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スポーツ

カーリングの科学 15

ストーリー by headless
回転 部門より
カーリングでは投げたストーンが横方向にスライド(カール)していくが、カールが発生する物理学的仕組みについては現在も解明されていないそうだ(The New Yorkerの記事)。

カーリングのストーンは底面が平らではなく、ガラス瓶の底のように中央がくぼんでおり、リング状の部分(ランニングバンド)が氷に接触する。選手がストーンを投げる際、円周方向に軽く回転をかけるとストーンは回転方向にカールしていく。つまり、時計回りに回転させると右、反時計回りに回転させると左にカールすることになる。

しかし、ガラス瓶に回転をかけてテーブルの上で滑らせると、回転方向の反対にカールする。これは前方の荷重が大きくなって前後の摩擦が非対称になるためだ。氷上でストーンがカールする方向が異なることについて、趣味でカーリングをプレイするという物理学者のMark Shegelski氏は1990年代後半、前方の荷重が大きくなることで氷が溶けて潤滑性が高まり、テーブル上とは逆の効果が発生するという説を提唱した。

この説はthin-liquid-filmモデルとして数年間主流の地位を占めていたが、ストーンは1~2回転するだけで1m以上カールし、回転数を増やしても違いはみられない。そのため、物質科学者で摩擦の専門家のHarald Nyberg氏らは、このモデルが十分な非対称摩擦を生まないと指摘。ランニングバンドの前部が回転方向に細かい傷を付け、後部がその傷に導かれてスライドするという説を発表し、scratch-guiding理論と呼ばれるようになる。

Shegelski氏はscratch-guiding理論を興味深い理論であるとしつつ、回転数によりカールが変動しない点を十分に説明できないなどと批判。物理学者で大気科学者のEdward Lozowski氏と共同でpivot-slideモデルを提唱し、研究成果がCold Regions Science and Technology最新刊に掲載された。カーリング用の氷は表面に霧を吹いて細かい氷の粒(ペブル)を作る。このペブルがなければストーンはカールしない。pivot-slideモデルはランニングバンドがペブルに引っ掛かって外れるまでの間にストーンが小さく旋回し、これが繰り返されることでカールしていくというものだ。

ただし、pivot-slideモデルはまだまだ研究すべきことが多いとのこと。Shegelski氏は問題をすべて解明したと言うつもりはないとし、ストーンの経路を生み出すのに連続した複数のメカニズムがかかわっていても驚かないだろうとNew Yorkerに語っている。Lazowski氏は、まったく間違っているかもしれないが、間違っているかどうかにかかわらずテストすることは可能だと述べている。一方、Nyberg氏はpivot-slideモデルに納得していないようだ。

関連リンク

  • AIに物理現象から法則性を推測するプロセスを学習させて、数打ちゃ当たる式で大量に仮説を出させて、適合するかを自動検証して、可能性が高そうなものを追試する、みたいなやり方で。

    いや、実際にはもうやってるのかもしれないけど。

    ここに返信
  • by Anonymous Coward on 2018年02月24日 17時29分 (#3366958)

    昨日飲み屋で隣の席から
    「カーリングってああやって擦るけど、それで止まりにくくなる理由はまだ分からないんだって」
    という話が漏れ聞こえて、そんなこたぁないだろと思ったのですが。

    ここに返信
  • by Anonymous Coward on 2018年02月24日 18時48分 (#3367004)

    日本のハイテクを惜しげなく投入したはずの下町ボブスレーが伸び悩んだのも、
    氷上を滑る物理モデルの段階で既に未解決問題があるからだと考えてよいのでしょうね。

    ここに返信
    • by Anonymous Coward

      あれは自分たちの技術に自惚れた結果でしょう
      この程度簡単に作れるわって碌に研究もせず作ったら使えないソリが出来たってだけ

      • by Anonymous Coward

        あの件については、何が問題なのかさえわかってないな、きっと。

    • by Anonymous Coward

      ラトビア製のソリを紆余曲折あった結果で使って18位ですから、下町ボブスレーなんか使った日には鼻から悪魔が出て来てたんでしょうね(棒読み)

  • by Anonymous Coward on 2018年02月24日 20時18分 (#3367033)

    子供のころ不思議に思ってた現象とよく似てる。かも。

    ボールに、上面図で ↑○↓ のように回転をかける。
    (a). 前方空中に投げた時
      → ボールは右に曲がる
    (b). 卓球のラケットで前方に打ち出した時
      → ボールは左に曲がる

    単に後者の場合に、卓球台との摩擦(『前後で非対称』になっている)の効果が
    空気とのそれに優越する、というだけなのだけど。

    ここに返信
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UNIXはただ死んだだけでなく、本当にひどい臭いを放ち始めている -- あるソフトウェアエンジニア

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