裁量労働制データ偽装問題 厚労省に“確信犯”の疑惑浮上

裁量労働制をめぐる厚労省のデータ問題で、厚労省に“確信犯”の疑惑浮上

記事まとめ

  • 立憲民主党の分析で更に117件の異常値が見つかった裁量労働制を巡る厚労省データ問題
  • 裁量労働制の実態調査を行ったら安倍政権の思惑とは違ったため違う数字を使用したとも
  • 仮にこの通りであれば、厚労省は確信犯で、内閣総辞職モノの“犯罪的行為”だという

裁量労働制データ偽装問題 厚労省に“確信犯”の疑惑浮上

裁量労働制データ偽装問題 厚労省に“確信犯”の疑惑浮上

加藤厚労相(C)日刊ゲンダイ

 立憲民主党の分析で新たに117件の異常値が見つかった、裁量労働制をめぐる厚労省のデータ問題。医療や福祉など国民生活と密接にかかわる官公庁の公表資料がこれほどズサンだったとは驚くが、どうやら、この問題の“本丸”は別にあるようだ。新たに浮上しているのは、厚労省が関連法案を議論した労働政策審議会(労政審)をダマしたのではないか、という重大疑惑である。

「実労働時間を調査する、と言って調査をしながら報告していない。委員からも(労働)時間を求められているにもかかわらず、答えていない。これは労政審に対し、労働時間を意図的に出さないようにしていると、誤解を受けてもおかしくない」

 22日の衆院予算委。立憲民主党の岡本章子議員が加藤勝信厚労相にこう迫った。

 裁量労働制の適用拡大を含む労働法制関連の議論は、2013年6月14日に閣議決定した「日本再興戦略」から始まった。そこには〈労働時間法制の見直し 企画業務型裁量労働法制を始め、労働時間法制について、早急に実態把握調査・分析を実施し、本年秋から労働政策審議会で検討を開始する〉とあった。

 これを受け、同年9月27日に労政審の労働条件分科会で審議が始まったのだが、注目すべきは〈早急に実態把握調査・分析を実施〉のくだりだ。

 議事録を読むと、厚労省の労働条件政策課長はこの調査の資料が〈平成25年度労働時間等総合実態調査〉と説明し、今のインチキデータ問題につながっているのだが、不自然なのは、なぜ厚労省が閣議決定前の13年4~6月に実施した同調査結果を労政審に提示したのかということだ。

■「基礎資料にする」はずの調査を報告せず

 労政審の委員からは、裁量労働制の労働時間の実態がよく分からない――との意見が続出。13年10~11月ごろ、厚労省から委託を受けた独法の労働政策研究・研修機構(JILPT)は〈裁量労働制の労働時間制度に関する調査〉として、わざわざ〈今後の労働時間に関する法制度や行政施策の在り方を検討するための基礎資料を得るために実施する非常に重要な調査です〉との注釈付きで調査を実施。翌14年5月に作成した報告書では、企画業務型裁量労働制の労働時間が194・4時間だったのに対し、通常は186・7時間と、平均で裁量労働制の方が長い結果をまとめている。

 岡本議員が予算委で追及したのは、厚労省主導で裁量労働制の実態調査を行い、裁量労働制の労働時間の方が長いという精緻な調査データがありながら、なぜそれが労政審に報告されなかったのか――という点だ。

「厚労省がJILPTに委託した文書には『25年度下期に労政審で議論を開始する予定であり、それに間に合うように調査研究の成果をまとめて頂きたい』『労働時間法制の企画立案の基礎資料にする』と書いてあったと言います。しかし、JILPTの労働時間の調査結果は労政審には報告されなかった。これはどう見てもおかしいでしょう」(厚労省担当記者)

 閣議決定に従って裁量労働制の実態調査を行ったら、労働時間が安倍政権の思惑とは違って長い結果となった。だから、厚労省は閣議決定前に実施したフツーの労働調査の数字を適当につまみ食いして労政審に示したのではないか――。これが野党の見立てだが、仮にこの通りであれば、厚労省は確信犯と言っていい。法案取り下げどころの問題じゃない。内閣総辞職モノの“犯罪的行為”だろう。この問題はまだまだ根が深い。

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