安倍政権の財政推計はやはり「粉飾」に陥った

GDP統計改定と日銀頼みで改善する姿に

衆院予算委で安倍首相は経済成長で財政健全化はできるとの従来の主張を繰り返した(写真:共同)

2018年1月12日の東洋経済オンライン記事「安倍政権は財政推計の『粉飾』を始めるのか」で報じた懸念が現実ものになった――。内閣府が1月23日に公表した「中長期の経済財政に関する試算」(以下、財政試算)は、前回までの財政試算と前提条件を大きく変え、内容が変化した。今後、安倍晋三政権が財政健全化計画見直しの議論を本格化させる中で、最新試算のどこが問題なのかを整理しておこう。

最新試算の結果を簡単にまとめると、試算の「上限」が若干悪化し、「下限」が大幅に改善したと言える。上限とは、アベノミクスの成功と高い経済成長を前提とする「成長実現ケース」、下限とは、足元の潜在成長率並みの経済成長を前提とする「ベースラインケース」だ。内閣府がこの2つの経済シナリオに沿ってPB(基礎的財政収支)と公債等残高の将来予想値を発表するのは、結果がこの上下限の予想値の間のどこかに高い確率で着地するであろうことを意識しているからだ。では、そうした状況において、試算値の上限と下限の変化は何を意味するのだろうか。

日本銀行による長期金利ゼロ誘導の継続を前提に

今回の最新試算で、前提条件は大きく3つ変わった。その一つが「成長実現ケース」(前回までの呼称は「経済再生ケース」)で使われる経済成長率の前提だ。これまではGDP(国内総生産)の成長率が実質で年率2.4%、名目で同3.9%まで上昇していく想定となっていた。だが、現実の経済成長率は2016年度実績で実質1.2%、名目1%といった水準であり、政府の経済財政諮問会議でも「成長率をもっと現実的な前提に直すべきだ」との意見が相次いだ。

GDP成長率の決定要因となるTFP(全要素生産性)の伸び率を見直したことにより、最新試算における「成長実現ケース」のGDP成長率は実質2.1%、名目3.5%までの上昇へと引き下げられた。これでもまだ高すぎるという批判は多いが、現実的な想定に一歩近づいたのも事実だろう。この結果、「成長実現ケース」におけるPB(対GDP比)と国・地方の公債等残高(対GDP比)はともに若干悪化した。「成長実現ケース」においてPBの黒字化時期は、前回試算の2025年度から2027年度へと2年、後ズレとすることになった。

これには、GDP成長率の見直しに加え、安倍政権が決めた消費増税の使途変更(新たな借金の抑制に充当する予定だったものを教育無償化などへの支出に組み替え)、さらに地方税収の実績が前回試算までの推計を下回ったことも影響した。公債等残高(対GDP比)も今回の試算で低減ペースが若干鈍化している。

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  • NO NAME3b27f186b92e
    何が言いたいのかわからない? 「統計の数字をいじっているだけで、実際には日本経済は何も良くなっていない。アベノミクスは失敗していることに気付け」と言ってるんだよ。どんな未来?少子高齢化と合わせ、経済三流国へと落ちぶれて、医療費を含めた福祉関連支出が増大し、今の生活水準を維持しようと思えば増税がさけられず、一層国民をくるしめるだろう、って書いているのでは?
    up29
    down11
    2018/2/22 08:26
  • NO NAME0051e7253344
    野党からパクった教育無償化も「財源確保が困難」を理由に消えて行こうとしている。
    その一方で財源ならいくらでもあるとばかりに防衛費は拡大、軍艦を作る事が国防だとばかりに「日本人」が激減する少子化にはまったく関心を示さない。

    「庶民に金をやらないようにする政策」の果てにあるのは、そのツケを「移民=奴隷」で払う未来であり
    いずれ警察、消防、医療、自衛隊などにどこぞの右翼団体(○○会議)が毛嫌いする外国人やその2世を採用せざるを得ないのは間違いないのだが、
    バカ高い巡航ミサイルなんぞ使うよりよほどローコストかつお手軽に日本を陥落させられると何故気づかないのだろう?

    国防なんてものは国民生活をないがしろにして維持できるものではない。
    up14
    down3
    2018/2/22 10:02
  • NO NAME8f1d1b2585bb
    統計上の数字を操作したり、国債で株価を吊り上げたところで実体経済が良くなる訳も無いというのは過去にも散々指摘されてきた通り。

    求人倍率が回復したと言っても好景気になった訳では無く、単なる労働人口が減った事が要因ですからいくら「バブル期以来の求人倍率」などと騒いだところで賃金も消費増税分を除けば横ばいなのも明白。社会保障が痩せ細る今後、ワーキングプアの問題は更に深刻になるでしょう。
    up10
    down1
    2018/2/22 10:13
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