「満席は難しい便」ANA、なぜ飛ばすのか? 物理的に容易でない成田~メキシコシティ線(写真10枚)
ANAのメキシコシティ発成田行きNH179便は、満席での運航が、物理的にかんたんではない便です。なぜそのような便を、ANAは飛ばすのでしょうか。日本とメキシコを結ぶ空でいま、火花が散っています。
複数ある、容易でない物理的な理由
ANA(全日空)が運航しているメキシコシティ発成田行きNH179便は、条件にもよりますが、満席での出発が“物理的に”難しい便です。
理由としてまず挙げられるのは、ANA最長路線で、直行便で、西へ飛ぶこと。成田~メキシコシティ間の基本マイルは7003マイル(約11270km)。ANA最長の路線で、かつ経由地で給油しない直行便であり、偏西風に逆らう西行き。離陸時に多くの燃料が必要で、機体が重くなります。ちなみに、成田~ニューヨーク間の基本マイルは6723マイルです。
次に挙げられるのは、メキシコシティ国際空港(ベニート・フアレス国際空港)の標高が高いこと。2230mと、富士山5合目と同等です。そのため空気(酸素)が薄く、標高が低い場所にある空港と比べ揚力が減少するほか、エンジンパワーも出にくいため、離陸時の滑走距離が長くなります。
そしてもうひとつは、暑いことです。メキシコシティは高地にありますが、その割に気温が高く、最高気温は年平均で約25℃(気象庁〈日本〉のデータから計算)。気温が高いと揚力が弱まるため、離陸時の滑走距離が長くなります。
こうしたことから、そのほかの条件にもよりますが、乗客数を制限して軽くしないと、約4kmの滑走路を全部使っても、メキシコシティ国際空港からの離陸が難しいのです。ANAは成田~メキシコシティ線に、燃費の良いボーイング787-8型機(169席:ビジネス46席、プレミアムエコノミー21席、エコノミー102席)の、特にエンジン性能を高めた機体を投入していますが、それでもです。
ANAの成田~メキシコシティ線は、成田発のNH180便がメキシコシティへ13時55分に到着したのち、折り返しの成田行きNH179便は午前1時00分の出発と、時間があいています。夜になって気温が下がり、離陸しやすくなるのを待つためです(成田空港に着陸できるのが6時から23時までであることも関係)。
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