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  • インタビュー

ハゲタカにカメラを奪われたらスマホでどう乗り切るの? プロカメラマンに聞いた

宇内 一童

ライター:宇内 一童

コンテンツメーカー・ノオトのライター、編集者。気さくな人柄。

 
ライターの宇内です。

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みなさんは仕事の「必須アイテム」ってありますか?

ライターは取材に行く際、ボイスレコーダーが必須なのですが、持参するのをうっかり忘れてしまうことも。

でも、ボイスレコーダーを忘れても、スマホの「録音アプリ」があるので、なんとかなっちゃいます。

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このように、「何かを忘れてスマホで代用する」ことって、他の業種でもあるんじゃないでしょうか。例えばカメラマン。一眼レフカメラを使っているカメラマンが多いと思いますが、万が一忘れてしまった場合、スマホのカメラで一眼レフと同等の写真が撮れるのでしょうか……?

プロカメラマンの栃久保 誠(とちくぼ・まこと)さんに聞いてみましょう。

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栃久保 誠
1982年生まれ。某アパレルメーカー店長を経て退職後、1年8カ月で38カ国を巡り、帰国後フリーランスの写真家として活動開始。現在はウェディングや家族写真の出張撮影、観光パンフレットや広告、企業案件など、さまざまなジャンルで撮影を行う。ホームページ→http://tochikubomakoto.com/

カメラを忘れたことありますか?

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そもそも、カメラマンがカメラを忘れることってあるんですか?

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カメラマンがカメラを忘れたら“コト”ですよね。僕はないです。

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さすがにそうですよね。でも、撮影直前にカメラが壊れる可能性はあるじゃないですか?

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ゼロではないですね。

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ハゲタカにカメラを奪われる可能性だってあるわけじゃないですか?

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ハゲタカに奪われる可能性は、限りなくゼロに近いと思いますけど、世の中、何が起こるかわからないですしね……。

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そうです! そこで今回は、次のような状況設定で話を進めたいと思います。

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このピンチをどう乗り越えるか、実際にスマホで写真を撮ってもらいながら教えてほしいです。

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なるほど……。ロック歌手のジャケット撮影ってことですけど、歌手はどこにいるんですか?

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いないので、僕がやります。

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よろしく。

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売れてなさそう。


標準のカメラアプリでいいの?

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iPhoneには、標準でカメラアプリが入ってますよね。今日はそれで撮りますか?

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iPhoneの標準のカメラアプリだと、詳細な設定ができないんですよね。なので、今回はカメラアプリの「Lightroom mobile(ライトルーム・モバイル)」をインストールして、使ってみましょう。

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なんで、そのアプリを選んだんですか?

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ISO感度【※1】やシャッタースピード【※2】の調整ができるのと、RAW画像【※3】にも対応しているからです。あと、普段パソコン版の「Lightroom」で写真の編集をしているので、スマホで撮って同期すれば、パソコンで作業できるので便利だなと。

※1……デジタルカメラの「光をとらえる能力」を表す値。ISO感度を上げると明るくなるが、画質が落ちる

※2……シャッターが開いている時間のこと。1秒、1/250秒のように表す。シャッタースピードを遅くすると、そのぶん光が入るため明るくなるが、ブレやすくなる

※3……JPEG画像を生成する元となる「生」データ。画質の劣化を最低限に抑えながら写真の調整が可能。露出やコントラスト、ホワイトバランスなどを自分の思い通りに設定できる


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なるほど。標準のカメラアプリだと、それができないってことですね。

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はい。カメラで最も大切な要素は「光」なんです。F値【※4】やISO、シャッタースピードを操作して、光の量を適切にコントロールすることが、よい写真を撮るための第一歩です。

※4……撮像素子(レンズから入ってきた光を電気信号に変換する電子部品)上に写る像の明るさのこと。F1.4、F5.6、F32のように表される。F値を小さくするとレンズを通る光が多くなり、明るく写せる

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僕が使っているiPhone 7だと、F値が「1.8」で固定されているので、ISOとシャッタースピードを調整して、ベストな光の量を探しながら撮影したいと思います。

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ROCK。

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……えっ?


スマホで撮ってみよう【順光編】

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じゃあ、まずは普通に順光【※5】で撮ってみましょう。

※5……カメラの背後から被写体に向かって光が差していること

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よろしく。

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順光ならあまり設定をいじらなくても、スマホで問題なく撮れると思います。アルバムジャケットの撮影ってことなので、最終的に正方形になることを考慮しながら、撮っていきますね。

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じゃあ、まずはこのポーズで。

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だんだん目が慣れて、カッコよく見えてきました。

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シャッタースピード:1/1500秒(AUTO) ISO:20(AUTO) ホワイトバランス:AUTO 露光量:0.0

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おおぉ! キレイに撮れてる……!!

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光の向きの指定が特にないなら、順光で撮るのがよさそうですね。設定は一切いじらず、すべてオートで撮りました。

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へぇ〜! オートって優秀なんですね。

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ちなみに、こういうイメージで撮ってほしいとか、何か希望ありますか?

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特にないね。俺はどう撮られても、カッコよくなっちゃうから。

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……ROCK。

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こちらが、栃久保さんにパソコン版の「Lightroom」で補正してもらった最終形の写真。

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そしてこちらが、一眼レフで撮った写真の補正版。

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比較すると、こんな感じ。よく見ると、一眼レフで撮ったほうが背景がぼけて、人物にピントが合っている。しかしパッと見は、ほとんど変わらないのでは……?

【順光編 まとめ】
順光はうまく撮りやすい撮影条件。設定はすべてオートでもいい。


スマホで撮ってみよう【逆光編】

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次は逆光で撮りましょう。

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逆光だとうまく撮れないイメージがあります。

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レンズにもよりますが、一眼レフだと、逆光を活かして雰囲気のある写真が撮れます。僕は逆光で撮ることが多いですね。

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よろしく。

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シャッタースピード:1/540秒(AUTO) ISO:20(AUTO) ホワイトバランス:AUTO 露光量:1.3

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……うーん、iPhoneは逆光に弱いですね。露光量【※6】を上げて明るさを調整してみたんですが、若干人物が暗くなってしまいました。ただ、露光量を上げすぎると、背景が白っぽくなってしまうので、ひとまずこんな感じでよしとしましょう。

※6……シャッターを押すことにより、感光材料(撮像素子など)に光が当たる量のこと。露光量が大きいほど明るくなる

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確かに、順光と比べて、人物の暗さが目立ちますね。

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あと、iPhoneだとフレア【※7】やゴースト【※8】が入りまくるので難しいです。なかなか思い通りに撮れない。

※7……極めて明るい光源がレンズに向けられている時などに生じる、暗部への光の漏れ

※8……光源以外の、比較的はっきりとした光が画面内にうつり込んでしまう現象


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こちらが補正版。

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そして、こちらが一眼レフの補正版。

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iPhoneは人物のコントラストが低く淡くなっているが、一眼レフのほうは逆光独特のふわっとした光に包まれつつも、人物がしっかりと残っている。

ほかにも数パターン、逆光で写真を撮ってもらった。

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このロック歌手がどんな曲を奏でるのかで、どちらのジャケットを選ぶのかが変わってきそう。左はフォークソングやオルタナティブでもいけそうだが、右はなんだかポジティブでストレートな歌を歌いそう。

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一眼レフのほうが、被写体がくっきり写っているが、iPhoneのほうも味があっていい。みなさんはどっちが好きですか?

【逆行編 まとめ】
iPhoneは逆光に弱いため、被写体が暗くなってしまいがち。被写体をしっかり撮りたい場合は、逆光は避けよう。


スマホで撮ってみよう【遠め編】

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距離が離れていても、ちゃんと撮れますかね?

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撮ってみましょう。

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シャッタースピード:1/1500秒(AUTO) ISO:20(AUTO) ホワイトバランス:AUTO 露光量:0.0

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けっこう距離があったのでズームで撮ったのですが、スマホの場合、ズームにすればするほど画像が粗くなってしまうので、どこまでズームを使うか悩みました。

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補正版。

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そして、こちらが一眼レフの補正版。

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目を凝らして見てみると、やはり一眼レフのほうがシャープ。しかし、その差は微々たるものではないか。人物を小さくすればするほど、iPhoneと一眼レフの差は出にくいのかも。

【遠め編 まとめ】
被写体が遠いほうが、一眼レフとの差は目立たなくなる。ズームすればするほど画像が粗く、仕上がりの写真が小さくなってしまうので注意。


スマホで撮ってみよう【動きがある編】

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全速力で走ってるところとか、スマホでうまく撮れますかね?

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シャッタースピードの調整をすれば、おそらくいけると思います。

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じゃあ、走ります。

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速いほうがモテると思ったので、1.5倍速のGIFアニメにした。

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はぁ……はぁ……どうでしょう?

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シャッタースピード:1/1000秒 ISO:200 ホワイトバランス:AUTO 露光量:0.0

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お〜! 激しく動いていたのに、ハッキリ撮れてますね!!

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狙い通りの写真が撮れました!!

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どんな設定で撮ったんですか?

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動いている被写体がブレないように、シャッタースピードを1/1000に設定しました。また、シャッタースピードを上げつつも明るめの絵にしたかったので、ISOを200にして、人物が暗くならないようにもしています。

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へぇ〜! じゃあ、ちゃんと計算通りに撮れたってことですね。

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iPhoneはピントの合う範囲が広いので、動きがあるものを撮るときは、一眼レフよりピントが合いやすいのかも。

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補正版。

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そして、こちらが一眼レフの補正版。

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色がハッキリしているのは、一眼レフで撮った写真。しかし、iPhoneのほうが味がある。栃久保さんいわく「一眼レフは、人物にピントが合っていないけど、iPhoneはちゃんと合っている」とのこと。iPhoneの底力を見た。

【動きがある編 まとめ】
被写体がブレないように、シャッタースピードを速めに。場合によっては、一眼レフよりもiPhoneのほうがピントが合いやすくなる。


スマホで撮ってみよう【暗所編】

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これまでは明るい場所だったので、最後に暗い所で撮ってみましょうか。設定をいろいろ変えられるLightroomのありがたみが、よりわかるかもしれません。

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シャッタースピード:1/30秒(AUTO) ISO:320 ホワイトバランス:くもり 露光量:-1.3

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おぉ……! めちゃくちゃROCKっぽい!!

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「暗い場所では明るく撮ろうとする」というカメラの特性があるので、まず露光量をあえて下げて、明るくなりすぎないようにしました。ISOを上げると画像が劣化するので、低めの320に設定。最後にホワイトバランス【※9】を「くもり」にして、写真に雰囲気を加えました。

※9……太陽光や電球の光、蛍光灯の光などの、光の色の違いを調整して、白いものを白に近い色に仕上げる機能

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ホワイトバランスをいじったのは、今回がはじめてですね。

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RAWモードで撮影すれば編集する時にホワイトバランスを自由に変えられるんですけど、せっかくなのでアプリ上で変えてみました。今回、ISOを低めにしましたが、やはり場所が暗いので、拡大して見てみるとザラザラはしていますね。

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ほんとだ。ザラザラしてる。

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でもザラザラしている場合は、粗さを活かして白黒に加工すればモノクロフィルムのような質感になります。カッコよく仕上げられると思いますよ。

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補正版。

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そしてこちらが、補正版を白黒に加工したもの。たしかに「ザラザラ感」が、逆に味になっている!

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そして、こちらが一眼レフの補正版。

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iPhoneで撮った写真は、最終的にだいぶ一眼レフに近いものになった。

【暗所編 まとめ】
暗いところでは明るく撮ろうとするカメラの特性を念頭に置き、露光量は低めに。ISOが高すぎると画像が劣化するので注意。


スマホのカメラのいいところ、悪いところ

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スマホを使って本気で写真を撮る機会ってあんまりないと思いますが、撮ってみていかがでしたか?

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苦戦しました! 逆光やズームを使っての撮影など、iPhoneのカメラでは思い通りに撮れない条件がありますね。あと、一眼レフみたいに背景を大きくぼかすのも厳しかったです。

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iPhoneでどこまで背景をぼかせるか試してみてもらったところ、これが限界だった。一眼レフとの差は歴然。

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iPhone 7 Plusの標準のカメラアプリには「ポートレートモード」がついていて、背景をぼかせるんですけどね。でも一眼レフには、さすがに敵わないと思います。

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なるほど。逆に、「スマホやるじゃん!」って思ったポイントはありましたか?

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なかなか味のある写真が撮れるところですね。iPhoneのほうがやはり画像は粗くはなるんですが、その粗さも写真に必要な要素の一つと考えれば、「一昔前の写真」「雰囲気のある写真」と捉えることもできるのかな、と。

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たしかに、雰囲気のあるいい写真が撮れましたよね!

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iPhoneで撮影した、お気に入りの1枚。

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iPhoneのほうが味がある。万人受けはしないけど、一部に熱狂的なファンがいる、そんな雰囲気。自分で書いていて恥ずかしくなってしまった。

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一眼レフのように自在に操るのは難しいけど、iPhoneで撮ると予期せぬ面白さがありますね。実際、今回iPhoneで撮った写真の中には、一眼レフで撮ったものよりアルバムジャケットに合うんじゃないかと思えるものが、いくつかありました。

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なるほど。じゃあ、ハゲタカにカメラを奪われても、場合によっては、スマホで十分対応できるってことですね。

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そうですね。ただ、撮影に使える時間が少ない場合もあるので、やはり普段使い慣れているカメラで撮るのが一番ですね。今さらなんですけど、ものすごく正直な話をしてもいいですか?

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なんでしょう?

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現場には、必ず予備のカメラを持っていくようにしているので、ハゲタカにカメラを奪われたとしてもスマホは使わないですね。予備のカメラで撮るので。

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「…………」

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ROCK。

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さっきから、なんなんですかソレ。

(おわり)


(編集:ノオト


宇内 一童

ライター:宇内 一童

コンテンツメーカー・ノオトのライター、編集者。気さくな人柄。

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コメント 5

1 - 5 / 5

最後のオチに笑った(*´艸`*)デスヨネー

色々勉強になりました。
あと、二人共イケメンですね♪

>現場には、必ず予備のカメラを持っていくようにしているので、ハゲタカにカメラを奪われたとしてもスマホは使わないですね。予備のカメラで撮るので。

ヾ(・・;)ォィォィ

プロとしてハゲタカに盗まれるって言うことは最低だよね。
仕事道具を動物に取られたら駄目でしょう。

まずは、ハゲタカに盗まれるを想定するのではなく、プロなら紛失をしないようにする事を記事にしないと・・・。

まぁ、以前からiPhoneの写真は綺麗に撮れるのは知っていたので。

なんだかiPhoneの撮影もソコソコいけるみたいに説明してますけど、どの写真も雲泥の差があるように思います。
iPhoneの方はフレームに人物が入っているだけで、一眼レフの方は人物を際立たせてキチンと主役のために撮っています。
私個人の感想です。

普段から携帯カメラとコンパクトと一眼レフを使ってますが
いくら携帯カメラが良くなってきたとはいえ、一眼レフとの勝負は厳しいようですね。
でも、気軽さは携帯カメラがイチバンです。

ちなみに、宇内さんのボイスレコーダーはTASCAM DR-07ですね
私も使ってます♪

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