トランプ氏の元選対本部長、「欧州の元政治家に金銭」と追起訴 別の被告は有罪認め

Former Trump campaign chairman Paul Manafort departs the federal court house after a status hearing in Washington, DC, USA, 14 February Image copyright EPA
Image caption マナフォート選対本部長は一切の罪状を否認している

2016年米大統領選にロシアが介入した疑惑を調べている米特別検察官は23日、ドナルド・トランプ米大統領のポール・マナフォート元選対本部長を、欧州政界出身者に便宜と引き換えに金銭を支払った罪で追起訴した。司法省は前日に、同被告を脱税罪などで追起訴したばかり。脱税などの共謀罪で起訴されていた別の被告が、司法取引に応じて有罪を認めたため、マナフォート被告への新たな訴えが提起された。

米司法省の訴状によると、マナフォート被告はかつてウクライナ政府のロビイストとして、複数の欧州の元政治家に秘密裏に金銭を支払い、当時のヤヌコビッチ政権を支援するよう求めていたとされる。

マナフォート被告は、2006年から2017年にかけて司法省や財務省の公務を妨害し、米国に不利益をもたらすよう共謀したほか、2006年から2015年にかけてウクライナの親ロシア派政治家、ビクトル・ヤヌコビッチ前大統領とその政党の「未登録代理人」として活動した罪で昨年10月に起訴された。オフショア口座を使った巨額の資金洗浄を共謀して私腹を肥やした罪や、外国組織の代理人として未登録のまま活動した罪なども罪状に含まれている。

新たな起訴内容によると、マナフォート被告は自分とヤヌコビッチ政権の間に距離を置くため、欧州の政界出身者の集まりを作ったという。非公式に「ハプスブルク・グループ」と呼ばれたこの集まりに、被告は200万ユーロ以上を支払い、米国でのロビー活動などヤヌコビッチ政権への支援を求めたとされる。

司法省の訴状は、元政治家たちの名前を明記していないが、グループの中心人物は欧州の元首相(chancellor)の「外国人政治家A」だと書いている。

この人物は2007~2008年にかけてオーストリア首相だったアルフレート・グーゼンバウアー氏のことではないかと、推測が広まっている。

グーゼンバウアー氏はBBCにこの推測を否定した。ただし、マナフォート被告と面会したことは認め、「ウクライナが欧州に近づくのは大事なことだというのが、私の考えだ。ウクライナがそれに賛成できるなら、非常に前向きなことだったので、その点を明確にするため、私は欧州連合と米国の政治家たちと話をしていた。ただし、ウクライナが間違った方向に進んでいると思うようになり、この活動は中止した」と説明した。

司法省が昨年、連邦地裁に提出した証拠資料では、マナフォート被告がウクライナ・ロビー活動のために使った米ロビー企業マーキュリーが、グーゼンバウアー元首相を専門家として契約していたことが示されている。司法省資料によるとさらに、元首相は2013年に米連邦議会の議員たちとも接触していた。

ヤヌコビッチ氏は2014年に親ロシア政策を批判されて失脚した。

共謀相手が有罪を認め司法取引

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Image caption 無罪を主張していたゲイツ被告は「気持ちが変わった」と司法取引に応じた

マナフォート被告と資金洗浄や脱税などで共謀した罪で起訴されていた実業家のリック・ゲイツ被告(45)は23日、ワシントンの連邦地裁に出廷し、捜査当局への偽証と共謀の罪について有罪を認めた。

ゲイツ被告は、ロバート・ムラー特別検察官の捜査に「関連するあらゆること」について協力すると誓約した。

偽証や共謀より量刑の重い資金洗浄や脱税の罪で起訴されていたゲイツ被告は、昨年10月に正式起訴された当初は無罪を主張していたが、「気持ちが変わった」と家族や友人にあてた手紙に書いたと米ABCニュースは伝えている。

子供たちに長期間にわたる精神的苦痛を与えるよりは、「公の場で辱められる」覚悟ができたと説明したという。

報道によるとゲイツ被告は、司法取引に応じたと説明する手紙の中で、「この司法手続きにかかる時間と費用と、裁判を前にしたサーカスめいた異様な空気は耐え難い。このプロセスを終わりにした方が、家族のためになる」と書いているという。

資金洗浄や脱税の罪で有罪となった場合、数十年の実刑判決が下りた可能性がある。司法取引でそれより軽い偽証罪などを認め、捜査協力を約束したことで、量刑は4年9カ月から5年11カ月の間の長さになる見通し。

一方で、マナフォート被告は罪状を否認している。自分への新たな罪状についてはまだコメントしていないが、ゲイツ被告の司法取引については、「自分たちの潔白を証明するための戦いを今後も戦い続けるだけの強さが、私のビジネス仲間(ゲイツ被告)に備わっていてほしいと希望し、期待していた」と文書で声明を出した。

「理由はまだ明らかになっていないが、彼はその反対の行動をとった。だからといって、自分に対して積み上がる事実と異なる訴えの内容に対して、私は今後も自分を弁護していくし、その決意は変わらない」と被告は主張している。

米司法省は今月16日、ムラー特別検察官の捜査にもとづき、2016年米大統領選に介入した罪でロシア人13人とロシア企業3社を正式起訴した。マナフォート、ゲイツ両被告の罪状は、このロシア疑惑とは結びついていない。

ムラー特別検察官は、これまでに19人を正式起訴している。マナフォート、ゲイツ両被告やロシア人13人のほか、マイケル・フリン前大統領補佐官(国家安全保障問題担当)、トランプ陣営のジョージ・パパドプロス元外交顧問、ウクライナに関してゲイツ被告とやりとりしていたアレックス・ファン・デル・ツワーン弁護士、ロシアによる選挙介入に関連して個人情報窃盗を認めたカリフォルニア州のリチャード・ピネド被告が、いずれも正式起訴された。

このうち、ゲイツ被告のほか、フリン、パパドプロス、ファン・デル・ツワーン各被告も、偽証罪などの罪状を認めている。

(英語記事 Trump-Russia: Manafort 'paid European ex-politicians'

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