在原業平殿と小野小町様が,、TS氏紹介の論文にご興味あそばされているようです。
TS氏、ご関心の論文であることと、殿上人のご両人が興味を持たれたことに触発され、学とみ子も論文をのぞいてみたいと思いました。
熊本大学発です。
最近、腸内細菌の免疫調整機能についての話をよく聞きます。
免疫、小児科学など、この領域の研究者たちにとっては、昔からの研究分野ですが、昨今の腸内細菌の話題は、多分に、食品メーカーの過剰効能宣伝に利用されてしまっていて、効能を謳う論文結果には抵抗があります。
外国の論文でも、乳酸菌が子供のアレルギーを防いだとかの成績については、ねつ造噂が絶えません。
このブログも、初期の頃のアレルギーの話題には、腸内細菌をだいぶ取り上げていました。 (今は、STAP一色だ~)
こうしたきらいがあることは置いておいて、TSさんご紹介の論文の話に戻ります。 今回の論文は、細菌と人類の関係についての話題ではあるものの、方向性が少し違っています。
昨今、すでに分化してしまった動物の体細胞でも再び、初期化できることがわかってきましたが、細胞の初期化変化を可能にする物質は不明でした。
その物質は何か?の答えとして、この論文は“それはリボソーム”とのことです。
科学の進歩により、遺伝子からタンパク合成までの翻訳機構の担い手は、リボソームであることがすでに明らかにされてきました。
しかし、リボソームの働きは、これだけではありませんでした。
リボソームは、翻訳機能のみでなく、体内で幅広く機能することがわかってきました。
腫瘍形成、免疫シグナル伝達、および発生制御にも関与しています。
つまり、このリボソームに含まれるタンパク質は、すでに解明されていた遺伝子翻訳機能に加えて、さらなる複数の機能を有していることがわかってきたのです。
外から取り込んだリボソーム、あるいは細胞内部に抱えているリボソームが、細胞の初期化に深くかかわっている事実の解明です。
そして、今回の論文では、細菌由来のリボソームが、人の細胞の初期化に関連していると論じています。
以前から、リボソームは月明り(副業をする)蛋白と言われていて、遺伝子構造からタンパク合成を導くものと言われていたのですが、さらに、細胞レベルでも細胞を導くとのことでした。
13.Jeffery, C. J. Moonlighting proteins: old proteins learning new tricks. この話を聞くと、細胞がXen TS ESと、横に機能を移動させていくとの和モガビー玉説にも通じるような話です。和モガビー玉説は、わくわくしますね。
細胞をビー玉にたとえて、柔軟に横に動かしていく力を発揮する候補物質がリボソームか?などと想像は膨らみます。
論文のアブストラクトです。
最近、我々は、細菌の取り込みがヒト線維芽細胞の細胞分化転換を誘導することを報告した。 しかし、細菌内在性細胞分化転換因子は未知のままであった。
ここでは、細胞の分化転換がリボソームによって引き起こされることを発見した。
原核細胞(細菌など)でも真核細胞(細菌以外)由来でも、これらの細胞から取り出されたリボソームは、細胞に胚様体様集団(クラスター)を作らせることができる。
細胞は、トリプシン活性化エンドサイトーシス(細胞内取り込み機構)を働かせて、細胞質と核の両方にリボソームを取り込む。
リボソームを取り込んだ細胞は、クラスター形成をする。
細胞がリボソームで誘導されて細胞クラスター(RIC)を形成すると、この細胞群は、いくつかの幹細胞マーカーを発現し、3つの胚葉すべての派生物に分化する能力を獲得する。
リボソーム誘導性細胞クラスター(RIC)は、増殖したり、多能性遺伝子のメチル化状態を変えたり、奇形腫またはキメラ形成には寄与しない。
このように、RICは、自らの増殖はできないがにもかかわらず、細胞周期を変えずに上皮間葉移行のマーカーを発現する。
細胞が移行する現象の発見は、宿主細胞は、自らを分化させることに、リボソームを利用する。細胞は、可塑性を示すものである。
論文のイントロダクションはこのように始まります。
最終的に分化した体細胞は安定していると考えられてきた。しかし、体細胞が多分化能を持っている事実は、カエルの体細胞の核を卵に移植することによって達成できることで示される。 さらに、特異的な転写因子の強制発現によって多能性幹(iPS)細胞を誘導できることもわかってきた。
最近の研究で、多能性幹細胞は、小分子化合物のカクテルを用いてマウス体細胞から作れるようになった。
人類は、生直後に微生物と接触し、人類は、生涯、病気、栄養吸収、免疫系の発達などを通じて、微生物と広く相互作用する。細胞の運命は、微生物の影響を受けている。 ハンセン病桿菌は、細胞再プログラミングをハイジャックして感染を拡大することが観察されている。腸内微生物叢は宿主腸内の神経グリアの発生を制御する。 ヒトの腸内微生物は広く分析されており、乳酸菌はヒトの恒常性と免疫と密接に関連している腸内微生物叢中の主要細菌である。
これまで、我々は、ヒト皮膚線維芽細胞(HDF)への乳酸菌の取り込みが細胞の運命を変え、3胚葉すべての細胞に分化することを実証した。
しかし、現時点で、体細胞を変換する細菌固有の形質転換因子は同定されていない。・・・・・・
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この記事に
コメントで誤訳の指摘を受けました。学とみ子はコメントに感謝すべきなのですが、ミスの指摘に嘲笑スタンスがみえみえですので、感謝はしないことにしました。
月光は、Moonlight
Moonlightingとなると、副業をするとか、夜のバイトをするとかの意味になるそうです。
以前、この違いが、アルクか何かの雑誌で、息抜きコラムか、おもしろコラムで紹介されていたのを思い出しました。
月明かりと訳するのは間違いですので、本文を変えました。
ネットで嘲笑がまわっているとのことですが、英語を自慢する人は、機器の使い方が未熟だと桂報告書に書くような人と共通するメンタル性を感じます。本題とは関係がなくとも、世間の関心をミスに集中させたい人です。
2018/2/23(金) 午後 8:30
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