『カイゼン・ジャーニー』、読み終わりました。
導入部分の主人公と、自分の経験と重なる部分があり、そういう話をしたいなぁと思い、記事を書きます。
本書構成
本書の主人公はSIerに勤めていますが、いきなり「ここは僕がいるべきところではない。」と言い始めます。
ひどい開発現場に嫌気がさし、辞めてしまおう、というところから、出会いを通じて、やれることをやろうと決意する、という話です。
本書の冒頭は上記の通りで、内容は主人公の仕事を見ていく物語が、主な内容です。
物語の中に、主人公が学んだプラクティスが登場し、それを解説しつつ物語が進んでいくという構成になっています。
SIer勤めに限らず、会社に不満があって、「ここにいても仕方がない」というような気持ちになった方はいると思います。
あるある!と思う方は、ぜひ本書を手に取りましょう。
キーワードは越境です。
読み進める
物語に関しては、私は二回ほど目頭が熱くなるのを感じました。
何度も絶望的な状況になりつつも、人の助けを得たり、学んだことを活用しながら切り抜けていく姿は、「自分もこういう仕事がしたい」と強く感じるものでした。
ネタばれは避けたいので、ここではあくまで技術書として見ます。
これは!と思うプラクティスや言葉が出てくるたび付箋を貼っていったのですが、こんな感じになりました。
色は適当です。
全部で15箇所ほどです。
第1部を挙げると、
- ふりかえりとプラクティスの関係(P17)
- ふりかえりをチームでやる理由(P28)
- 緊急・重要のマトリクス(P34)
- 行動を変え、新たな一歩を踏み出すことについて(P51)
に付箋を貼りました。
自分と重なる部分
前職はパッケージの開発会社に新卒で入りました。
業務を始めて見えたのは、ソフトは売れていたけれど、
という感じです。
とにかく開発部門は疲弊しきっており、改善を訴えても効果なし、新しい勉強をしても役に立てる機会がない、新しい試みを行う時間を全く与えられない、という状況でした。
特に、若手は退職が多い、というように感じていました。
自分もそうなのですが、勉強して、ベストプラクティスや世間を知れば知るほど、現実のダメさ加減に絶望してしまうからだろうと思います。
単に仕事がつらいのもあるんですけど。
上が作った設計は絶対で、開発側からの指摘は受け入れない、という態度も取られました。
また、勉強会を開催したいから、業務後に会社に残れるようにしてほしい*4と、上司に願い出ても却下されました。
リファクタリングすべきだ、仕事終わったら帰って良い制度にすべき*5だ、などと事あるごとに主張するもののすべて受け入れられず、空気も変えられず、出世してもマネジメントしか道が無く、技術的にも得るものが無くなったので、私は転職しました。
重ね合わせて考える
主人公は、会社を辞めるのを思いとどまり、まず自分にできることをしよう、と決意しています。
自分はどうだったのか。前職で何をやったのか、考えてみます。
リファクタリングすべきだ、という空気を作るべきで、書籍の読み合わせを大々的にやってみたかった、という思いはあります。
机の上に『新装版 リファクタリング(これ)』を置いていた*6ら、先輩や後輩から
「すごく良さそうな本が机の上にあったから、自分で買っちゃった」
という話をされました。
今になって考えると、これは、どう変わっていったら分からないけど、自分たちだって現状を変えたいんだという思いの表れだよな、と思います。
これは、私の退職が決まった後の出来事で、せめてその一年前に起こっていれば、私が取った道は違ったかも、という気もします。
今の仕事、SIerなのですが、強く思ったのは言うだけでは人は動かないということです。
一人で業務改善を始めて、周りが徐々に参加してくるのも、そこにメリットがある(現状のデメリットを改善できる)からで、それを自身で示す行為が、非常に大事なのだと思います。
本書で言う「カイゼン」も、原理はこの通りで、一人で始めて、「良さそうじゃん」と思う他人が現れる。その手段が、強力なアジャイル手法である、と思います。
前職に話を戻すと、上記のようなことがあったとはいえ、やはり辞めて正解だったと思っています。
あのまま働いていたら、どこかで諦めに入っていたでしょうし、退職を決意して二年は会社にいましたが、二年後もやはり転職すべきという結論は変わりませんでした。
感想
アジャイルの手法は、『アジャイルサムライ』等を読めば、知ることができます。
本書は、それに命を吹き込んだもの、と思っています。
さっき実体験等を書いた通りで、一人から始める理由がようやく納得できた、という側面もあります。
私は、筆者の一人がお話しされた、
www.slideshare.net
のイベントに参加しており、一人から始める理由は分かっていたつもりだったのですが、本書を読んでようやく腑に落ちた、という感じです。
活動
本書を読む前から、カンバンによる個人タスク管理は行っていました。*7
そのおかげか、周りからは
- タスクの切り方がうまい
- 抜け漏れが少ない
- タスクの消化速度がものすごく早い
というような評価をいただいています。
徐々に、カンバンを使った個人管理の事例を広げていきたい、とは思っています。
また、一人朝会とふりかえりを徐々に始めています。
そもそも、カンバンを使おうとすると、タスク整理する必要は出てきます。
おかげで時々整理はするのですが、課題の洗い出しが甘いようでした。
こういう活動も、徐々に進めていくという感じで良いように思っています。
おわりに
本当に、良い本だなぁ、と思います。
かなり売れているようで、手に取った方は多そうですが、まだ読んでいない方はぜひ読んでほしいです。
いい意味で技術書っぽくないので、技術者ではない、仕事のやり方に疑問を持つ人にも読んでみてほしいなぁ、と思う一冊でした。
*1:仕事を終わらせても残業指示が出る。繁忙期はさらに上乗せ
*2:ソフトの利用特性上、ある日に利用できないと意味がないため、仕方ない部分はある
*3:組織も会長社長の顔色ばかり見ている。過去功績があったというだけの理由で監査役に就任し、設計には口を出す。各チームに目を移すと、リーダーが理解できないものは使わない、という風習があるぐらい、トップダウン
*4:勤怠システムと入退館システムの関係上、勤務終了申請後に会社に残っていると、サービス残業の疑いで怒られる
*5:仕事を早く終わらせるモチベーションに繋がる、という考え
*6:わざとではなく、グループ勉強会の参考書籍として持ってきて、置いたままにしていた
*7:『SOFT SKILLS』の影響で、KanbanFlowを使っている