JR東日本・最大の労働組合「JR東労組」が、来月、ストライキなどの争議行為を行うと厚生労働省などに通知しました。ストライキに踏み切れば、民営化後、初めてです。
民営化後初とみられる「JR東労組」によるストライキ。
われわれ利用者からすれば何よりも気になってしまうのは、運行に支障が出てしまうのかですが、「組合側は本来業務は行うため、列車の運行に影響は出ないと」しているようです。
しかし、上記の記事で気になる点がありまして、それはというと…
東京と千葉の一部で、組合員がストライキなどの争議行為を行うと通知しました。具体的には、運転士や車掌、車両メンテナンス担当者が時間外の自己啓発活動などを行わないということで…
「時間外の自己啓発活動を行わない」?
それって「ストライキ」なんでしょうか…?
こういったツイートも拝見しました。
そこで、今回は謎の「時間外の自己啓発活動」について調べてみました。
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「勤務時間外の自己啓発活動」
まずはツイートにもありました、JR東労組東京地方本部のサイトを覗いてみましょう。
ストライキの内容はやはり「勤務時間外の自己啓発活動には応じない【対象:運車職場】」と記載されています。
したがって、本件が「そもそもストなのか」と話題になった理由はおそらく、文字通りの「勤務時間外の自己啓発活動の放棄」であるならば、これをストライキと呼べるのかという点でしょう。
とはいえ今回のストライキについて、労組側は厚生労働省にも通知を行っているとのことですので、労使間ではこれが「労働時間内」であるとの認識が共有されているものであると考えるのが自然ではないでしょうか。
そこで、もう少しこの「勤務時間外の自己啓発活動」について調べてみました。
勤務時間外の「マイ・プロジェクト」
すると、以下のPDF が見つかります。
[PDF]「労働基準法第36条第1項の規定に基づく時間外及び公休日労働に関する協定」についての申入れ
組合 「マイプロと委員会活動は自己啓発の認識で良いか。」
会社 「社員の育成観点から、自己啓発活動と位置づけている。自己啓発活動が重要と判断した場合は、変形日勤に指定することもある。それよって、他の社員が休日出勤な場合がある。
鉄道業を運営するにあたってもMyProjectや委員会活動は、重要であると考える。引き続行っていく。」
どうやら、「勤務時間外の自己啓発活動」とは、JR東日本内部の言葉に置き換えると、「マイ・プロジェクト」と「委員会活動」と呼ばれる活動を指すようです。
そして上記タイトルにもあるように、おそらくこれらは「36(サブロク)協定」でおなじみ労働基準法36条1項に基づく時間外労働にあたるものと推察します。
この「マイ・プロジェクト」は、公式の文書でその内容を分かりやすく説明するものは(ちょっと探した限りでは)見つかりませんでしたが、はまれぽ.comさんの記事で以下のような言及を見つけました。
マイ・プロジェクトとは?
「“社員が自発的な業務改善”に取り組む社内活動です。今回のプロジェクションマッピングも、お客さまのお声をもとに、社員で意見を出し合って決めました」と菊池さん。
マイ・プロジェクトの取り組みはさまざまで、今回のプロジェクションマッピングを使った案内板など、目につくところから、目に見えないところの安全管理などさまざまなのだとか。“まずやってみよう”という社員の自主性を重んじ、グループ単位でマイ・プロジェクトは常に動いているとのこと。
公式の文書ではありませんが、この文言はJR東の広報のチェックを通っているものと考えられますので、おそらくこれが「マイ・プロジェクト」という活動の大まかな意味でしょう。
そういえば、以前に比べてJR東日本の各駅で、その駅独自の(あるいは、駅員の趣味の濃い独特な)掲示物が増えたと思いませんか?ああいった各駅独自の工夫を促す仕組みがこれなのでしょうか。
これらの取り組みは、駅員さんらの時間外労働に支えられていたのかもしれませんが、先ほどのPDF にもありますように、これらの活動(時間外労働)の結果、別の従業員の休日出勤が発生したりしている事実もあるようで、労使間の争議に発展する理由の一部を構成しているようでもあります。
「マイ・プロジェクト」が可能にしたストライキ?
というわけで以上、「時間外の自己啓発活動を行わない」ストライキとは、「(36協定に係る労働時間の延長の限度内の)時間外労働の自己啓発活動を行わない」というストライキであると言えそうです。
したがって、逆に言えば、「マイ・プロジェクト」という取り組みが出来た結果、利用者である私たちに*2影響を与えないストライキを行うことが可能になったことが、国鉄民営化後初となるストライキを可能にしたと言えるのかもしれません。