市場が変われば、本社の所在地も変わるべき
統括・ハブ機能研究所所長 Tree Islands Singapore Pte. Ltd. 代表取締役社長 木島 洋嗣

統括・ハブ機能研究所所長

木島 洋嗣Hirotsugu Kijima

Tree Islands Singapore Pte. Ltd. 代表取締役社長

2015.04.26

静養先のシンガポールが仕事場に

シンガポールにツリーアイランズという会社を設立したのは2009年のことです。

私は大学卒業後、アメリカのシンクタンクに勤務し、その後リクルートに転職しました。そして2004年に独立してコンサルティング会社を設立し、主に日本国内で人事コンサルティングや地域活性化の仕事に携わっていました。

シンガポールに拠点を移したのは、ちょうどアジアが伸びつつある時期だったので、日本国内で仕事をしているよりも実際に自分もアジアに出てやったほうがいいだろうと判断したからです。

というのは表向きの理由で、実をいえば、体調がすぐれない時期が続いていた2008年頃、シンガポールで仕事をしながら、半分は静養も兼ねて、しばらく滞在する機会があったのです。プールに入ってのんびりしたり、美味しいものを食べているうちに、体調はみるみると回復。気候もいいし、ほかの東南アジアの国と違って英語も通じるからコミュニケーションにも苦労しない。「ああ、こういうところで暮らせたらいいなぁ」と思い、引っ越しました。シンガポールが東南アジアの中でも人・モノ・カネが集まる拠点となっているということは、こちらに来てから知ったことです。

シンガポールでは当然ゼロから顧客を開拓しなくてはなりません。一生懸命電話かけをしました。ちょうど2009年頃はリーマンショックの影響で、日系企業の社長クラスは時間を持て余し気味で、アポイントも取りやすかったのです。景気はどん底でしたから直接仕事には結びつきませんでしたが、現地での人間関係を構築するのには絶好の時期でした。

すると今度は2010年から景気が一気に反転して、この年のシンガポールの実質GDP成長率は前年比プラス10%以上を記録します。日系企業の社長たちも急に忙しくなって、それで私にも声がかかるようになったのです。ASEAN各国の物流オペレーションをシンガポールに集約することで物流コストを下げる方策や、シンガポール国内で営業所を増やす際の地域別の人員配置計画など、多様なコンサルティング業務を手がけました。

今でこそシンガポールにもたくさんのコンサルティング会社が日本から進出していますが、当時は私のような存在は、希少価値があったようです。

アジアでは面での展開を考える

現地でコンサルティングを続けるうちに、シンガポールに進出している日系企業が共通して抱えている課題が見えてくるようになりました。

シンガポールにある企業は、540万人しかいないシンガポールの国内市場だけを相手にビジネスをしているわけではありません。ASEAN、アジア、世界全体の市場を見据えた営業・マーケティング機能や、物流・調達・金融機能を持った企業がたくさんあり、世界から人・モノ・カネを集められるシンガポールのハブ機能を活用しています。このハブ機能の活用こそが、シンガポールにある企業の生命線ともいえるのです。

しかし、シンガポールのハブ機能の活用法について、各社に具体的なノウハウが確立されているわけではなく、またそんなノウハウを持つコンサルタントもいないことから、現地法人の社長は試行錯誤されているのが実情でした。

そこで私は、このテーマを徹底的にリサーチし、ノウハウを蓄積し、2011年に「統括・ハブ機能研究所」という組織を立ち上げることにしたのです。当研究所は、それぞれの国の市場規模、インフラの状況、人・モノ・カネの調達のしやすさ、税制、政情等のリスク要因などを見ながら、ある事業を行うときに、どの国や地域に統括拠点を置き、どこの国や地域で事業を展開すると、もっとも高いパフォーマンスで利益をあげることができるかについて、アドバイスをすることを目的とした組織です。

具体的には、年会費による会員制を採用し、会員限定で定期的にメールマガジンを発行するほか、毎月シンガポール・東京・大阪で開催されるセミナーには、会員企業の社員は何人でも、何回でも参加可能となります。また、対面による個人面談も実施し、地理的にお会いするのが難しい方については、スカイプでの面談にも対応しています。お陰様で会員企業は現在500社に達しました。

シンガポールならシンガポール、インドネシアならインドネシアの現地進出をサポートしているコンサルティング会社は多数存在します。しかし統括・ハブ機能研究所は、アジア・世界のどこに、どんな(本社)機能をおいて展開すれば、複数国での事業展開が容易になるかを提案するという意味においてはオンリーワンでナンバーワンではないかと自負しております。

例えば、ある企業が「インドネシア・マレーシア・タイにおいてBtoC事業を行う」と経営判断すれば、3ヵ国にそれぞれマーケティング・物流・金融機能を置くのか、それとも、これらの機能のうちの一部を各国に置くのか、どこまでをシンガポールに集約させるのかといったことをアドバイスします。最小のコストで最大の成果が上がるシンガポールの活用の仕方をアドバイスしているのです。

木島 洋嗣

Profile

1975年東京都生まれ。
2009年よりシンガポール在住。統括・ハブ機能研究所では500社以上の会員企業に、シンガポールをアジアのハブ拠点として活用しASEANや世界に出ていくための経営情報を提供している。毎月東京・大阪・シンガポールでセミナーを開催。また日本の大都市をシンガポールのような人・モノ・カネを惹きつける国際ハブ都市にしていく活動も行っている。

このほか、港湾開発、交通インフラ輸出、オリーブオイルの輸出、ショッピングモール開発などにも取り組んでおり、シンガポールを拠点に、日本・香港・カンボジア・ドバイなどで事業展開している。

Contact

統括・ハブ機能研究所所長

2 Marina Boulevard #38-02  e Sail @ Marina Bay Singapore 018987
EMAIL : treeislands@singnet.com.sg
URL : http://www.region-hub.com/

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