安心、安全と豊かさを増やす方法 あ

テレビを見ながら宋メールのテーマで悩んでいると大学生の長女が電話をかけてきました。大学の近くで行われた地元の馬術競技の大会に出た時の思い出を教えてくれました。

「大学にずっといると教授や生徒としか付き合わないけど、馬術競技大会に出ると地元住民や遠くから来た参加者たちと知り合える。食事会に誘われたり、ものを安く買える情報を教えてもらったりしてテリトリーが広がった。」

「乗馬をやっててよかったね。」と私が言うと、彼女がすかさず言いました。「乗馬でも何でもいいけど、所属が違う異なるコミュニティとの繋がりを持つとテリトリーが増えて自分が強くなる。」

私がまとめる前に娘にまとめられてしまったのがうれしかったです。それは私がどうしても娘を米国に送りたい理由でもありました。別に米国とは限りません。中学校まで日本に居た彼女にまず米国と中国の社会を早く経験してほしかったのです。今年秋から彼女は米国の大学の交換留学生として上海の大学にいく予定です。

子供たちが全員留学に行ったおかげで今年の春節は妻とゆっくり北京で過ごせました。一番気に入ったのは中国の「春節晩会」でした。これは日本の紅白と違って一種のお祝いパーティの中継です。大晦日は中央テレビが全国に数か所会場を設け、歌、雑技、踊り、漫才、花火など、さまざまな方法で楽しさを盛り上げます。

8億人も視聴するといわれるこの中央テレビの番組は半年前から準備するのですが、それが終わってから各省の地方テレビがまた地元に密着するお祝い番組を組みます。娘の電話を受ける時に見ていたのはまさに各地の番組でした。

よく見ると各地の番組にも、中央テレビの番組に出ていた芸能人達がバラバラと番組に出ていました。中央テレビの人気アナウンサーも高い報酬をもらえるからこぞってあちらこちらの番組に出ていたのです。

副業可能かどうか未だに議論している日本のサラリーマン社会を思い出してしまいました。政府支配の中央テレビの職員でも副業して当然です。呼ばれる以上、報酬次第です。別に生活に困っているからではなく、稼ぐ自由は当然の権利だからです。会社としても調整可能であればどうぞお好きなようにと寛容です。

日本の改革がなかなか進まない深い理由は日本人のテリトリーの狭さにあると思います。特にここ20年間においてこの傾向がむしろ強くなってきました。三日前、スタンフォードを卒業した友人から聞きましたが、ここ20年間スタンフォードを学部生として卒業した日本からの留学生はゼロです。このことにショックを受けましたが、日本のサラリーマンの組織依存体質を考えると当然の結果でもあります。

20年前の1998年から比較した場合、日本のGDPも個人収入も今とそれほど変わりません。しかし、米国は2倍になってインドが6倍になって中国は13倍になりました。

たぶん、日本以外の国がもっと頑張ったからではないと思います。活動するテリトリーを増やしたからだと思うのです。今風に言えば異なる国、異なる文化、異なる分野で活躍する人が増え、グローバル化が進んだ結果だと思います。

「世界の真ん中で輝く日本」、「一億総活躍」など、政治家の思い込みでいくら叫んでも社会を動かすのはあくまでも一人一人の本音と欲望です。他の人は他の人に任せていいですからまず自分と自分の子供たちが将来、活躍するテリトリーを増やすことが一番大事です。

それが安全と安心につながり、豊かさにつながるのです。
この記事へのコメント
宋さん
お早うございます。
興味深く拝読しました。
今回も「中国社会」の光に焦点を当てていらっしゃるのですね。
私の姪が二人、米国のLAに住んでいますが、パートナーは、日本人と米国人です。子供たちの大学の学費は、大きな悩みです。カリフォルニアで、スタンフォード大学への進学を夢見るのは、とてつもない金額が支払える方(日本でいえば、私立大学の医学部なみ)だけです。普通の市民の家庭や、高校生は州立大学でさえ、金策に悩みます。中国は人口が多いし貧富の格差が大きいのでありうるのでしょうが…。日本でも、もちろん所得階層でいえば、上位1分位の所得は、米国や中国、インド並みに伸びていると思いますよ。そして中国社会の「影」に住んでいる人たちは、世界の多様性や豊かさを体験する方法があるのでしょうか?その意味では、シンガポールの方がもっと成功していると思います。
宋家の方々の成功は祝福しますが、わが国の経済循環がうまくいっていないのは事実ですし、影の部分がますます大きくなっているのは残念なことですが、中国の人口13億の方々のうち、宋さんがおっしゃる機会に恵まれているのは何%ぐらいでしょうか?米国もまた同様です。
Posted by 沼田一博 at 2018年02月23日 08:54
今回のご指摘は当たっていると思いますが、宋さんもそろそろネタ切れですね(笑)。だからというわけではありませんが、前回メールで指摘し忘れたことを書かせていただきます。
前回のチベット編には、誠実な漢民族の夫婦が、うっかり者のチベット族の客の財布を預かってあげた話が含まれていました。以前には、ウイグル紀行でバカなウイグル族の警官に困らせられたところを漢民族の警官に救われた話をされたこともあります。
www.soubunshu.com/article/381949957.html
(ほとんどの人はいちいち「〇〇民族」と記述されていたことに気づいていなかったようですが)
どちらも単純な紀行文を装っていますがわざわざ〇〇民族などと付け加える必要はありますか?印象操作に見えるのは私だけでしょうか?あるいは、これが宋さんの「テリトリー戦術」でしょうか。
Posted by H.Mari at 2018年02月23日 09:14
宋さん、おはようございます。いつものヘソ曲りです。

今朝は手短に一言。

GDPは国力の指標と言われていますから、習近平中国共産党政府は地方の捏造データの存在を知りながら、この数値を公表していますね。

たしかに、GDPの数値ではもはや中国は超大国であることは紛れもない事実です。

しかし、国民一人あたりのGDPにおいては、日本も下降であることはたしかですが、2016年の日本の国民一人当たりGDPは3万8968ドルだったのに対して、中国のそれは4倍に増えたとはいえ8124ドルだったじゃないですか。

宋さんは日本の『テリトリーの狭さ』を揶揄されておられますが、中国の一握りの富裕層のための”共産党”独裁政策であることの結果が、はっきりとこの数字に表れていますよね。

これこそ、まさしく今の中国の『テリトリーの狭さ』ではないでしょうか。
Posted by 田中 晃 at 2018年02月23日 09:25
仰られる通りで、日本が30年停滞している
のは事実です。しかし、これだけ上に立つ
人の選び方がなっちゃいない(失礼!、笑)
国が、寧ろ、堕ちてないのはものすごく
努力した証でもあると思いますね。

停滞している間に経済は諸外国にさまざまな
面で遅れを取り始めていますが、ぐずぐず
余計な時間を使わされて困ることと楽しみな
ことが大きく2つあって、

困ること、時間とおカネの無駄遣いで貧困に
堕ちかねません。自らがいくら節制していても
上の構造が錯綜していて判断しきれない状態
を被るのはやりきれません。

楽しみなこと、精神を荒れさせなければ、
次の世代はすくすく育って来ます。

両方見合わせれば、塞翁が馬、プラスマイナス
ゼロとしか言いようがなく、子の世代で
宋さんと改めて相まみえる機会があればと
強く願います(^^)。


Posted by sparerib at 2018年02月23日 10:04
他国との比較はともかく、日本の社会では、テリトリーを拡げた人を、異質、または邪魔者扱いして、排除する力が働きます。
留学して帰国すると、残留組がコミュニティに入れない、自分と違う経歴の人の言うことは聞かない、など。
他を知らないことを自覚しているが故の、保身、自分の弱さをさらけ出すことが出来ない自信のなさ、が心理的背景だと思っています。
私のメッセージは、揺るがぬ実力をつけて、自信を持つこと、方法は何でもよいと思います。テリトリーを増やすのは、有力な一つの方法・選択肢の提示だと思います。
Posted by Sam Roppongi at 2018年02月23日 10:26
広大な国土や資源資本軍事力のある国にとってメリットの大きいグローバリズム

狭くて資源すら輸入頼み災害が多くて組織依存体質でしか国体を保てない小国が同じ土俵ではやって行けないのではないか?

日本の現状を見ているとGDPを増やすために多くの人が豊かさを犠牲にして少数の資本家が美味しい仕組みを継続した結果の少子化のように映る

一人一人の本音と欲望は大切なものだけど風土気候地政学的条件を無視すると痛い目に合う経験をしてきたはず

過剰貿易が食糧問題などを端に大きくバランスを失い崩れてゆく世界を想像してしまうのは拙者だけでござろうか

テリトリー云々の前に脆弱な日本の足元を強化するのが先決その点中国を見習うべきところ多し
Posted by 主水 at 2018年02月23日 10:51
宋さん

たいへんご無沙汰しております。
「安心、安全と豊かさを増やす方法」を拝見して、日本の問題点がよくわかりました。
日本の企業では就業規則として、副業禁止とは記載していないですが、副業している人がいるかというと、ほとんど皆無です。
それは、会社営業日はフル就業が当然となった雇用契約に原因があるのかもしれません。
例えば、ある社員の業務は、3日分のボリュームしかないとしても、5日勤務です。当社では、直接作業時間と間接作業時間でその比率管理していますが、当然、作業効率は下がるわけです。
つまり、日本の生産性が悪いのは、ここにあるのかも知れないですね。
その社員が専門的であれば、同様業務を他社でも就業できれば、それぞれの企業の人件費は削減でき、生産性はあがります。
これから、小学校でプログラミング授業が始まりますが、これも本当は専門職の人を採用すればよいのに、従来の学校の先生にやらせようとしています。これは、担当する先生も不幸だし、授業を受ける生徒も不幸です。
国会では、「働き方改革」で「裁量労働制の就業時間」で盛り上がっていますが、こんな不毛な議論をする暇があったら、上記のような働き方を推進するような施策を議論した方がよいですね。
Posted by 西崎 亨 at 2018年02月23日 12:39
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