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「少年ヨルハ」と「音楽劇ヨルハ」の感想。

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2018-02-24 00:43:02

「少年ヨルハ」と「音楽劇ヨルハ」が終わった後の原作者によるとても長い感想。


.少年ヨルハ

..全体
最初に「少年ヨルハ」をやる時にはいくつか案がありました。

A・前回の「ヨルハ」を男子に性別変更したバージョン違い案。
B・新ストーリーで、女子を全員男装させる案。
C・新ストーリーで、男子が出演する案。

結局、齊藤さんからのリクエストや、音楽劇と隣接して上演される事からC案となったんですが、AとかB案も面白かったかもしれないなーと振り返ったり。
上演された六行会ホールは、250人程度の劇場ですが、結構立派な作りで狭く感じないですね。
情熱的な演技と、スピード感のある殺陣。千秋楽に向けてどんどん加速するバトルはケガ人が出ないかヒヤヒヤするレベル。ヨルハ物語の中で最後に作ったので、設定の制約に縛られた内容だったので心配だったんですが、役者さん達の熱演が全てを吹き飛ばしてくれました。ありがとうございます。

..演出 谷さん
若干26歳にして、いくつもの舞台を手がけられている谷さん。役者の人間としての本質をエグリ出そうというその姿勢に、役者の皆さんも引きずられるように熱を出していきました。その結果、回を重ねるごとにそれぞれのキャラクターは深まり、ファンの方が各キャラクターにアツイ想いを抱いて下さるという結果を呼ぶ事に。これも一重に、谷さんの真摯な演出が届いたからだと思います。若いのにイロイロ頑張ってくれて大感謝。

..九号 斎藤さん
ひと目見た時から「九号はこの人にお願いしたい」と決めた方でした。妙な透明感と不安定さがある方で、主人公でありながら、ほとんど戦わない九号を上手く演じて下さいました。稽古中に感情が入りすぎて涙を流していたのが印象に残っています。実は殺陣が出来るそうなんですが、今回の九号はあまり武器を持たなかったですね。ごめんなさい……

..二十一号 村田さん
皆さんの目にも焼き付いたと思うんですが、ラストバトルの動きは狂ってて良かったです、よね?色んなモーションと叫び声、アドリブの「痛いぃぃ」などのセリフ。その人間離れした状態から、最後に二十二号に向ける優しい眼差しに戻る時に、二十一号がいかに二十二号を大事に思っていたかが伝わった気がします。歳を取った時の演技も見てみたい、そう思わされた役者さんでした。

..二十二号 寺坂さん
二十二号は、物語の都合で完全に受け身な人になってるんですが、甘いマスクと自信なさげな喋りで、甘えるキャラクターをキチンと作り上げてくださいました。大きなお花がいくつもファンの方から届いているのを見たんですが、やはりなんかこう、女性を惹き付ける謎のフェロモン的な液が出てる気がします。

..二号 植田さん
孤独であまり喋らない暗殺者。甘いマスク、殺陣のスピード感、切ない声……なんというか、若い女子に人気が出そうな素敵キャラに仕上げてくださいました。ご本人は挨拶回りなんかもキチンとされる大変丁寧な方で、若いのにスゴイなーと。二十一号の壮絶なラストバトルと、その後の結末の演技はなんど見ても目を奪われます。

..六号 土井さん
オーディション時は坊主の野球少年みたいな感じだったんですが、目に妙な色気というか殺気を察知してお願いしたところ、大変なハマリ役となりました。片手で笑いながら教官と戦うシーンは、虫を殺す無邪気な少年のようでもあり。ちなみに土井さんは嗜虐性の全くない、超真面目な人で、役者さんってスゴイな、と。

..三号 庄司さん
パワー系で雑な三号は女子に人気出ない、と勝手に思ってたので「でも俺は好きなキャラですよ……」と陰ながら見守っていたのですが、四号とのペアにより、沢山の声援をいただいたのが意外でした。雑なようでコンプレックスのあるキャラクターとして上手に演じていただき大感謝。ちなみにご本人は丁寧で超キレイ好きな方。これまた意外。

..四号 小栗さん
小栗さんは「雷ケ丘に雪が降る」という舞台で拝見した事があるのですが、そのキャラクター性があまりにも違う為、オーディションしてるときは気づかなかったという……。無口で優秀、三号との友情は大事に思ってて、でもその気遣いが三号を苦しめてしまう。結局の所、三号も四号も不器用だったんだな、と小栗さんの演技を見て感じました。

..カクタス インコさん
オーディション時、最も選考苦労しなかったキャスト。それがカクタスです。中年で、弱く、人間味がある……そういう俳優さんが少ない中、キラリと光る弱さを見せつけて下さいまいした(褒めてます)。ドラクエ繋がりでスクエニ齊藤Pにご紹介いただいた方ですが、ピタリとハマった感はあります。

..フロックス 田邉さん
フロックスは、永遠の二番手、副隊長、という難しい役ドコロなのですが、その繊細な心情を上手く表現していただきました。ワガママで自我が爆発している連中の中で「誰かを立てる」為に生きているその姿は、男気の塊です。一番ラストのシーンで、一言、というか、一音も出さない所に、その生き様が現れていたように感じます。

..ロータス 増田さん
オーディション時に、ひと目見て「味のある演技をする人だな」と思いました。キャリアのある方かと思いきや、すごく若い役者さんで。飲みの場で私生活を聞いてて思ったんですが「役者バカ」という言葉が一番似合う人でした。多分、この人は現代社会に向いてない気がします。でも、そういう人がイイ演技をするんです。きっと。

..教官 菊田さん
僕が思ったキャラクター設定から一番外れた演技をしてくださった方。僕の想定した「教官」よりも、感情的だし、動揺する。クーデターが起きた時の狼狽えっぷりがすごいな、と。その意外性によって一つ深みを増した気がします。イケメンで写真がキリッとしているところが、またギャップがあっていいですよね。そう思いませんか?

..SS あきやまさん
あきやまさんはゲーム(ニーアオートマタ)側からの参戦。少年ヨルハでは悪役の代弁者として活躍します。生出演にもかかわらず、演技を殺したロボ声を要求させていただきましたがそのハードルを簡単に飛び越えていって下さり。本番直前の稽古で、セリフが飛んだ時があったんですがその時にようやく「あきやまさんも人間なんだ」と思う、そういうレベルで、機械の声を表現して下さいました。
※声優さんはその他石川さんの2B、磯部さんの6Oなんかが隠れ出演してくださいました。

..アンサンブルの皆様
3人で演じて下さったのに「こんなに敵がいるのか!」と思わせてくれた皆様。しかもゲネプロでお一人怪我をされて、本公演では2人となったのですが、その状況でも全く遜色のない敵軍表現を完遂した事にビックリしました。少年ヨルハが成功したのは、アンサンブルの皆さんの努力があったればこそです。ありがとうございました……


.音楽劇ヨルハ

..全体
今だから言えますが、「少年ヨルハ」が終わった直後に思ったのは「音楽劇はヤバイかも」という危惧でした。殺陣と役者さんの演技が大迫力だった「少年」に対し、「音楽劇」では女子しかいません。筋力の差があり、殺陣の迫力がどうしても劣ります。さらに音楽劇は大きな箱で視界の中での役者さんのサイズがどうしても小さくなり表情などを伝える事が難しくなります。さらには再再演であるというネタバレハンディキャップ

にもかかわらず、演出の松多さんと、役者さん達の熱演、さらにはスタッフさんの努力により、恐ろしい完成度の舞台となりました。自分の脚本・脚色のダメさを痛感する以外に、何も不満点のない、エンターテインメントの完成形が現れたと僕は思っています。関わった皆様に心からの感謝を。

..演出 松多壱岱さん
まつださんは役者さんの演技指導と同時に音と光を扱うのが上手い演出家さんです。エンドロール後、最後に二号が剣を振ると同時に出るタイトルロゴ。あの瞬間、全ての物語と役者さんの熱演が、まるで「その一瞬」の為にあったかのように昇華しました。ゲーム演出という似たような仕事を担当する自分にとって、敗北感すら感じさせる演出力には拍手しかありません。

..二号 石川さん
メチャクチャに動く殺陣によって、毎公演、終わった後にフラフラになっていた姿が目に焼き付いていた石川さん。彼女はゲームからのお付き合いで「二号が石川さんである」というのは特別な意味がありました。声優さん選定中の声に「あ、2Bはこの人でいこう」と思い、その時から楔のようにヨルハ世界の中心に居た気がします。舞台のオファーを快く受けくださり、素晴らしい演技と、華麗な殺陣(しかも初めて)までこなすという才能に感服。

..四号 田中さん
大変失礼ながら、テレビをあまり観ない自分は、田中さんが元モーニング娘。であるという事すら知りませんでした(申し訳ありません)。ですが、歌う時のオーラは、格段の輝きで目を奪われます。さらに、重い剣を振り、ラストバトルで疲弊した時の最後の言葉は、どこまでが演技かわからないレベルに到達していて。一流とはこういうことなのかな?と痛感させられた女優さんでした。

..十六号 持田さん
初演・再演から大きく配役イメージを変えさせて頂いたキャラの一人に、十六号がいます。持田さんはクール系の配役が多かったそうなのですが、今回はここに推させていただきました。結果的に「乱暴でヌケてる」という役を上手に演じていただけたと思います。稽古中に徐々に銃の撃ち方が上手くなっていき、公演時にはまるで本当に撃っているかのような状態になっていたのが印象的です。

..二十一号 花奈さん
元々二十一号は人気の出そうな役なのですが、宝塚仕込みの花奈さんの可憐&意志のある演技によってブロマイド連日完売に導いて下さいました。ゲームもプレイして下さった彼女。最後にアネモネに撃たれる瞬間、汚染された首をかしげるモーションを、可愛く・悲しく見せるというちょっと信じられない離れ業を魅せて下さった事が、今でも忘れられません。

..司令官 舞川さん
ゲーム出演キャラの一人、司令官。舞川さんの高身長とキレイな歩きが存分に活きた感じがありました。ところで、今回の音楽劇ではボリュームを増やす必要がありシーンを追加したのですが、その中の一つが「司令官と人類会議との会話」でした。珍しく感情的になるその演技。ゲーム中にあまり見る事のなかった司令官の側面が伝わって来て大変気に入っております。

..フタバ 石川さん
司令官に逆らうフタバは、普通に考えたら「やや気が強い、おねぇさん」をアサインするのが普通ですが、あえて声の幼さが立っていた石川さんを選ばせていただきました。そこに何かの違和感めいたものが出て欲しいな、と思ったので。おかげで、最後にフォーマットされた後の明るく無邪気な演技から、気持ちの悪い違和感が残った気がします。

..ヨツバ 兼田さん
ヨツバは受け身型のキャラクターなのですが、兼田さんの演技によって「心配性のおねぇさん」のような人格が現れた気がします。序盤はクールなのに徐々に人間味を帯び、最後には司令官に抗議するような口調で立ち去るヨツバ。その人間性がフォーマットされ、最後にまた機械のような笑顔を取り戻すその瞬間、怖さの印象が残る場面に仕上げてくださいました。

..ローズ 雛形さん
ローズ隊長は凛々しい事が必要条件なのですが、フワッとした見た目なのに、パワー感のある演技をする雛形さんのギャップによって面白い効果を出していた気がします。普段の楽しそうな家族感と、最後の戦闘で魅せる迫真の演技が、レジスタンス全体の思いを体現していましたね。ローズ隊長がここまでどうやって戦ってきたのかを知りたくなる、そんなキャラになっていたと思います。

..アネモネ 橘さん
数少ない生き残りのアネモネ。鋭い眼光と、オーディション時の一発芸(をやる度胸)で選ばせて頂いたのですが、素晴らしいキャラクターにして下さいました。21号を撃った後の叫びは、最後の戦いに向ける覚悟を伝えるトリガーとして機能し、舞台全体を締めるポイントに。原作が全く想像していなかった効能であり、舞台の面白さな気がします。

..ダリア 内田さん
十六号と対になる形でレジスタンスの乱暴者を演じていただいた内田さん。十六号との寸劇が毎回バージョンアップするのは観ていて面白かったです。ああいう「ちょっとバカで優しい日常」のような雰囲気を出すのは自分は苦手なので、舞台の休息ポイントとして良かった。千秋楽、最期のシーンの叫びが今でも耳に残っています。

..リリィ 黒木さん
普段のカワイイ系キャラと、重力攻撃を繰り出すバトルシーンが対称的なリリィ。小さい黒木さんがまるで本当に強くなったかのような殺陣は観てて楽しかったです。ちなみに、追加したシーンで強いヨルハが来た時に「じゃあ、私達はこの世界に要らないの?」というセリフがあるのですが、レジスタンスを象徴する悲しいそのセリフ、入れて良かったな、と思いました。

..ガーベラ 野村さん
レジスタンスのメカ担当の野村さん。その演技に惹きつけられるように、本公演中にセリフを追加してしまいました。ごめんなさい。キャラクター達の関係性が成長するにつれ「こういう時にガーベラならこう言う気がする」という風に思ってしまったので。まあ、そういうところも、野村さんの惹き付ける演技力が悪いという事で……(人のせいにした)

..マーガレット 清水さん
マーガレットはリリィほど年下でも、ダリアほど頼れる訳でもない「普通」な子。また、エレベーターのシーン等で意図的に間を取る必要がある箇所があったりと、見た目以上に難易度の高い役割だったのですが、清水さんのしっかりした演技で支えていただいた感があります。特徴ありすぎる周囲のキャラクターとの対比として、その「普通」さが活きてたと思います。

..デイジー マリアさん
デイジーが最後に登場するシーンを観た時、書いた自分ですら「酷い!酷すぎる!」と思うレベルの仕上がり。他のアンドロイドと一線を画すフォルムで圧倒的な存在感を出していただいたマリアさん。序盤から中盤にかけてのユルい母性がキチンと効果を出していた気がします。リリィを抱えながらの慟哭と、最後のバトルの無表情さが、彼女を印象づけました。

..タームα・β 鈴木さん・荒井さん
不気味な赤い少女「タームα」「タームβ」。二人の演技の方向性が微妙に異なるあたりが面白かったです。しいて説明するなら「無邪気」の鈴木さんと「不気味」の荒井さん。実は初演時は二人とも「赤い少女」という同一の名前にしようと思っていました。その時、制作さんに「役名が同じなのは可哀想なので別な名前を付けて欲しい」と言われ、ターミナルα・βの名前を冠したのですが、今思うとその違いが良かったですね。二人の差異が、ゲーム中に分裂する赤い少女達の運命を示していたような気がします。

..音楽メンバー
おなじみのヴォーカルのエミさん、河野さん、ギターの後藤さんに加え、ピアノ川治さんにバイオリンの島田さん。
「音楽劇」なんていう特殊なフォーマットの中で、通常のコンサートではありえないような無理難題があったと思うんですが、皆さん素晴らしい演奏をしてくださいました。終演後に関係者の方が「コンサートと舞台を同時に見られるなんて安い……」と言ってた事が全てを表している気がします。

..人類会議 安元さん
そして、諸悪の根源「人類会議」の安元さん。今回は声の出演です。安元さんには公私に渡りずいぶんニーアをサポートしていただき大感謝です。あそこで男性の声が入る事で、舞台全体にリズムが生まれた気がします。あきやまさんと対を為す形で、ゲーム中のポッドお二人が少年と音楽劇に出て下さったことも、とてもうれしく思いました。
※その他、司令部の最後のボイスはあきやまさんにお願いしています。

..アンサンブルの皆様
少年ヨルハの男性アンサンブルがアクロバティックな演技を行った時「音楽劇は女性で筋力が無いから、アンサンブルは比較されてしまうのでは……」と思っていたのですが、全くの杞憂でした。鋭いモーションとバトル、そして布などを大きく使った優美演技は、少年ヨルハとは違うベクトルで舞台を彩って下さいました。こちらも上演中に一人お休みとなってしまいましたが、欠けた分を全く感じさせない素晴らしい内容に。


.まとめ。

これまで何回か舞台の原作に関わらせて頂いたんですが、今回の2舞台は既にゲームとして発売されているオートマタを原作としている為、設定のブレ修正や演出の方向性を確認する為に、オーディションから参加し、普段よりも多めに現場にいました。

実は「少年ヨルハ」を最後のゴールと考えていたんだけれど、イロイロな事情があって「音楽劇ヨルハ」が追加で開催される事になって。ただ、今となっては開催して良かったと思える、そんな日々。
最初に考えたヨルハの物語「音楽劇ヨルハ」と、最後に絞り出した「少年ヨルハ」がほぼ同時に上演出来た、奇跡のような日々。制作して下さった方、演じて下さった役者の皆様、そして、観劇して下さった皆様、ありがとうございました。

オートマタ発売後から、舞台が終わる1年間で、ヨルハ部隊に関する計画はやりきった感があるので一旦終了。またどこかで黒い服の人達に会える日を楽しみにしつつ、次の仕事に邁進したい気持ちです(←全然邁進出来てない)。

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