「歴史を見直そう」という保守の動き
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ところが、1991年にソ連が崩壊し、社会主義には展望がないことが明白になった。そこで浮上したのが、革新からリベラルへの転換だ。かつては、リベラルなんて言葉はなかった。
その結果、社会党が崩壊して、民主党が誕生した。社会党が革新で、民主党がリベラル。日本におけるリベラルは、かつての革新とは違い、現状維持を旨とする。変革反対なのだ。
だから、憲法改正に反対。経済についても、大きな政府を志向する。できるだけ、競争がない社会が良いと考える。競争があると、勝者が少なくて、敗者が多くなるからだ。敗者のために、社会保障を考える。これがリベラルの考え方だ。
実をいうと、経済的には、自民党もリベラルと言える。リベラルで大きな政府だから、1100兆円も借金ができる。そんなに借金があるのに、民主党を始めとする野党も同様にリベラルなので、財政を立て直せという声がまったく起きない。
民主党内閣の最後の野田首相は例外的に、財政再建のため、消費税を10%にまで引き上げると言った。その後、自民党政権に代わり、安倍首相が5%から8%に引き上げ、さらに2%増税すると言ったら、野党はみな反対した。これでは、国の借金を減らすことは難しい。
安倍政権になってからの選挙で、僕は野党の代表に「アベノミクスを批判するだけではなく、対案はないのか」と尋ねたが、納得できる回答はなかった。結局、野党は現状維持でよく、財政再建なんて考えていないのだ。
リベラルが現状維持にこだわる一方で、保守が変わり始めている。ここへきて、保守が「伝統を重んじる」「明治150年」と盛んに言っている。本屋に行ってみても、日本の歴史について書いた本が増えた。これらは、歴史を見直そうという保守の動きを反映したものといえる。
ルーズベルトが第二次大戦を起こした?
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そんな状況のなか、昨年の夏、「誰が第二次世界大戦を起こしたのか〜フーバー大統領『裏切られた自由』を読み解く」という本が出版された。著者の渡辺惣樹氏は、米国の31代大統領、ハーバート・フーバーの回顧録「裏切られた自由」の翻訳者だ。
昨秋に出版されたフーバー回顧録は、上下巻あわせて約1300ページで、本の価格も計2万円近い。そんな大著の解説を翻訳家が行っているわけだ。
回顧録の中で、フーバーは、第二次大戦を引き起こしたのはルーズベルト(32代大統領)だったと指摘している。悲惨な世界大戦に至る過程は、フーバーによれば、次のようなものとなる。
1939年、ヒトラーのドイツはポーランドに侵攻し、ヨーロッパをわがものにしようと、どんどん戦争を起こしていった。フランスが陥落し、危機を感じたイギリスのチャーチルは、アメリカのルーズベルトに助けを求めた。
ところが、アメリカは第一次大戦以後、ヨーロッパに干渉しない孤立主義をとっていた。ウィルソン大統領が国際連盟を作ったのに、肝心のアメリカは加盟しなかった。
ルーズベルトは、なんとかしてドイツをヨーロッパ侵攻を止めないと危険だと考えていたが、アメリカ人の大半はヨーロッパへの介入に反対という意見だった。このままではヨーロッパはドイツのものになってしまう。
そんな焦りが高まった1940年、日独伊三国同盟ができた。ルーズベルト大統領は「これだ!」と思った。日本をけしかけてアメリカと戦争させれば、同盟国であるドイツも参戦するというわけだ。
ルーズベルトはいかにすれば日本がアメリカに戦争するかを徹底的に考え、日本に対して圧力をかけまくった。日米通商航海条約を破棄して、対日経済封鎖を進め、石油や鉄の禁輸措置を展開した。日本をいじめまくるアメリカの戦略。とうとう日本は我慢しきれなくなって、ハワイの真珠湾攻撃へと向かった。
真珠湾でも、アメリカが大きな被害を受けないと、本格的な戦争にはならない。だから、ルーズベルトは、日本が真珠湾を攻撃することを知っていたが、真珠湾の司令官に一切言わなかった。日本が真珠湾を攻撃すると、ドイツもアメリカに宣戦を布告した。
このような経緯から、第二次大戦を仕掛けたのはルーズベルトだと、フーバーは主張している。これは、従来の日本の常識、すなわち、日本は侵略戦争を行い、アメリカは正しい戦争を遂行したという歴史観をひっくり返すものだ。
このようなフーバーの歴史観は、日本の保守にうけるだろう。保守はなんとか東京裁判を批判したいが、アメリカに嫌がられるので、怖くてできなかった。しかし、この本はアメリカの大統領の回顧録をまとめたものだ。保守は、歴史見直しの大きな力になると期待しているのではないか。