中国では春節(旧正月)が近づくと、顔認証メガネをかけた警察官が目につくようになる。この眼鏡をかければ、身元をすぐに確認し、祝賀行事などで犯罪を取り締まることができるからだ。だが興味深いことに、こうした顔認証技術は中国の人にとって目新しいわけではない。
中国では既に身分証明証を使わない本人確認が浸透している。中国の電子商取引大手アリババ集団関連会社のアント・フィナンシャルが始めた「スマイル・トゥー・ペイ」では、カメラに自分の笑顔を映して電子決済の認証を受ける。中国では顔認証により、IDカードを使わなくても簡単に学生が大学の講堂に入ったり、旅行者が飛行機に搭乗したり、社員がオフィスに入ったりできる。
中国公安部は2015年、顔認証システムと監視カメラを使って「いつでもどこでも、完全にインターネットに接続し、完全にコントロールされた」ネットワークの実現を目指す方針を明らかにした。これを受けて、中国の民間企業や顔認証分野のスタートアップは不正行為や犯罪行為を監視するために、政府と積極的に手を組んでいる。
■顔認証分野の有力企業
中国の市民に目を光らせておくために、既に顔認証技術を採り入れている主な中国企業は以下の通りだ。
<ダーファテクノロジー>
ダーファテクノロジーの顔認証システムは16年、顔認証評価システム「LFW」の精度試験で中国のインターネット検索最大手の百度(バイドゥ)や同ネットサービス大手の騰訊控股(テンセント)、米グーグルの記録を破り、新記録を達成した。ダーファの顔認証システムで使われているディープラーニング(深層学習)は100以上の層で構成されており、既存の顔認証システムで最も多い。これにより新たなタイプの計量学習を使い、北京の人混みで容疑者を見つけたり、福建省で信号待ちをしている歩行者でさえ監視したりできるようになった。ダーファによると、同社のテクノロジーを使い、20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)開催中に多くの逃亡犯が逮捕された。
<杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)>
監視カメラ世界最大手と称している杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)は、顔モデリングと類似度計算をシステムに搭載することで、顔認証を実現した。このシステムを使えば犯罪者をブラックリストに載せたり、競技場や公園、カジノのような場所にブラックリスト掲載者が入らないようにしたりできる。
ハイクビジョンの顔認証技術は97万3661人の顔画像のデータベースから5人の容疑者を抽出し、逮捕に貢献したとされる。