先日ホイールの振れ取りをした中古ロードバイク。
ホイールがブレーキシューに部分的に接触してしまうので振れ取りをしたのだが、次に調整を行うのは当然ブレーキである。
当ロードバイクは安い入門用で、使われているブレーキのグレードは低い。高級車ではシマノの105と呼ばれるシリーズ以上の物が付いているが、当然そんな良いパーツは付いていない。
カタログに記載がないのでノーブランドだと思っていたが、前年モデルの兄弟車に記載があって、EVG R462 ALLOY SILという部品である。ネット検索でプロマックス R462というブレーキのOEMバージョンと判明した。
プロマックスという名はそれまで知らなかったのだが、GIANTなどでコストダウンのために採用されて効かないという悪評があるテクトロ同様、入門車に多く採用されているブランドらしい。やはりテクトロ並みに効かないという評判である。
テクトロやプロマックスでは命が危ない、さっさと105に交換するべきだ
などと散々な評価である。
というわけで、自分も当初はヤフオクで105かアルテグラの安い中古をゲットして、早いうちに交換しようと考えていたのだが、調べていくうちにそう簡単な物でもないことが判明した。
というのは現在装着されているブレーキレバーと互換性がないのである。ST-2300というレバーがついているのだが、何やらブレーキワイヤーの引っ張る量が世代によって違うらしく最新だった*1105ブレーキBR-5800や一世代前のBR-5700では互換性がないというのだ。ST-2300と対応するのは二世代前のBR-5600以前になるという。
BR-5600でもテクトロやプロマックスより遥かにマシなのは間違いないが、レバーのST-2300も傷んでいるし操作方式が古いのでクラリスST-2400という新型に変更したい。その為、せっかく交換しても短期間で無駄になってしまう。
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ST-2400にレバーを交換すれば、評判の良いBR-5800が使えるが、このレバーなかなか値段が高い。新品で1万円以上するし、中古もあまり出回っていないようだ。
そのため、すぐに交換とはいかないのである*2。
先立つもの次第だが、安くても古い中古品を買ってしまうと、こういう事が起こりがちだ。
そんな事情なので、とりあえずは効かないといわれるプロマックスと付き合っていかなくてはいけない。
しかしながら、ネットで散々の評価のテクトロやプロマックスであるが、50代のオッサンである自分の目には、見た目はなかなか立派なブレーキの用に見える。自分らが学生時代の30年40年前のスポーツ自転車のブレーキなんて、もっとペラペラひょろひょろのアームだった。有名なロードマンのブレーキも酷かった。
追憶のカタログ展Part75:1981ブリヂストンロードマン
かといって、昔のロードがスピード出ないなんてことはなく、下りで目いっぱい漕げば60km/h位は出てしまう。
効かないというテクトロやプロマックスのアームの太さを見ていると、時代が違うとはいえ遥かにマシに見えるのである。
だから、105のBR-5800やアルテグラのBR-6800は構造がそれまでのブレーキと変わっっていて画期的に良く効くらしいし、シマノのティアグラなど他のロード用も他の無名メーカーに比べれば効くというが、あくまで比較しての話で、乗り手の使い方次第ではないか?とも思うのである。
さて、テクトロあるいはプロマックスは効かないというが、どのあたりがシマノに劣っているのだろうか?
- 一つはブレーキシューのゴムが効かない。
- 二つはブレーキ本体の剛性感がない。
この二つに大別されるようだ。
ブレーキシューはメーカーが違ってもある程度の互換性があり、既にシマノ・アルテグラのシューを入手しているので、今のブレーキの感触をある程度確かめた後に交換してみたい。
問題はブレーキ本体の剛性感である。テクトロやプロマックスでよく訊くのが「ふにゃる」という表現である。
ブレーキレバーを思いっきり引いても、ガツンと力が伝わっている気がしない。どこかで力が抜けているような気がする。そういう感触の事である。
さっき、昔のブレーキに比べればアームが太くて立派とかいったが、どうもテクトロやプロマックスは、同じような太さに見えるシマノに比べて材質が悪いのか、それとも軸の精度が悪いのか、両方なのか分からないが、剛性感がないとの話である。
また昔話をするが、ブリヂストンにバイタルブレーキというのがかつてあった。それはリムに縦溝が無数に掘ってあって、シューの摩擦を増やす工夫である。ところが、それでフルブレーキをしてもブレーキ本体のアームが「ブブブブブ・・・」と前後に激しく振動するばかりで結局効かないという事があった。アーム自体の強度が十分でなく力を受け止められないからである。
結局、シューだけをアルテグラにしても同様の結果に終わる可能性があるわけだ。
根本解決には剛性の高いブレーキ本体に替えるしかないのだが、ふにゃるブレーキでも何とかしたいという苦肉の策がある。
前置きがすっかり長くなったが、それがトーイン調整なのである。
トーとはつま先である。それをインする、内股にするという意味である。
ブレーキシューは、上から見るとホイールのリムに対して平行に位置するが、わざと前方を狭く後方を広めに向けて調整するのである。
平行が┃┃なら
トーインはハという具合だ
どうしてこのような調整をするのかというと、ブレーキを掛けるとブレーキシューは前方に向かって回転しようとするリムに引かれて前にずれようとする。平行調整だと、位置のずれに合わせてシューは逆ハの字に前方が開いてしまう。そうなるとシューの接地面は後方の一部だけになってしまい効きが悪くなってしまう。
そこで、あらかじめシューの前方が開いてしまわないように、ハの字の調整にするのである。ブレーキを掛けると狭かった前方のシューは開いてきて、結果平行になってリムに当たり制動力が強まるのである。
このような現象が起こるのはシューを支えるブレーキのアームに十分な剛性がないからで、もともとしっかりした剛性のあるシマノの高級ブレーキではあまり意味がない。
そういうブレーキを使っている人はトーイン調整はしない、あるいはブレーキが鳴くのでやってみたという人が多い。
だが、剛性のないテクトロやプロマックスでは事情が違う。ふにゃる剛性のないブレーキだから、アームの変形でシューが引っ張られて開いてしまうのだ。だからこそ、トーイン調整は大いに意味がある。
それで実際にトーイン調整をやってみようと、ブレーキシューを先ず外してみたのだが……
これは酷いw
室内でサドルにまたがってブラケットポジションでブレーキレバーを握り、足で床を押しても前方に動いてしまうので、効かないブレーキだなと思っていたが、これでは確かに効かないはずである。
交換が望ましいかもしれないが、とりあえずヤスリで修正する。
アルミの破片が刺さっていた穴が残っているが、これを消すまでヤスると溝が全部なくなってしまいそうなので、この辺で妥協。様子をみてダメならアルテグラのシューに交換である。
トーイン調整は、まずシューを正規の位置に戻してネジを軽く締め、シューの後方4分の1くらいの位置に適当な厚みの板を挟んでブレーキレバーを握って固定してから、一旦シューの固定ネジを緩め再びしっかり締め込む事で行う。
シューの固定ネジのワッシャーがおわん型の特殊な形状で、アームに対して角度が変わるように出来ているのである。
トーイン調整に使う板の厚みだが、シマノのサービスマニュアルでは0.5㎜と書かれている。しかし、これはシマノではないので、やや大きめの0.7㎜とした。
物は1㎜の厚さとして売られていたゴム板だが、ノギスで測ると0.7mmであった。ゴムなので潰れて薄くなったのかもしれないが、これをゲージとして使用した。
まだ試走はしていないが、この作業を前後とも行って、先に室内でサドルに座って足で押したら動いてしまった車輪が、結果がっちり動かなくなった。
確かに理想をいえば、105以上のブレーキに替えるべきなのだろうが、低グレードのブレーキでも出来ることは、やっておいた方が良いというものである。
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