。
いつも通りradikoを聴きつつ、増田ブラウジングをしていたら、あるご老人から話しかけられた。
「このへんってWiFiつながるんですか?」
しかし、カフェでいきなりこの質問をされたら大抵の人は戸惑うんじゃないか?
今オレが、この話の前提とこれから起こることを先に提示したから「この老人はフリーWiFiにつなぎたいんだな」と分かるだろう。
だが、何の前提もなくこの質問をされたら一体何のことかと思うだろう。
(つながるって、電波強度の話?)
先読みエスパーならシチュエーションと文脈から分かるのかもしれない。
(ためしにSiriに同じ質問をしたら近くのスタバとネットカフェを案内された。これはこれですごいな。だが「今、このカフェに飛んでいるフリーWiFiへの接続方法」は教えてくれないみたいだ。)
オレは先読みエスパーだったので「カフェのフリーWiFiのことでしたらつながりますよ。登録が必要ですけど。」と答えた。
当然、「登録?」と聞き返される。
「ああ、いやな予感がするな。まずったかな。」と思った。
「あ、そうなんだ。ありがとうございました。」
ご老人はお礼を言って場を離れた。正直ホッとした。
だが、終わらなかった。
数十分後、また同じご老人が近寄ってきて「WiFiのつなげ方を教えてもらえませんか?」と来た。
(ああ、やっぱり。)
(オレの時間を使うということは1時間いくら掛かるか分かっているのか。)
(知識はタダではないのだ。)
(オレがタダで教えたら、有料でネット接続お手伝いサービスを提供しているヨドバシの店員の仕事を奪うことになるではないか。)
なんてことも考えはしたが、幸い今日のオレはヒマだった。
これからの時代、高齢者向けのサービスも考えなきゃいかんよなあと思っていたところだったので、ちょうどよいサンプルが得られたと思った。
「フリーWiFiに接続するとブラウザから勝手に登録サイトに飛ばされるので、そこから会員登録するだけですよ。」と言った。
まあ、この説明でつなげられる人はそもそも聞いてこないのだが。
「初歩的な質問で申し訳ないんだけど、ブラウザってなんですかね?」
オレは、頭の中にある難易度調整つまみを一気に「peaceful」まで落とした。
2.ブラウザを起動して新しいページを開こうとすると、ネットワークから強制的に登録用ウェブページに飛ばされるので、新規登録を行う。
3.メールアドレス等、所定の情報を入力して仮登録されると本登録メールが飛んでくるので、メールに記載されたURLをクリックすれば登録完了。
4.フリーWiFiのトップページに再度アクセスしてWiFiを利用するボタンを押せば接続完了!
簡単だ!
なにも難しいことはない。はずだった。
開始30秒で「うわあ、なんだか凄いことに首をつっこんじゃったぞ」と思った。
ご老人の持っている5年落ちのタブレットを奪い、代理でチャッチャと接続してあげればさっさと終わるだろう。
「ブラウザってのは、インターネットを見るためのアプリです。ああ、ここにアイコンがありますね。」
「アイコン?」
カタカナを使うのはやめようと思った。
「ほら、ここに「ブラウザ」って書いてあるボタンがありますね。」
よかった、通じた。
当たり前だが、まだネットにはつながらない。
androidのタブレットは自分もよく操作性がわからないので手探りである。
設定の画面を出してもらい、フリーWiFiの電波を捕まえてもらう。
ブラウザに戻ると登録ページに飛ばされるので、新規登録からメルアドとパスワードを入れてもらう。
すると
「仮登録しました。登録のメールアドレスに送信した本登録用URLから登録を完了させてください。」
ときたもんだ。
これにはオレも、「オイオイ」と思った。
考えてみればネット環境が一切なければ、本登録用のメールにもアクセスできないのである。
ネットから断絶されている人たちはフリーWiFiにもアクセスできないのである!
「実は、つい先日、日本に帰国したばかりでまだなにもないんです。」
このご老人、長いこと海外にいて日本に戻ってきたばかりだという。
登録が必要ないセキュリティの緩いフリーWiFiもあるのでそちらに行ってもらおうとも思ったが、身の上を聞くうちに放り出しにくくなってきた。
彼がここでネットにつなげられるかどうかで、今後の日本の生活がかかっていたのだ。
しかたないので、いったんオレのiPhoneのネットワーク共有でメールを見るための接続を行う。
「ああつながった、つながった。」
いや!つながってないです!油断しないで!それはオレのiPhoneに相乗りしてるだけですから!
「これは一時的につながってるだけなので、本登録のメールだけ見ましょう。」
「メール」のアプリからメールを見てもらおうと思ったが、初期設定をしていなかった。
この道を行くのは危険と判断して、ブラウザからウェブメールを見てもらうことにした。
Yahoo!のトップページにアクセスしてメールを見てもらおうとしたが、ここで気づいた。
70を超えた高齢者には、あのトップページは情報が多すぎるのだ。
字も小さすぎる。
感触として、一画面に100文字以上表示してはダメなのではないか?と思った。
「ここでこう戸惑うのか」とリアルタイムで理解できて、自分としてもかなり勉強になった。
タブレットでwebメールを表示すると、レスポンシブルデザインなのかしらないが
ご老人は、受信箱と28を、「未読メールの数」と結び付けて捉えることができない。
「受信箱(未読メールが28通あります)」くらいの親切表示が欲しい。
Yahoo!にログインしてもらおうとするも、パスワードが間違っているらしくここでも躓く。
パスワードの再設定に進む。
ご老人は、忘れないように個人情報に紐づくパスワードを設定するのだが、最近はセキュリティ上そういったパスワードは弾かれてしまう。
キーボードと画面表示についても学びがあった。
タブレットで文字入力モードになると、キーボードが現れ、当然ながら画面は狭くなる。
キーボードで見えなくなった部分をスクロールして見るという感覚がないのである。
パスワードを入力した後、画面遷移して何らかのエラーで戻るとパスワードがゼロリセットされるのも戸惑うようだ。
奮闘の末、本登録メールのリンクから本登録を終え、フリーWiFiへとつながった。
接続後、お礼を言ったご老人はオレに何か御馳走してくれると申し出た。
ご老人も同世代にしては、だいぶデキる方だったろう。
パソコンに関してはオレの方が大先生かもしれないが、ビジネスマンとしては、海外経験もある彼のほうが先生であるように思った。
2020年以降、海外から日本に外国人が集まるとしたら、彼の経験はきっと役に立つだろう。
ネットに接続されることで、彼の知見がこれから他の誰かの役に立つことを願うばかりである。
30年もすれば、オレが若者からバカにされる立場かもしれない。
「2050年にもなって脳波タイピングも満足にできない、非義体化老人」として笑われるのはオレの方かもしれないのだ。
その時は優しく教えてね。
めんどくさい
これにはオレも、「オイオイ」と思った。 考えてみればネット環境が一切なければ、本登録用のメールにもアクセスできないのである。 本登録のしようがない! ネットから断絶...
メアド要求するのはAnonymousFTPとかの匿名サービスの名残かねぇ (※AnonymousFTPは利用時にユーザ名anonymous、パスワードに自身のメールアドレスを入力するのが習慣だった)
えらかったね増田。 俺は一足先に完全義体化するから、増田を見つけたら優しくするね。