一九九七年に公開された米映画『ウワサの真相』は、政治風刺コメディーだ。原題は『ワグ・ザ・ドッグ』。「しっぽが犬を振る」という英語の言い回しを使ったタイトルだ▼再選を目指す米大統領に、性的スキャンダルが発覚する。投票日は目前。どう世間の耳目をそらすか。ロバート・デ・ニーロ氏が演じる情報操作のプロが考え出したのは、ありもしない戦争の危機をでっち上げること…▼「犬がしっぽを振る」のではなく「しっぽが犬を…」というのは、本末転倒。政治家の保身のために始めた策謀が、国家の危機を招いていく。『ワグ・ザ・ドッグ』というタイトル自体が痛烈な風刺になっているのだ▼これも、「しっぽが犬を振る」たぐいの話ではなかろうか。自民党が「一票の平等」をないがしろにするような改憲の案を出している。参院選では「一票不平等」を解消するために県をまたぐ「合区」が導入されたが、これをやめて、たとえ不平等が生じたとしても「違憲」とならないように、憲法を変えようというのだ▼「法の下の平等」は民主主義国家の大きな柱の一つ。一票の平等を実現するための選挙制度を根本から論じずに、とりあえず改憲してしまえというのは、ちょっと住み心地が悪いからと、借家人が大黒柱を切ってしまうようなものではないか▼じっくり見続ける必要がある「カイケンの真相」だ。