MENU
ギークハウス越路

シェアハウスを解散するにあたってのエントリ

2月末でギークハウス越路を解散することになりましたのでその経緯エントリ。
なるべく安くのんびり生きることができる家を目指していたんですが多方面で難しさが出ました。
他の田舎にあるような村八分的なこともなく、逆にご近所の方々や家の持ち主はよくしてくださっただけに残念な気持ちもあります。
なおこのドメインはもうすぐ失効しますのでこのエントリも消えます。地方でシェアハウスをする人で参考にしたい方は保存してください。
以下無理だと判断した経緯をつらつらと書いていきます。

ヤバいやつ


ギークハウス越路を計画していたときから一番懸念していた屋根上の積雪
毎年のように「雪の重みで屋根崩壊」、「雪下ろしして屋根から転落死」などのニュースがある地域な上に、僕自身雪下ろし未経験。
そんな背景もあり、雪下ろしをどこに頼めばいいのかなど冬になる前にいろいろレクチャーを受けましたが。。。

想定よりも遥かに多い、災害救助法が適用されるレベルの大雪が降りました。
福井の大雪が報道されてますが、こちら長岡も先々週の時点で80cm、先週の時点で1.5mほどの積雪がありました。
例年80cmを超えると雪下ろし業者に依頼するらしく、今年も80cmを超えたところで依頼したのですが業者も手一杯でしばらく対応不可とのこと。
古民家がゆえ屋根が潰れないか不安でしたので長岡中の業者に電話したもののどこも同じ状況。
結局自分で3割ほど雪下ろしをして残りを翌週に隣の市の業者に3日がかりでしていただきました。

「今年は特別雪が多い」

皆さん口をそろえて言いますが、来年再来年と同程度の雪が降らないという保証はないし、雪が降ったら真っ先に雪下ろしをしてもらえるようなコネクションもなく、毎年数人の死者が出る作業を住人に任せるわけにはいかない。
もちろん待っている間にも雪は降る=屋根崩壊が気になって眠れないわけです。
これは精神的にこたえました。

若けぇんだから自分たちで下ろせばいいねっか

業者に言われた一言です。
全くごもっともで高齢者世帯こそ優先的に雪下ろし業者に来てもらうべきだと思いますのであとは来年にむけて自分でスキルを身につけるしかないのですが、運営のメリットとデメリット&雪下ろし労力を天秤にかけると全くそんな気になれませんでした。いろんな意味で雪は重かったです。

お金の面

お金の面で辛くモチベ尽きた


1年目は赤字でいいかなと思っていたのですが、想定よりさらに赤字でした。
大きい家×冬は想像以上の光熱費。
10月以降の電気代は35000円/月、灯油も2月末までで7万ほどかかりました。
冬に極端に光熱費が上がるのはギー潟で経験済みなのですが、想定外の寒さによりいただいた家賃と共益費は全て光熱費に消える冬でした。
もちろん共益費は光熱費次第で増減する契約なのですが、共益費を上げられない理由がありました。

家賃の未払い

メイドさんは東南アジアの代表的な仕事


前述の通り、なるべく安くのんびり生きる家を目指し家のオーナーの協力の下、家賃1万円~と破格に設定。
月3万で暮らせたらそんなに働かなくてもいいし残りは勉強時間に費やせるだろと思ったことが設立の背景にあり、知識やスキルのある、いわゆる高等遊民が集まる家を目指していたのですが、結果的にそうはならず、若者だけではなく地方の貧困を実感することとなりました。
「地方に残っている人」と「わざわざ住みに来る人」の中で高等遊民的な人の割合が少なそうであることもわかっていて、どんなタイプの人もなるべく受け入れるようにしていたのですが、世界でもかなり安い方だと思われる毎月1万そこそこの家賃が支払えず何ヶ月も滞納する人が何人もいたのは想定外でした。
それでも勉強会を開いて自分なりに育成もしたのですが、このライフスタイルも適正がありますし、そもそも向上心あふれる人や勉強熱心な人だったら1万円の家賃も払えないような貧困層になってないですよね。
ただ思い返してみると、自分も20代の頃は無気力でお金もスキルもやりたいこともなく海外に出る前まではあっちにぶつかりこっちにぶつかりしながら迷走していたわけです。
それでもなんとか生きていけたのは今思うと東京に住んでたことが大きかったかなと思います。
東京では底辺でもわりとお金を稼ぐ術があって、また底辺のネットワークで楽なバイトや治験を紹介してもらったり紹介したりとなんとかしようと思えばなんとかなるシステムがありました。
ところが地方にはそれがあまりない。術もそうだけど情報やネットワークもないのです。
アウトローがアウトローとして生きることも許されない空気もあり、これって本人たちだけの問題なのかなあと思ったりもします。
「面接が怖い」「人と接するのが苦手」そんなメンタルが弱く不器用な人は一定数おり、何の縁もゆかりもない地方にわざわざ来る人がその層である確率は低くありません。

人口減の地方に移住者を。そう叫ばれ始めてからもうだいぶ経っています。
僕としても地方が元気になってほしいと思っていますしネットの力で移住者を増やすことはできます(ギークハウス越路の住人の6割は他県や海外からの移住者)がその先はそう簡単ではなくてやはり仕事の問題は解決されず残っているわけです。
東南アジアだとアパート付きのメイドさんなんかはゆるい仕事のひとつで一日のうち2時間だけ掃除してあとはのんびりしています。
シェアハウスの先、「東南アジアのメイドさん」のようななるべく楽な仕事を作る=入居者のための1段目の階段を作ってあげるような活動もしておりますが、まだ至らないのが現状です。
「一人あたりのGDP400万+平均消費120万で移住者一人につき500万超の効果、移住者誘致だ!」なんて絵空事を言うより、「お金ないしあんまり働きたくないので地方でのんびり生活したい」層を誘致するほうがよっぽど現実的で、そのためにはアドバルーン監視のようなゆるいバイトだけを集めた求人サイトやシェアハウスに楽な仕事が定期的に斡旋される仕組みがあるといいのですが、これって自治体の協力が不可欠なんですよね。

大きい家と法律

大きい家は大変だった


ここ新潟県は農家の大きい古民家が多く、当然ながら空き家も多いという事情があります。
空き家問題と移住者問題を同時に解決する手段としてシェアハウスが挙げられるのはどの地方もそうだと思いますが、法律の壁がありました。
一定以上の大きい家は法律的にいろいろ制約があって改修に多額の費用がかかるそうです。
シェアハウスの先を考えたときに自治体の協力が不可欠、なんて思っているときにその自治体から指摘を受け、自分では地方の役に立つことをしていたつもりだったのに独りよがりだったことに気付いて最終的に解散を決めました。
家自体はよかっただけに非常に残念です。

最後に

ギークハウス越路をやってみて一番感じたことは「一人の信念だけでは続かない」ということです。
自治体はもちろん、近隣の方、住民全員など多くの人が欠けることなく協力してくれることがどうしても必要になってきます。
先の法律上の指摘にも「法律がこうだから改善して」より「法律がこうだけど社会にとって意義があるなら条例を提案したらどうか」という対応ならまたちょっと続ける余地もあっただろうと思います。
(実際、鳥取や愛知、東京には法律よりゆるいシェアハウスやグループホームの条例がある)
それと「海外では○○なのでこうしたほうがいいのでは」という話をすると決まって「ここは日本なので」という返答をされるのがいつも引っかかります。
僕としては合理的な方法を提案してるつもりなんだけど真っ向から否定されてるという感じがするし、(もちろんちゃんと聞いてくださる方もいるんですが)後進国に住んでた人の話なんて聞く耳をもたないよ的にもとれるのでもし的はずれだとしても「○○のような理由でその提案は日本だと難しい」という返し方で返してほしいです。
「ここは日本なので」と「法律がこうだから」という対応はまるで日本と法律が2018年の現代において完璧で合理的ですと言ってるかの如くに感じるのです。

日本の地方、ヨーロッパや東南アジアに住んだ経験から比較しても「まだ終わってない」といえますが、終わりゆくあるのも事実だと思います。
足りないのは柔軟性、あと見守る目。40過ぎたら一線から退くみたいな文化が他の国にはありますので、あとは志ある若い人が意志をついでくれたらと思います。
それと若い人はなるべく早く海外に出て、10年で人口が3倍になるような街に住みいろいろ感じて、成熟して地方に帰ってきてほしいと思います。

短い間でしたがありがとうございました

※最後に住人主導でイベントやるみたいなんでよかったらどうぞ

:)