俺だって俺なりに

零細メーカーの経営企画。趣味は少額の株式投資。ファンダメンタルズ重視のバリュー投資をゼロから勉強中。仕事は経営の雑用。能力普通でそれなりに真面目。落ち込みやすく悩みがち。ガラスのハートのくせに実力以上に頑張って疲れたり。それでも俺だって俺なりに踏ん張ってます

アニメーションの業界分析をしてみた。分かってきた業界構造と成長するための課題とチャンス

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結婚するまでは漫画も読んでいたし、アニも攻殻機動隊などのシリーズを見ていた。理由は特にないが今ではアニメも漫画もすっかり見なくなった。

一方で、子供の番組を一緒に見ることが増えた。受動的にアニメーションに触れる機会が増えている。アンパンマンひつじのショーンドラえもん、トーマス、ソフィア、そしてプリキュア

株式投資の世界では「自分が良く知っているものに投資しなさい」といわれるが、知っている領域も広げなくてはと思う。

アニメーション業界ってどうなっているんだろう。ドラゴンボール、ワンピース、プリキュアを作っている東映アニメーション(4816)や、一時期はまった攻殻機動隊を有するIGポート(3791)などどういった立ち位置なのだろう。これから未来はあるのだろうか。

そう思って
アニメーション業界の構造を一度調べてみることにした。

アニメーション産業の市場規模は2兆円、製作会社はそのうち2000億円程度

アニメーションの産業は放送局や広告代理店など複雑に入り組んでおり算出が難しいが、2016年に2兆円に達したということ情報があった(一般社団法人日本動画協会の調査)。

2014年は1兆6,299億円、2015年は1兆8,215億円と年間2000億円程度成長を続けており、昨年は2兆円となったようだ。

成長率でみると11%程度の成長である。主に海外の売上が伸びているようで、コンテンツ産業を売り出す日本のアニメーションを応援したい気持ちになる。

日本だけにスポットを当てていると確かに子どもは減っていくので市場はシュリンクするように見えるが、例えば日本のアニメーションも海外市場を狙っていけばまだまだ成長の余地があるのかもしれない。

また、一時期ブームになった大人向けのアニメーション(変な意味ではなく)もあるだろう。「アニメは子供のもの」という世代は日本には少ないだろう(海外ではまだその向きは強いが)

企業の海外展開を調べていけばその企業が成長するかが分かる業界ともいえるため、例えば東映アニメーションなど上場している会社の海外ビジネスの増加率を見て成長率を図るのも良いと思った。

2兆円と聞くと巨大な市場だ。そのうちアニメーション制作会社はどうか。

古いデータだが2012年に製作会社の売上規模は1,725 億円となり以降は徐々に拡大しているという情報があった。

どうやら2008-2009年から一旦下がり今は回復途上のようだ。テレビと配信が拡大する一方でビデオと海外向けが落ち込んでいるらしい。

テレビアニメ番組の年間放送本数は60-70本程度でほぼ横ばいだが、視聴率は低下傾向にある。2000 年代に入り、大人のアニメ需要に気づいて一時的に増加した深夜アニメ番組は落ち込んでいるようだ。

アニメーション製作会社の仕事

次に製作会社内部の仕事のフローはざっくりと以下の通りのようだ。

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書き出してみると当たり前は当たり前だが、まずプランニングの仕事があり、実際の製作過程があり、出来上がったものに音声や声優がセリフをアテレコして一つの作品に仕上げていく。

さらに分解していけばもっと細かい工程があるはずだが、ざっくりとこういうフローの中で皆さんが仕事をしている。映画などもおそらく同じ構成であるはずだ。

日本の主なアニメーション会社

次にどういったアニメーションの会社が日本にあるかを調べてみた。大きく分けると3種類のアニメーション製作会社があり、1つは独立系、2つ目はおもちゃ・ゲーム系、3つ目はテレビ局や広告代理店系だ。

後述するが、著作権を製作会社が持つパターンと製作委員会が持つパターンがある。

特に著作権を持つとライセンス収入などのビジネスが可能になることから、おもちゃ・ゲーム系も製作をしている一方、放送局・広告代理店系も自社の広告コンテンツを載せてスポンサーに提供するために製作会社を保有している。


とりあえず調べた会社は以下(ヌケモレはきっとたくさんあると思いますが業界素人なのでアニメ好きな皆様、ご容赦ください・・)

独立系

スタジオジブリ(説明不要)
IGポート(攻殻機動隊テニスの王子様戦国BASARA
ぴえろ (NARUTOBLEACH)
オーエルエム(映画系、ポケモン妖怪ウォッチ、ここたま)
日本アニメーション(ペネロペ、アン、パトラッシュ)
京都アニメーション涼宮ハルヒけいおんFree!
ガイナックス
手塚プロダクション(説明不要)
ピーエーワークス

おもちゃ/ゲーム系

サンライズバンダイナムコ系) (ガンダム
トムスエンタテインメントセガサミー系) (コナン、アンマンパン、ルパン)
アニプレックスソニー系) (銀魂3月のライオン
スタジオディーン (わしも、鬼灯の冷徹

放送局、広告代理店

東映アニメーションドラゴンボール、ワンピース、プリキュア、セーラームーン、聖闘士星矢) 
シンエイ動画(朝日100%) (ドラえもんクレヨンしんちゃん
マッドハウス(日テレ100%) (一歩、ハンターハンターダイヤのA)
タツノコプロ(日テレ、タカラトミーホリプロ) (タイムボカン
エイケン(ADK系) (サザエさんクッキングパパ

海外のアニメーション会社

映画系ではディズニー、ピクサー、フォックス、ソニー、ドリームワークス等が代表格。アメリカではCGアニメーションへと移行している。プリンセスソフィアやエレナ、トーマス、何から何までCGが多い気がする。

テレビアニメ番組製作ではワーナーのCartoon Networkなど。3大アニメ専門チャンネルディズニーチャンネルカートゥーンネットワークニコロデオンの3つがメインだ。

海外は効率化の意味もあるがデジタル化が日本より進んでいるところに、日本もそれに追随して物量や資金力をバックに拡大していくのか、違う戦略を描く(やっぱ日本のアニメは違う!)という路線で行くのかは分かれ道だ。

単純に同じことをやっていては全く太刀打ちできない物量で彼らはつぶしにかかってくるはずだ。

勝てる見込みのない戦いはせず、勝てる部分で戦うという戦略をとっていくしかないと思われる。

アニメーションが出来上がるまで(2つの資金調達方法)

製作会社にばかりスポットを当てたが、アニメーション業界全体を俯瞰した場合にどういうお金のフローになっているだろうかということを調べたところ主に2つの資金集めの方法があり、アニメーションが世の中に創出されていることが分かった。

(1)広告収入方式

公告代理店がメインで作るアニメーション。スポンサー(企業)が広告代理店に広告費を支払い、広告代理店は放送局に費用を支払い、製作会社がアニメーションを作成する。

このスキームで特徴的なのは著作権はアニメーション制作会社が保有することだ。放送局は製作代金をアニメーション制作会社に支払って作ってもらいつつ、著作権は製作会社にあることからテレビでうつすために必要な放映権の料金も支払う。

制作会社が活動費も得つつ著作権保有するので強いように見えるが、実際に製作するためのお金が入ってこないと会社としての活動ができないので、広告代理店や広告代理店についているスポンサーが作りたいアニメーションを作らなければならない点で完全に自由なわけではない点はあげられる。

また、製作会社といってもワンストップでやるというよりは元締め(元受)の製作会社がいて、外注を使ったり子会社に再度仕事を発注してアニメーションを作っている(声優プロダクションやCGプロダクションは個別に存在するケースも多い)。


以下の図の上の方式がこの(1)の方式になる。次に2つ目の下段の方式について

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(2)制作委員会方式

こちらは(1)とは全くことなる。製作委員会がまず発足する。その委員会メンバーには出版社、映画会社、広告代理店、ビデオ会社、放送局、玩具メーカー、商社、アニメーション制作会社などが名前を連ねる形式だ。

この製作委員会の力は非常に強く、リスクをお互いに分散しあう一方、利益についてもお互い分け合うという構造だ。

また、上記のメンバー全てが作品によって全員が必ず参加するということはない。特徴的なのはおもちゃメーカーや製作会社も加わる場合もあるということだ。

このスキームだと、製作委員会が作品を全て決めて、実際の製作についてはアニメーション制作会社に作ってもらう。出来上がった作品は放送局に電波料を支払って放映料の収入を制作委員会が得ることになる。


(1)の広告収入方式とことなり、著作権は製作委員会がもっている点である。広告収入型だとアニメーション制作会社が著作権を持っていたので、大きな違いだ。

アニメーション制作会社としては「製作委員会型」だと基本的に著作権は抑えられないことになる(製作委員会に入っている場合は別だが)。

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アニメーション産業の課題

業界の多重下請構造が成長を阻害している要員のようだ。元受の製作会社はあるが、その下に下請け、孫請けなど会社が多すぎることで、利益が分配され新たなアニメを作りづらい環境が悪い影響を与えているようだ。

お互い生き残るためにやってきたことだろうが、全体としてみると「資金力」が分散されてしまい非常にこまごまとした活動がメインになってしまう。

しかもそんな中、低予算・大量生産を強みとしてきたことから下請けの会社の社員は薄給で深夜まで働き、非常に労動環境としては良くない状況で、子供たち(時には大人にも夢を与えてきた)。


こういった状況で90 年後半から上記(1)の広告収入方式によるテレビアニメ番組製作が資金調達の面で難しくなり、新たに(1)製作委員会方式を利用した深夜アニメ番組が一時的な市場拡大を牽引した。

この方式は書いたように全員でリスクを分さするところが肝である。一方で弊害として、アニメーション制作会社が権利を持ちにくい点でアニメを作る力がさらに弱まってしまうという状況があると推測する。著作権すら持たせてもらえないアニメ制作会社は、多重下請構造で苦しんでいるのだ。

アメリカでは巨大なメディア・コングロマリットが資金力・流通網をもっており、製作会社はお金の心配をせず製作をすることができる。

ヨーロッパやアジア諸国のアニメーション制作能力は成長をしており、日本のアニメーションの競争力を維持していくためには変革が必要だろう。


アニメーション業界はどうやったら業績が上がっていくだろうか。

1つ目はアメリカのようにしていくパターン。

例えばM&Aなどを進めてワンストップで全ての製作ができる製作会社を作っていく。発注してくる広告代理店や放送局と対等に渡り合える会社を作っていくことも可能性としてはあるだろう。

著作権は製作会社がもって、二次利用収入で拡大していくことでしか、下請構造からの脱却ははかれない。今のままでは製作委員会方式の出資企業の1 社となるか、下請けの立場で企画・製作を自ら主導することは少ない。

2つめは当然良い作品を作ること。

大ヒットとなるような新しい子供・ファミリー向けのアニメをゴールデンタイムに包装していくことは不可欠である。ロングランのアニメーションばかりではなく新しいアニメーションが欲しいところだ。

3つ目はテレビ以外のチャネルへの対応

テレビ離れへの対応。色々製作会社のホームページを見てみると既に各社対応しているようだ。

立場を逆転するチャンスはあるとしたらたしかにこの領域だ。製作会社が各社対応してきているのも理解できる。

アマゾンプライムが微々たる額で見放題のプラットフォームを作り出したり、HuluやNETFLIXなど、子供が映像に接するチャネルが複線化している。当然You Tubeだってあれだけユーチューバ―が出てくる以上はかなりの頻度で見ているだろう。

こういった構造変化。「なぜテレビは巻き戻せないの?不便でいやだ」という感覚の若い世代や子供たちに対応していかなければならないのだ。

製作会社は自ら資本力のあるメディア企業やコンテンツ関連企業との連携し、海外大手メディア企業と国際共同製作をしてもいいしもっと自由に活動を広げていくしかない。

良いものを作って、商品、コミック、食品、イベント、観光など色々なビジネスにつなげることも視野に良いコンテンツを作っていき、それを一気に広げるチャネルを作っていったら面白いのではないか。

4つ目は海外

これだけボーダーレスで世界中で日本の
アニメが見られている。ディズニーやガリバー企業とは一騎打ちはできない。

しかし伸びてはいる。東映アニメーションの決算資料などでも海外の伸びに関する記載がある。一つのコンテンツからなるべくライセンス料をとるしかないので海外のマーケットにいくべきだ。

ジブリ人気は(たとえ特定の国だけでも)どこからくるのか真剣に考えていく必要がある。

そうはいってもアニメーションは昔ほど資金を集められ合い、海外ではスピードが求められる、効率的に作れなど、なかなかモノづくりにこだわりが強い日本人には思うような作品が作れないかもしれない。

それでもニッチ戦略で日本ならではのポジションを築いていくしかないのだ。


まったく触れたことがない世界だったが、初めて調べてみるとなかなか面白い産業かと思った。

これからは日本のアニメーション業界を応援したいと素直に思えた。

製作会社のみなさん、よい作品を子供たちと楽しみにしています。

いい作品届けてください。

待ってます。

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<参考資料:みずほ産業調査レポートVol48>