2018年02月22日07:00
みんなの、4人の、姉妹の、絆の勝利!
またひとつ今大会の秘めた願いが叶いました。平昌五輪スピードスケート女子チームパシュート、金メダル。素晴らしいオリンピックレコードでの圧倒的な勝利。日本チームの素晴らしい滑りを喜びつつ、この人にメダルを持たせてあげたいとずっと想ってきた人が金を手にできた歓びを、一際強く噛み締めていました。
今季は世界記録を連発し、全競技全種目のなかでもっとも手堅いだろうと言われた金ではあります。しかし、滑る競技に絶対なんてものはありません。日本チーム自身もソチ大会では3位決定戦で転倒し、メダルを逃したこともあります。獲れそうな金を獲るというのは決して簡単なことではないのです。むしろ獲れそうなだけに、魔物も近寄ってくるものです。
かすかな魔物の気配はありました。準々決勝、日本チームはスタート直後に足が抜けた佐藤綾乃さんが漏らした「待って」という声で、木美帆さんが立ち止まるという場面がありました。準々決勝はタイム順で勝ち抜けのチームを決めるレースです。力量差から十分に勝ち抜けには余裕がありましたが、大本番で同じことが起きたら挽回しようがないミスでした。
↓このミスもあって準々決勝は2位で通過!ライバル・オランダはオリンピックレコードで首位通過!
韓国チームなら「待って」と言っても置いてけぼりなのに!
「待って」と言われて待ち、それで怒ったりしないあたりには絆の強さを感じるぞ!
女子のチームパシュートはリンクを6周、2400メートルで争います。カギはチームの連携。キレイな隊列を組み、先頭を滑る選手を風除けにすることで後続の選手は空気抵抗を受けずにラクに滑ることができます。女子3000メートルのレースラップで言えば、2400メートルの通過タイムは3分10秒程度ですが、チームパシュートでは2分55秒前後が出ます。ひとりで滑るより15秒程度速くなるわけです。それは一周あたり2秒というとてつもない差です。
日本チームはその連携を徹底的に磨いてきました。年間300日、オランダ人コーチのヨハン・デビッド氏は妻と赤ん坊を連れて帯同するという常軌を逸した長期合宿でも、多くの時間をチームパシュートに割いてきました。直線はもちろん、コーナーでも他国に比して圧倒的に速く先頭交替を終わらせる「ひとつなぎ」の隊列は、世界のなかでも群を抜く完成度。日本の強みです。
その連携によって、木美帆という日本が持つ最強のユニットを最大限に活かすのが日本の作戦です。1500メートルで銀、3000メートルで5位という木美帆さんのチカラは、まさにチームパシュートにうってつけ。日本はスタートから長い距離を美帆さんに引っ張らせ、そして最後の追い込みでも美帆さんを再び先頭に出します。世界記録を作ったレースでは、スタートから1.75周を美帆さん、次の1周を佐藤さん、次の1.5周を菜那さん、最後の1.75周を美帆さんが滑りました。
美帆で加速し、美帆を休ませて、美帆で決める。先頭の交代は3回に留め、美帆さんが2回、それ以外の選手は1回ずつ先頭に立つ構成。8年前のバンクーバーでは、メンバーに入りながら一度もレースを滑ることはなかった木美帆さんが、今は金への最大のエンジンとなっている。8年越しに悔しさを晴らし、0.03秒差の銀となったメンバーへ歓喜の報告をできるかと思うと、胸が熱くなるような気持ちです。
しかし、先頭だけ速ければいいというものではないのが難しいところ。チームパシュートでの勝敗は、チームの最後尾の選手がゴールしたところで決まります。隊列がバラバラであれば風除けが無意味になりますし、そもそもついていけなければ意味がない。木美帆さんのペースを「日本チームのペース」と位置づけ、それにチーム全体が合わせるようにレベルアップを図ってきた。連携+個のチカラ、それが世界記録連発を可能としてきたのです。
迎えた準決勝、日本は木美帆・菊池彩花・木菜那の組み合わせ。このレースで燃えたのは2走の菊池彩花さんです。1チーム4人で編成され、3人が出場するチームパシュートは誰かひとりはレースから外れます。準決勝&決勝は一日で2レースを行ないますので、少しでも体力を温存するという意味で、誰かひとりは準決勝だけ滑って決勝は出ないという公算が高いわけです。
菊池さんはおそらく自分がその役割を担うことになるとわかっていたでしょう。菊池さんが出場したレースでも世界記録を更新したことはありますが、最新の記録を出したときは2走は佐藤綾乃さんでしたし、何よりも今大会は個人のレースで振るいませんでした。佐藤綾乃さんが3000メートルで8位入賞をはたし、自身が19位に沈んだ時点で「パシュートの決勝はないだろう」と予感したはずです。
だからこそ、燃えた。
このレースが平昌五輪で最後のレース。すべてを出して、美帆さんと菜那さん、そして控えにまわった佐藤綾乃さんを休ませるのが菊池さんの仕事。長身の菊池さんが大きな風除けとなって先頭を引っ張る時間は、後ろで菜那さんと美帆さんが休めるタイミングです。佐藤さんを入れるレースでは、佐藤さんが先頭を引っ張るのは1周ですが、菊池さんはここを1.5周引っ張ります。0.5周ぶんメンバーを休ませることができる編成なのです。余裕を持ってカナダを下した日本、最後の直線では木美帆さんがサインを出してスピードを緩める余裕もありました。休みながら勝てた。
↓決勝進出決定すなわち銀以上確定により、日本の冬季五輪史上で大会最多となる11個目のメダル確定!
長野を超えた!
さらにまだ金の可能性を持っている!
決勝へ向かう木美帆・佐藤綾乃・木菜那の3人。スタートラインに立つ三人を手を合わせて見守る菊池さん。ここにはこられなかったけれど日本チームとして戦ってきたメンバーたち、そしてスタンドの大応援団。まさにチームでの戦い。一段ずつ切り離されるロケットがそれぞれ加速をつけて弾頭を押し上げるように、みんなの後押しを受けた3人が金へとスタートします。
号砲から3秒、まだオランダは隊列すら組めていない時点で日本チームはすでに一直線。手を伸ばせば背中に触れるほどの距離感で、ひとつなぎの日本が加速していきます。最初の1周は日本がリード。しかし、オランダも強い。1500で金・3000で銀のビュスト、3000で銅のデ・ヨング、1500で銅のレーンストラ、個人のメダルを持つ3人がそのチカラを見せ、残り3周というところではオランダが逆転します。
残り2周半、オランダが0.45秒のリード。しかし、前半型の編成であるオランダは足にきはじめたか、少しバランスを崩すような場面も。一方、日本は個人では5000メートルに出場した中・長距離を広くこなせる木菜那さんが先頭に立ち、ラップを落とさずに再び差を詰めていきます。
美帆さんとの「肉親」という最強の同調性、そして追走するときの無類の速さ。個人としての菜那さんのチカラでは美帆さんのペースについていくのは難しいわけですが、こと集団戦となるとまったく話は別。小柄な身体は風除けの効果を最大限に引き出し、前後との巧みな距離感で「ひとつなぎ」の日本を演出していきます。
「木美帆」という強いパーツを「ひとつなぎ」にすることができる稀有なるジョイント、木菜那さんが日本にはいる。個人の力量の足し算ではなく、チームとしての強さを作れる選手が日本にはいる。このレースでも最後のコーナーで内側によれていく佐藤綾乃さんの腰に手を添え、軌道修正をしたのは菜那さんでした。チームとして戦う日本が、個々人がバラ突き始めたオランダを追い上げると、残り1.5周の時点で再逆転!
↓最後は再び先頭に立った木美帆さんが引っ張り、日本・歓喜の金メダル!オリンピックレコードで決めた!
獲れそうな金を見事に獲った!
圧倒的なチカラで獲った!
ゴール時に一度バラけた隊列が、今度は肩を抱き合って横一列の隊列になる。そして決勝では控えにまわった菊池彩花さんも加わって、4人がひとつなぎとなる。コーチも、解説者もみんなが感極まった勝利。実況が「この瞬間は永遠だーーー!」と名言狙いでスベったこと以外は、最高の勝利でした!
↓強かった、美しかった、素晴らしい金!
美帆さんはこれで金・銀・銅コンプリート!
日本でただひとり、「どれが一番重いかチェック」をできる人になった!
今大会、何人かメダルを獲ってほしいなぁと個人的に願っていた選手がいたのですが、そのひとりが木菜那さんでした。菜那さんのことを意識したのは、美帆さんがバンクーバー五輪に出場を決めた頃でした。スーパー中学生のことを知ろうと、お姉さんに質問をぶつけ、「木美帆のお姉さん」として扱われていた菜那さん。自分自身も選手であるがゆえに、それは屈辱的な時間だったと思います。
笑顔で妹のことを語りながらも、のちに「転べばいいのにと思っていた」と明かしたほど乱れた心。成功したスポーツ選手に多い、脚光を浴びる弟妹と、そのことによって影となる兄姉のような構図がそこにはありました。岩崎恭子さんのお姉さんであるとか、浅田真央さんのお姉さんであるとかのような。
しかし、菜那さんは美帆さんにないものを持っていた。少し淡泊で変化を求めようとしない美帆さんよりも、野心と貪欲さに満ちていました。絶対に五輪に行くという想いは、ソチ五輪のチームパシュートメンバー入りとなって叶います。この大会で美帆さんは代表入りを逃し、菜那さんが再び前に出た。「乗り越える」べき壁として、美帆さんの前に立った。まさにパシュートの先頭交替のように、もう一度「木美帆」を引っ張り上げる存在となった。
個人として美帆さんはすごい。それは間違いありません。ただ、最終的に金を持って帰らせたのは菜那さんなのかなと思うのです。人生において「姉」として長い時間先頭を滑り、大きな悔しさを味わいながらも再び前に出て引っ張り、そしてチームメンバーとして唯一無二の存在となった菜那さんあればこそなのかなと。「木美帆の姉」という厄介な重荷に負けず、ここまできてくれた最強のパートナーの。このチームで普通のMVPを決めるならやっぱり美帆さんなのだろうけれど、僕の心のMVPは菜那さんにあげたい。そんなえこひいきな気持ちなのです。
↓やったね菜那さん、これで家でもみんなハッピーだ!
妹が個人で銀・銅で、パシュートがアクシデントで転倒とかしてたら、家の空気最悪だもんね!
木家の平和が守られてよかったです!
なお、菊池彩花さんの家は、姉妹で4人がスケート選手(彩花さんは次女、妹三人がショートトラックの選手でうちふたりが平昌出場)というなか、彩花さんだけが金ということで微妙感強みです!
菜那さん!マススタートでもうひとつ個人のメダル期待しています!
またひとつ今大会の秘めた願いが叶いました。平昌五輪スピードスケート女子チームパシュート、金メダル。素晴らしいオリンピックレコードでの圧倒的な勝利。日本チームの素晴らしい滑りを喜びつつ、この人にメダルを持たせてあげたいとずっと想ってきた人が金を手にできた歓びを、一際強く噛み締めていました。
今季は世界記録を連発し、全競技全種目のなかでもっとも手堅いだろうと言われた金ではあります。しかし、滑る競技に絶対なんてものはありません。日本チーム自身もソチ大会では3位決定戦で転倒し、メダルを逃したこともあります。獲れそうな金を獲るというのは決して簡単なことではないのです。むしろ獲れそうなだけに、魔物も近寄ってくるものです。
かすかな魔物の気配はありました。準々決勝、日本チームはスタート直後に足が抜けた佐藤綾乃さんが漏らした「待って」という声で、木美帆さんが立ち止まるという場面がありました。準々決勝はタイム順で勝ち抜けのチームを決めるレースです。力量差から十分に勝ち抜けには余裕がありましたが、大本番で同じことが起きたら挽回しようがないミスでした。
↓このミスもあって準々決勝は2位で通過!ライバル・オランダはオリンピックレコードで首位通過!
韓国チームなら「待って」と言っても置いてけぼりなのに!
「待って」と言われて待ち、それで怒ったりしないあたりには絆の強さを感じるぞ!
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女子のチームパシュートはリンクを6周、2400メートルで争います。カギはチームの連携。キレイな隊列を組み、先頭を滑る選手を風除けにすることで後続の選手は空気抵抗を受けずにラクに滑ることができます。女子3000メートルのレースラップで言えば、2400メートルの通過タイムは3分10秒程度ですが、チームパシュートでは2分55秒前後が出ます。ひとりで滑るより15秒程度速くなるわけです。それは一周あたり2秒というとてつもない差です。
日本チームはその連携を徹底的に磨いてきました。年間300日、オランダ人コーチのヨハン・デビッド氏は妻と赤ん坊を連れて帯同するという常軌を逸した長期合宿でも、多くの時間をチームパシュートに割いてきました。直線はもちろん、コーナーでも他国に比して圧倒的に速く先頭交替を終わらせる「ひとつなぎ」の隊列は、世界のなかでも群を抜く完成度。日本の強みです。
その連携によって、木美帆という日本が持つ最強のユニットを最大限に活かすのが日本の作戦です。1500メートルで銀、3000メートルで5位という木美帆さんのチカラは、まさにチームパシュートにうってつけ。日本はスタートから長い距離を美帆さんに引っ張らせ、そして最後の追い込みでも美帆さんを再び先頭に出します。世界記録を作ったレースでは、スタートから1.75周を美帆さん、次の1周を佐藤さん、次の1.5周を菜那さん、最後の1.75周を美帆さんが滑りました。
美帆で加速し、美帆を休ませて、美帆で決める。先頭の交代は3回に留め、美帆さんが2回、それ以外の選手は1回ずつ先頭に立つ構成。8年前のバンクーバーでは、メンバーに入りながら一度もレースを滑ることはなかった木美帆さんが、今は金への最大のエンジンとなっている。8年越しに悔しさを晴らし、0.03秒差の銀となったメンバーへ歓喜の報告をできるかと思うと、胸が熱くなるような気持ちです。
しかし、先頭だけ速ければいいというものではないのが難しいところ。チームパシュートでの勝敗は、チームの最後尾の選手がゴールしたところで決まります。隊列がバラバラであれば風除けが無意味になりますし、そもそもついていけなければ意味がない。木美帆さんのペースを「日本チームのペース」と位置づけ、それにチーム全体が合わせるようにレベルアップを図ってきた。連携+個のチカラ、それが世界記録連発を可能としてきたのです。
迎えた準決勝、日本は木美帆・菊池彩花・木菜那の組み合わせ。このレースで燃えたのは2走の菊池彩花さんです。1チーム4人で編成され、3人が出場するチームパシュートは誰かひとりはレースから外れます。準決勝&決勝は一日で2レースを行ないますので、少しでも体力を温存するという意味で、誰かひとりは準決勝だけ滑って決勝は出ないという公算が高いわけです。
菊池さんはおそらく自分がその役割を担うことになるとわかっていたでしょう。菊池さんが出場したレースでも世界記録を更新したことはありますが、最新の記録を出したときは2走は佐藤綾乃さんでしたし、何よりも今大会は個人のレースで振るいませんでした。佐藤綾乃さんが3000メートルで8位入賞をはたし、自身が19位に沈んだ時点で「パシュートの決勝はないだろう」と予感したはずです。
だからこそ、燃えた。
このレースが平昌五輪で最後のレース。すべてを出して、美帆さんと菜那さん、そして控えにまわった佐藤綾乃さんを休ませるのが菊池さんの仕事。長身の菊池さんが大きな風除けとなって先頭を引っ張る時間は、後ろで菜那さんと美帆さんが休めるタイミングです。佐藤さんを入れるレースでは、佐藤さんが先頭を引っ張るのは1周ですが、菊池さんはここを1.5周引っ張ります。0.5周ぶんメンバーを休ませることができる編成なのです。余裕を持ってカナダを下した日本、最後の直線では木美帆さんがサインを出してスピードを緩める余裕もありました。休みながら勝てた。
↓決勝進出決定すなわち銀以上確定により、日本の冬季五輪史上で大会最多となる11個目のメダル確定!
長野を超えた!
さらにまだ金の可能性を持っている!
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決勝へ向かう木美帆・佐藤綾乃・木菜那の3人。スタートラインに立つ三人を手を合わせて見守る菊池さん。ここにはこられなかったけれど日本チームとして戦ってきたメンバーたち、そしてスタンドの大応援団。まさにチームでの戦い。一段ずつ切り離されるロケットがそれぞれ加速をつけて弾頭を押し上げるように、みんなの後押しを受けた3人が金へとスタートします。
号砲から3秒、まだオランダは隊列すら組めていない時点で日本チームはすでに一直線。手を伸ばせば背中に触れるほどの距離感で、ひとつなぎの日本が加速していきます。最初の1周は日本がリード。しかし、オランダも強い。1500で金・3000で銀のビュスト、3000で銅のデ・ヨング、1500で銅のレーンストラ、個人のメダルを持つ3人がそのチカラを見せ、残り3周というところではオランダが逆転します。
残り2周半、オランダが0.45秒のリード。しかし、前半型の編成であるオランダは足にきはじめたか、少しバランスを崩すような場面も。一方、日本は個人では5000メートルに出場した中・長距離を広くこなせる木菜那さんが先頭に立ち、ラップを落とさずに再び差を詰めていきます。
美帆さんとの「肉親」という最強の同調性、そして追走するときの無類の速さ。個人としての菜那さんのチカラでは美帆さんのペースについていくのは難しいわけですが、こと集団戦となるとまったく話は別。小柄な身体は風除けの効果を最大限に引き出し、前後との巧みな距離感で「ひとつなぎ」の日本を演出していきます。
「木美帆」という強いパーツを「ひとつなぎ」にすることができる稀有なるジョイント、木菜那さんが日本にはいる。個人の力量の足し算ではなく、チームとしての強さを作れる選手が日本にはいる。このレースでも最後のコーナーで内側によれていく佐藤綾乃さんの腰に手を添え、軌道修正をしたのは菜那さんでした。チームとして戦う日本が、個々人がバラ突き始めたオランダを追い上げると、残り1.5周の時点で再逆転!
↓最後は再び先頭に立った木美帆さんが引っ張り、日本・歓喜の金メダル!オリンピックレコードで決めた!
獲れそうな金を見事に獲った!
圧倒的なチカラで獲った!
ゴール時に一度バラけた隊列が、今度は肩を抱き合って横一列の隊列になる。そして決勝では控えにまわった菊池彩花さんも加わって、4人がひとつなぎとなる。コーチも、解説者もみんなが感極まった勝利。実況が「この瞬間は永遠だーーー!」と名言狙いでスベったこと以外は、最高の勝利でした!
↓強かった、美しかった、素晴らしい金!
美帆さんはこれで金・銀・銅コンプリート!
日本でただひとり、「どれが一番重いかチェック」をできる人になった!
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今大会、何人かメダルを獲ってほしいなぁと個人的に願っていた選手がいたのですが、そのひとりが木菜那さんでした。菜那さんのことを意識したのは、美帆さんがバンクーバー五輪に出場を決めた頃でした。スーパー中学生のことを知ろうと、お姉さんに質問をぶつけ、「木美帆のお姉さん」として扱われていた菜那さん。自分自身も選手であるがゆえに、それは屈辱的な時間だったと思います。
笑顔で妹のことを語りながらも、のちに「転べばいいのにと思っていた」と明かしたほど乱れた心。成功したスポーツ選手に多い、脚光を浴びる弟妹と、そのことによって影となる兄姉のような構図がそこにはありました。岩崎恭子さんのお姉さんであるとか、浅田真央さんのお姉さんであるとかのような。
しかし、菜那さんは美帆さんにないものを持っていた。少し淡泊で変化を求めようとしない美帆さんよりも、野心と貪欲さに満ちていました。絶対に五輪に行くという想いは、ソチ五輪のチームパシュートメンバー入りとなって叶います。この大会で美帆さんは代表入りを逃し、菜那さんが再び前に出た。「乗り越える」べき壁として、美帆さんの前に立った。まさにパシュートの先頭交替のように、もう一度「木美帆」を引っ張り上げる存在となった。
個人として美帆さんはすごい。それは間違いありません。ただ、最終的に金を持って帰らせたのは菜那さんなのかなと思うのです。人生において「姉」として長い時間先頭を滑り、大きな悔しさを味わいながらも再び前に出て引っ張り、そしてチームメンバーとして唯一無二の存在となった菜那さんあればこそなのかなと。「木美帆の姉」という厄介な重荷に負けず、ここまできてくれた最強のパートナーの。このチームで普通のMVPを決めるならやっぱり美帆さんなのだろうけれど、僕の心のMVPは菜那さんにあげたい。そんなえこひいきな気持ちなのです。
↓やったね菜那さん、これで家でもみんなハッピーだ!
妹が個人で銀・銅で、パシュートがアクシデントで転倒とかしてたら、家の空気最悪だもんね!
木家の平和が守られてよかったです!
なお、菊池彩花さんの家は、姉妹で4人がスケート選手(彩花さんは次女、妹三人がショートトラックの選手でうちふたりが平昌出場)というなか、彩花さんだけが金ということで微妙感強みです!
菜那さん!マススタートでもうひとつ個人のメダル期待しています!