正確で無意味な階層

やあ、こんにちは。今日はアウトラインについてのお話をしようと思う。

たとえばさ、君がいま抱えている「やるべきこと」を整理したくなったとするね。そんなときにはアウトライナーがぴったりだってことはこれまで何度も言ってきたと思う。細々と分類するんじゃなくて、一望できるってことがたぶんポイントなんだろうなって、僕は最近感じているんだ。君はどうかな。

で、まず思い浮かぶのは最重要事項だろう。たぶんは仕事に関すること。締切なんかがあって、ちょくちょく進捗していかないとまずいなって感じていること。そういうことから頭に思い浮かぶと思う。

これらは本当に重要な事柄なんだけど、もちろんこれで終わりじゃない。他にもいろいろ「やるべきこと」は眠っている。むしろ、そういうのを掘り起こしたいからこそ、君はこの整理を始めたんだよね。だからそれも別の項目を立てて書き出してみよう。

僕の中では、最初にあげた最重要事項と、ここに挙げられた事項は同じカテゴリじゃない。その違いをうまく言葉では説明できないね。たんに僕が違うと感じているだけだ。でも、その「違い」の感覚がここでは重要になってくる。だから便宜的にではあるけども、僕は項目名をissueとしておいた。別にアルティメットプロジェクトとか、漆黒なる企画案とか、別に名前は何でもいいんだ。単に上のものと区別されていれば役割は果たせる。

で、だ。僕はそこにこれからの中長期的な目標というか指針を三つ掲げた。具体的に紹介するのは避けるけど、これからの僕がなんとかして生計を立てていくために必要なことが三つ書いてある。さらに、仕事とは呼べないけども忘れてはいけないことも書いた。これは常に「気がかり」でありながら、あまりリマインドが飛んでこないので、自分自身できちんと管理しなきゃいけない。

たとえば? そうだね。今使っているクレジットカードが終了しちゃうみたいなんで、新しいクレジットカードの検討する、とかそういうものだよ。GTD的視点で言うなら、これもプロジェクトになるだろうね。でも、僕の感覚では、「クレジットカードの更新」と「書籍の執筆」は同じものじゃない。ぜんぜん違う。だから、同じ箱の中には入れたくないんだ。

そう、ここでもベースは僕の感覚だ。だって、僕の心の中を整理しようとしているんだから、僕の感覚がベースにならなきゃ何か変だよね。そういうことって、案外小さいようでいて、重要な鍵だったりするんだ。

さて、ここまではわりとスイスイこれた。で、そのままの流れで、継続的な対象で気になっていることもリストアップしたくなってくる。僕ならば、このブログとか、寄稿しているブログとか、そういうものだね。それだってもちろん「やるべきこと」に含まれるし、一覧には加えておきたい。

単発ではなく継続的という意味合いで、僕はその項目にContinuous projectと名付けてみた。まあ、ここでも名前の表現それ自体はたいした意味を持たない。他と区別されていればそれで十分だ。で、僕はその項目を立てたあと、いくつかの項目をその下位に並べていった。R-style、Honkure、コンビニBlog、シゴタノ!、メルマガ。

ここでふと、僕の奇妙な整理欲求が姿をあらわす。そいつはまるで、年末の飲み会でせっせと鍋に何を入れるのかを仕切っている鍋奉行みたいな態度で振る舞っている。そういうがこう言うんだ。「ほらほら、何か足りないんじゃないか。もう一つ項目が必要なんじゃないか」

僕はその声につられて、アウトラインに新しい項目を立ててしまう。

「Blog」という項目がそれだ。たしかに、R-style、Honkure、コンビニBlog、シゴタノ!はブログだし、メルマガはブログではない。だから、この項目立ては、純粋に言って正しいし、正確でもある。でも、この項目はほとんど無意味だ。だって、僕の感覚では、このようなカテゴライズは発生していないからだ。

僕は「継続的プロジェクト」を思い浮かべ、さらに「ブログ」を思い浮かべた後、それぞれのブログ名を思い浮かべたわけじゃない。むしろ、それぞれのブログ名とメルマガが頭に思い浮かんだあとに、それらを「継続的プロジェクト」として括っただけだ。そして、その中に「ブログ」と「メルマガ」の区別など存在していなかった。そのようなカテゴライズは、僕の脳内にはなかった。

もし僕が概念学者であるならば、「ブログ」というカテゴリは、言い換えればBlogという項目は必要なのかもしれない。そしてさらに「自分のブログ」と「他人のブログ」なんかをわけてもいい。そのたびに、どんどん正確さは増していく。そして、アウトラインの階層は深まり、一覧性が損なわれていく。

僕が最初に求めていたのは、そのようなものだったのだろうか。概念的に、自分の頭の中を「分類」することだったのだろうか。そうでなく、たんに自分が何をどう考えているのかを知りたかっただけではなかったのだろうか。

これはアウトライナーの使い方の話でもあるし、ある種の寓話として受け取ってもらってもいい。

世の中には正確だが、無意味な階層というものがある。それは正確であるがゆえに批判しにくく、またこっそり紛れ込んできやすいものであるが、ある種の目的にとっては余計なものでしかない。無意味なものでしかない。

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Rashita
物書きをやっております。実用書から小説までなんでもござれのハイブリッド物書きです。 ライフハックや仕事術、知的生産などに興味があります。

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