仮想通貨全体が弱含んでいる中ですが、ICO案件によってはまだまだリターンが期待出来るようです。
ここではリターンは一旦忘れて、ブロックチェーン技術が使えそうな医療系に絞ってICO案件を整理しようと思います。
目次
医療系ICO(ETHベース)の類型
ICObenchで紹介されている、全部で53の医療系ICO案件(イーサリアムベース)を、独自に類型化しました。
類型は下記の通りです。
- 情報管理・共有
- 流通・支払い
- 治療・診断技術(機器)開発
- 報奨スキーム
- 遠隔・オンライン医療
- その他食品製造
スマートコントラクトの特性を生かした流通・支払い関係の案件や情報管理・共有系の案件が割合としては多い(53%)ですが、クラウドファンディングのように資金調達の手段としてICOを行うケースも目立ちます。
医療系ICO一覧
全53案件の一覧です(2018/2/22時点)。
各ICO案件の概要はICObenchに記載されているものだけでなく、各ウェブサイトや、それでもわからない場合にはホワイトペーパーもざっと確認していますが、
ここではざっくり概要がわかる程度の記載にとどめております。従って正確な記載にはなっていない可能性がある点にご留意ください。
なお、開始と終了の日時がころころ変わるICOもあるため、ICOの「状況」については、各ICOのウェブサイト等を参照ください。
案件名 |
類型 |
概要 |
状況 |
開始日 |
終了日 |
Ambrosus |
流通・支払い |
食品・医薬品の安全性・品質・製造流通プロセスをモニタリングする機器・仕組みの開発 |
2017/9/22 |
2017/10/22 |
|
Dentacoin |
報奨スキーム |
歯科医療にかかる情報交換による報奨スキームの開発 |
2017/10/1 |
2017/11/1 |
|
GoMineWorld |
報奨スキーム |
運動することで仮想通貨を獲得できる機器・仕組みの開発 |
2017/10/7 |
2017/11/1 |
|
Robomed Network |
流通・支払い |
医療費の支払いプラットフォームの開発(治療の実施によってスマートコントラクトが更新される) |
2017/10/25 |
2017/12/15 |
|
ScriptDrop |
情報管理・共有 |
患者の治療情報のセキュアな共有 |
2017/11/1 |
2017/11/14 |
|
AMCHART |
情報管理・共有 |
ブロックチェーン上で医療情報を管理 |
2017/11/15 |
2018/3/15 |
|
Synthium Health |
流通・支払い |
医療機器製造業者と医療機関の直接取引(流通)を実現するプラットフォームの開発 |
2017/11/27 |
2018/1/16 |
|
WaBi |
流通・支払い |
偽造品を流通時に予防するための商品認証技術の開発 |
2017/11/28 |
2017/12/1 |
|
Health Monitor |
治療・診断技術(機器)開発 |
肺がん、胃潰瘍、糖尿病を非侵襲的に診断する機器の開発 |
2017/11/28 |
2017/11/28 |
|
MEDIS |
情報管理・共有 |
医療情報の保管・共有システムの開発 |
2017/12/1 |
2018/1/1 |
|
BioFactoryCoin |
その他食品製造 |
仮想通貨払いが可能なミルク製造 |
2017/12/7 |
2018/2/21 |
|
CareX |
流通・支払い |
治療・診断・医薬品購入の支払いプラットフォームの開発 |
2017/12/11 |
2018/3/11 |
|
WHA Project |
流通・支払い |
医療保険や医療費の支払いプラットフォームの開発 |
2017/12/11 |
不明 |
|
Spacoin |
報奨スキーム |
美容業界・スパのコミュニティ開発(改ざん不可能なレビューサイト等の開発) |
2017/12/12 |
2017/12/25 |
|
BactoAlarm |
流通・支払い |
食品・医薬品の安全性・品質・製造流通プロセスをモニタリングする機器・仕組みの開発 |
2017/12/14 |
2017/12/23 |
|
ARNA Panacea |
治療・診断技術(機器)開発 |
乳がん等の早期発見に向けた診断機器の開発 |
2017/12/15 |
2018/2/10 |
|
GivaCoin |
報奨スキーム |
ドナーへの報奨スキームの構築 |
2017/12/26 |
2018/2/24 |
|
MDCN |
流通・支払い |
医療費の支払いプラットフォームの開発 |
2018/1/1 |
2018/3/1 |
|
SRCOIN |
情報管理・共有 |
医療情報の保管・共有システムの開発 |
2018/1/1 |
2018/2/28 |
|
Canabio |
治療・診断技術(機器)開発 |
がん患者向けの総合的な治療の開発・提供 |
2018/1/1 |
2018/12/15 |
|
ELCoin |
流通・支払い |
医療機器の購入プラットフォームの開発. |
2018/1/8 |
2018/2/5 |
|
ATFS Project |
その他食品製造 |
機械学習を活用した野菜生産、及び流通プラットフォームの開発 |
2018/1/10 |
2018/2/9 |
|
MedCredits |
流通・支払い |
医師と患者を結びつけるプラットフォームの開発、及び医薬品のフリーマーケット(購買)システムの構築 |
2018/1/14 |
2018/3/1 |
|
Velper |
遠隔・オンライン医療 |
オンライン診断(問診)アプリの開発 |
2018/1/15 |
2018/3/15 |
|
Luven Diagnostic |
治療・診断技術(機器)開発 |
がんの早期発見に向けた診断技術の開発 |
2018/1/15 |
2018/2/28 |
|
Vinnd.io |
治療・診断技術(機器)開発 |
健康状態を評価する血液検査技術の開発 |
2018/1/18 |
2018/2/18 |
|
Docademic |
遠隔・オンライン医療 |
AIを活用したオンライン診断(問診)アプリの開発 |
2018/1/29 |
2018/2/28 |
|
NAM |
遠隔・オンライン医療 |
日本において、AIを活用した問診アプリや予防支援アプリの開発 |
2018/1/29 |
2018/3/31 |
|
Bioritmai |
治療・診断技術(機器)開発 |
バイオリズムのモニタリング、及びバイオリズムに基づく診断機器の開発 |
2018/1/30 |
2018/2/13 |
|
Medical Chain |
情報管理・共有 |
医療情報をセキュアかつ迅速に共有・使用できるプラットフォームの開発 |
2018/2/1 |
2018/2/1 |
|
Zenome |
情報管理・共有 |
遺伝情報を資産とみなし、遺伝情報の管理、遺伝情報へのアクセス権の売却などを行う仕組みの開発 |
2018/2/1 |
不明 |
|
Hearthy |
情報管理・共有 |
医療情報の保管・共有システムの開発 |
2018/2/5 |
2018/2/25 |
|
Doc Coin |
遠隔・オンライン医療 |
遠隔医療のプラットフォームの開発 |
2018/2/9 |
2018/3/11 |
|
Neurogress |
治療・診断技術(機器)開発 |
神経制御(人間の神経の反応によって直接制御する)装置の開発 |
2018/2/10 |
2018/3/25 |
|
SmartHealthcare |
情報管理・共有 |
医療情報の保管・共有システムの開発 |
2018/2/12 |
2018/3/13 |
|
Lympo |
報奨スキーム |
運動・健康情報によって報奨を得られるプラットフォームの開発 |
2018/2/17 |
2018/3/25 |
|
Red Lanterns |
報奨スキーム |
性に関する疑問に専門家が回答するコミュニティやユーザー同士の(性的な)交流を支援するプラットフォームの開発 |
2018/2/14 |
2018/2/28 |
|
FarmaTrust |
流通・支払い |
偽薬を防ぎ、本物の薬を取引できるプラットフォームの開発 |
2018/2/15 |
2018/3/31 |
|
Agrivita |
その他食品製造 |
ロシアにおける農業生産 |
2018/2/16 |
2018/3/16 |
|
Dermavir |
治療・診断技術(機器)開発 |
HIV用ワクチンの開発(現在フェーズII) |
2018/2/20 |
2018/3/20 |
|
BEAT |
報奨スキーム |
スポーツ活動によって仮想通貨を獲得できるプラットフォームの開発 |
2018/2/20 |
2018/3/15 |
|
Solve.Care |
情報管理・共有 |
医療における管理・運営業務を削減するプラットフォームの開発 |
2018/2/21 |
2018/3/20 |
|
Clinicoin |
報奨スキーム |
運動・健康情報の登録によって仮想通貨を得られるプラットフォームの開発 |
2018/2/21 |
2018/3/20 |
|
Simply Vital Health |
情報管理・共有 |
医療情報の保管・共有システムの開発 |
2018/2/22 |
2018/3/20 |
|
TE-FOOD |
流通・支払い |
食品の流通プロセスをモニタリングする仕組みの開発 |
2018/2/22 |
2018/3/22 |
|
Healthureum |
流通・支払い |
医療費の支払いプラットフォームの開発(医師による他医師の紹介に対する報奨制度も実装) |
2018/2/26 |
2018/4/1 |
|
MediChain |
情報管理・共有 |
医療情報の保管・共有システムの開発 |
2018/3/1 |
2018/4/30 |
|
DIW Token |
情報管理・共有 |
ID書類、銀行ローン情報、遺書、医療情報などの重要な個人情報の管理 |
2018/3/6 |
2018/3/20 |
|
Love Coins |
情報管理・共有 |
恋愛にまつわる誓い(“永遠の誓い”やデートの約束など)をブロックチェーンに保管する |
2018/3/10 |
2018/4/10 |
|
eHealth First |
情報管理・共有 |
医療情報を管理・活用し、健康管理に関する情報を提供するプラットフォームの開発 |
2018/3/18 |
2018/4/18 |
|
TrustedHealth |
遠隔・オンライン医療 |
遠隔医療の(特に専門医からの診断を可能とする)プラットフォームの開発 |
2018/3/7 |
2018/5/1 |
|
ECOS |
流通・支払い |
食品の品質調査・管理するソフトウェアの開発 |
2018/4/2 |
2018/5/2 |
|
WELL |
遠隔・オンライン医療 |
遠隔医療の(特に専門医からの診断を可能とする)プラットフォームの開発 |
2018/3/18 |
2018/4/18 |
医療系ICOの今後の展望
ICOへの規制が強化される傾向にあったり、どんどんクローズドのプレセールが増えてきてはいますが、今後もICOは継続されていきそうです(個人が出資できるかは不明、というより個人が出資できる頃には法人がかなり安く仕込んでいる可能性も・・・)。
ここでは案件の類型ごとにICOの展望を検討してみます。
情報管理・共有系案件の展望
本類型は、ブロックチェーンによるセキュアな情報管理が可能ということで、医療系に限らず様々な案件(もしくは仮想通貨)が出てきています。
医療系に関しては、秘匿性の高い個人の医療情報をセキュアに管理することへのニーズが高いです。
また、現時点では各医療機関で個別に情報を(電子カルテなどで)管理しており、医療機関を変えるたびに検査が必要になるなど、
Patient Centric(患者中心の医療)とは言いがたい状況であるため、医療情報の統合ニーズは高いものと考えられます。
しかしながら、データの共通化を目指す本類型が複数あっては当初の目的を達成できないことから、将来的には統合されていく(もしくは淘汰されていく)ものと思われます。
流通・支払い系案件の展望
すでに類似の案件が複数あることから、今後急激に案件数が増えることはなさそうです。
また、この類型の案件は、サプライヤーや卸、医療機関、患者など多くのステークホルダーとの調整が求められ、
各ステークホルダーに受け入れられず頓挫する案件も多いのではないかと推察されます。
そのため、形を変えて類似の案件が今後も一定数出現するのではないでしょうか。
治療・診断技術(機器)開発系案件の展望
診断機器の開発については、用途が細分化されてきており、類似の案件が出現する可能性は低そうです(少なくとも同様の用途の診断機器を狙うことはない)。
ICOが世界的に禁止されない限りは、今後も資金調達の一手段として活用され続けるでしょう。
すべての案件に共通することではありますが、規制産業である医療業界において案件(もしくはその仮想通貨)が生き残るためには、規制当局や影響力のあるステークホルダー(日本では医局や各学会、保険者など)との連携が必須です。
報奨スキーム系案件の展望
レビューを書くとポイントがもらえる、といったサービスを展開するウェブサイトはこれまでもたくさんありました。
今後もさまざまな報奨スキームの案件が現れるものと思われます。
ポイントではなく通貨として機能するためには、他の仮想通貨と同様に取引所に上場させるという以外にも、商品購入に使える、など実需にあうものである必要があるでしょう。
これまで何度となく紹介しているDentaCoinは、DentaCoinの支払いを受け入れる歯科クリニックが増えてきており、溜まったDentaCoinで医療機器が購入できます。
患者はレビューを書くと仮想通貨がもらえ、取引所で売買したり歯科医療費にあてたりできます。
このように、本類型で成功するためには、(少なくとも)独自の経済圏を構築する必要があり、市場が大きくなるにはそれなりの時間がかかるものと考えられます。
遠隔・オンライン医療系案件の展望
遠隔地においては、日本であっても専門医の治療が受けられないなどの医療格差が存在しています。
たとえば、遠隔地でレントゲンを撮影し、そのデータを都心の専門医に診断してもらう、といったことが、本類型でセキュアに実現できる可能性があります。
一方で、すでにこうした取り組みは行われており、インドのスタートアップ企業healthenablrが資金調達を行うなど、活況です。
本類型に関しては、どの医師・病院と提携するのかによって複数の案件が共存する可能性もありますが、どの案件であっても支払い方法の整備は重要な課題であるため、仮想通貨の果たす役割は大きいかもしれません。
その他食品製造系案件の展望
本類型は資金調達の手段としてICOを選択したと見受けられる。
物流面まで進出すれば、商品のトラッキングや支払いの簡素化ができる可能性がありますが、流通・支払い系プロジェクトがすでに複数ある中で、自社製品の販売にのみ使える通貨を発行する意義は小さいです。
株券と同様に(ただし株券よりも保有者のトラッキングは遥かに容易)、保有者には配当(PoSなど)を支払うことにするなどが通貨発行の意義になりそうです。
最後に
案件をすべて見ていくと、いかにもうまくいかなさそうな案件や、面白そうな案件があり、医療系→意義深い→投資しよう!となるのはかなり危険だと思われます。
本文にも書きましたが、医療系はたくさんのステークホルダーを巻き込み、規制と折り合いをつけなければならず、
案件が大成するには時間がかかりますし、そもそも失敗する可能性も高いです。
どのテーマであっても同じですが、投資する前にはよくよく案件を精査するのが重要ですね。
ICOに参加するために(円からビットコインやイーサリアムを調達)
円を仮想通貨に変えるためには日系取引所を使う必要があります。
なお、取引所の比較については下記をご参照ください。