これまでのFPC
フレキシブル基板(FPC)はリジッド基板と比べ厚さが約10分の1で、軽量化や省スペース化の切り札として利用されている他、部品点数の削減も期待されています。
世界市場規模は2016年の1.7兆円から2022年には3.1兆円になると予測されていて、特に家電・IoT・自動車関連が成長を支えるとみられています(参照:Printed Circuit Design & Fab Online Magazine - Global FPCB Market to Reach $27B by 2022)。
このように一見広く用いられているように見えるFPCですが、実は開発・調達のコストが高いという問題から用途が非常に限られていました。
FPCの調達にかかる典型的な費用は次のようになります。
- 型費用:10〜50万円
- 製造費用:リジッド基板の3〜5倍
その結果としてスマートフォンや自動車など大量生産品でしか使われず、近年多い多品種少量生産の流れに対応できていませんでした。
そこに登場したのが、全く新しい製法によってFPCを製造するP-Flex™️です。
新製法のFPC: P-Flex™
ピュアアディティブ法:印刷による新しい基板製造
P-Flex™は印刷技術によって製造されるFPCです。印刷による基板製造は研究レベルでは提案されていましたが、実用化したのはエレファンテックが初めてでした。
ピュアアディティブ™️法と名付けられたこの新製法の特徴は、エッチングによって不要な銅箔を除去するサブトラクティブ法とは全く異なり、最初から純粋に必要な箇所にのみ銅箔を形成するという点です。
P-Flex™のメリット
ピュアアディティブ法によって作られるP-Flex™は、銅箔形成の方法の違いからコストの削減や納期の短縮を実現しました。特に大きなメリットを3つ挙げると次のようになります。
型代ゼロ
これまで新しく基板を作る度に10万円~50万円の「型」費用がかかっていたところ、インクジェットにより型レスを実現。少量生産ではコストを半分から5分の1に削減することができました。
納期短縮
工程が短く、型の製造も不要であることから、納期は標準3日と既存品の半分以下になりました。
省材料化
「必要なところにだけ印刷する」ため、材料が少なく廃棄物も既存プロセスの5分の1以下になりました。
P-Flex™が変えた調達の常識
ここで従来のFPCの問題を思い出してみると、型費用や製造費用が高いことで主に大量生産品にしか使われていないという点でした。「FPCは高い」「FPCを使うのはコストを回収できる大量生産品だけ」という事実は、基板業界のほとんど「常識」のようなものでした。
一方でピュアアディティブ法によるP-Flexは、従来のFPCのコストの問題を解決し、多品種少量生産やオンデマンド生産はこれまでより遥かに容易になりました。実際にP-Flex™を利用されている方の中には少量で生産されている方が多くいます。
製造業の世界では一般的に「枯れた」技術、つまり古くて十分に普及した技術が好まれると言われています。長い間利用されることで、問題も出尽くしていて技術の信頼性が高いことや、技術もロジスティクスも最適化されて価格がギリギリまで切り下げられているためでしょう。
ピュアアディティブ法によるP-Flexは全く枯れた技術では無いのですが、それでも既に従来のFPCと比べて数量によっては安価になっていることを考えると、今後技術が「枯れて」くればP-Flex™の安さはますます明らかになっていくのではないでしょうか。
お客様の声
お客様にもP-Flex™により試作や少量生産などこれまでのFPCでは難しいとされていた分野で利用しているとの声をいただきました。また、量産まで一貫してP-Flexをご利用いただいているお客様もいます。
ウェアラブルデバイスメーカー
P-Flex™の採用により、FPCを使ったウェアラブルデバイスの試作リードタイムを2分の1に、コストを5分の1に抑えることに成功しました。
自動車メーカー
P-Flex™の採用により、FPCを用いた原理試作を始め、数万円といったコストでこれまでできなかったコンセプト機能を実装し、社内に展開することができました。
機械メーカー
P-Flex™を試作・量産で採用することで、10回にも渡る試作でFPCに比べ数百万円のコストダウンを実現し、実機でもP-Flexにより原価を半分以下に削減しました。
まとめ
軽量化や省スペース化を実現できるFPCは潜在的に広い用途を持ちながらも、高い調達コストの問題から実際に使われる用途は大量生産品に限られてきました。
エレファンテックの作るP-Flex™は、原理的に材料を無駄にしないため安価に製造することができます。「FPCを使うのはコストを回収できる大量生産品だけ」という常識はもはや過去のものであり、安価なP-Flexを使って試作を繰り返しそのまま量産に進むケースはこれから増えていくのではないでしょうか。
多品種少量生産は世界の製造業のトレンドでもあり、今後P-Flex™の活躍する場はますます増えていくと思われます。
(野村 浩気)
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