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新連載・これからのAIの話をしよう:「もう自分では勝てません」 28歳の東大院生が最強の麻雀AIを作るまで (2/3)

» 2018年02月23日 09時00分 公開
[村上万純ITmedia]

水上さん 役を上がったり、リーチを打ったりしたプレイヤーの牌譜(将棋や囲碁でいう棋譜。プレイのデータ)を学習する所からですね。

 自分の手牌で役ができているかどうか、できているなら何点なのかなど、基本的なことから。序盤は字牌が切られやすいなとか、「1」「3」「4」と並んでいたら「1」がよく切られているなとか、うまい人のプレイをまねていくイメージです。

―― うまい人のプレイを覚えて、まねしてるんですね。

水上さん はい。でも、序盤はあまりに情報がないので苦手です。人間の場合は、最初に14枚の牌が配られた時点で「この手だとタンヤオができそうだな」とか、何となくイメージできるんです。

 コンピュータはこれができない。全部の可能性を検索すると膨大な計算になるので、うまい人のプレイを覚えさせてそれっぽい手を打たせてます。

AIが得意なこと、苦手なこと

―― では、AIが人間より得意な所は。

水上さん 爆打の特徴は、4人の点数をもとに最終的な順位を予測する「期待最終順位」を出すこと。点数状況、捨て牌、上がり率や相手のテンパイに振り込む確率などを加味して、例えば「リーチしたとき」と「リーチしないとき」の差を見るんです。その差が0.03以上なら明確に一般性があり、有効な手といえます。

(編集部注:リーチ時は2.13位、リーチなしなら2.20位のように計算。リーチしたときの方が0.07差で平均順位が上がるので、その局面ではリーチするのが良い手とされる)

麻雀 「天鳳」で対人戦をする麻雀AI「爆打」。現時点の段位は七段

―― 選択肢AとBがあった場合、どちらが有効かを数値で示してくれるということですね。著書「麻雀AI戦術 人工知能『爆打』に聞く必勝法」を拝読すると、「えっ、それを切るの?」と驚くようなアドバイスもあります。

水上さん 基本的にはシミュレーションをして、今の局面から最後までどうなっていくかを頑張って計算して次の一手を探しています。

 この局面でどの役を上がると何点得られて順位がどう変わるかといった細かい計算をできる人ってなかなかいないと思うんですよ。そういう意味で、人間が意識していなかった、はっとさせられるような手を打つことはあります。

―― 細かい計算では人間はコンピュータに勝てない。

水上さん 0.1%と1%の違いで期待値に大きな差が出てきます。人間はそこまで細かく考えていないので、差がつく局面を見落としがちです。

 あとは、相手のリーチに対してノータイムで打ったりと、人間にとって難しい局面でも動じないので(笑)。

―― メンタルが強い(笑)。長時間打っても脳が疲れたりしないですもんね。もう爆打は水上さんよりも強い?

水上さん 直接対決したことはないですが、成績だけ見るとこれはもう勝てないだろうと。最初はこっちの手の方がいいよなぁと思うこともありましたが、最近は爆打の手の方が合ってるのかなと思うケースがどんどん増えてきて。

―― 爆打が頭1つ抜けたきっかけはありましたか。

水上さん ダマテン(テンパイしてもリーチをしないこと)を覚えたことで強くなりましたね。その頃から相手の当たり牌を止めることもしばしば。

―― 将棋や囲碁AIの世界では、ディープラーニングの技術も注目されています。麻雀AIにも応用可能なのでしょうか。

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