写真はイメージ=PIXTA 「毎月の赤字をボーナスで補填しているが、もう限界だ」。会社員のFさん(40)がパートの妻(38)を引き連れ、憔悴(しょうすい)した様子で相談に来ました。Fさんは妻と小学3年生の長男、保育園の年長の長女の4人暮らし。10年ほど前に購入したマンションに住んでいます。Fさんと妻のパートの収入を合わせた月の手取り給料は45万円ほどありますが、毎月9万円ほどの大赤字です。このままでは210万円ある貯蓄を取り崩さざるを得ない状況に追い込まれ、Fさん夫婦は危機感を覚えるようになったそうです。
■「家賃収入は貯蓄に回せる唯一の収入源」
Fさんは実は独身時代に購入したマンションを所有しており、現在は賃貸物件としています。ローンの支払いは終わっていますが、維持費がかかっています。Fさんは「家計が赤字なので手放したほうがいい」と思いつつ、それでも入居者がいるときは家賃収入を得ることができるため「貯蓄に回せる唯一の収入源」と手放せないでいます。
その一方でFさんは「貸しマンションの維持費が赤字の元凶」と決めつけているようです。しかし、本当にそうなのでしょうか? 貸しマンションだけにこだわり、家計全般を見ようとしないFさんの姿勢に疑問を抱いた私は、貸しマンションの維持費がどの程度家計に影響を与えているのかを探るため、支出全体の状況を調べさせてもらいました。
すると、9万円ほどの赤字のうち貸しマンションの維持費は4万円ほどを占めていましたが、赤字のすべてが維持費のせいだとは言い切れません。それよりも目についたのはほかの費目の支出です。食費が月に10万6000円、被服費2万3000円、交際費2万8000円、娯楽費3万5000円……。いわゆる「メタボ家計」であることが一目瞭然でした。
Fさんは手取りで年間130万円ほどのボーナスをもらっています。しかし、毎月の赤字の補填に加え、固定資産税や任意で加入した自動車保険の保険料などを支払うとボーナスはきれいになくなってしまうどころか、足りないくらいです。このままでは家計が回らなくなり、近いうちに貯蓄を取り崩さざるを得ないのは明らかです。Fさん夫婦は「どうやって家計を見直したらいいのか皆目分からない。助けてほしい」と訴えます。
■まず支出の「異常値」を見つける
私はFさんの家庭の家計を見直すにあたり、貸しマンションについては現在の相場や実際の評価額の詳細がわからないこともあり、手放すか否かをしばらく保留としました。そのうえで夫婦と子ども2人の家庭の一般的な支出と比較してみました。この手法は一般的な家庭の家計を目標にするというのではなく、支出の「異常値」を見つけるのが目的です。Fさんの支出の「異常値」は前述したように食費、被服費、交際費、娯楽費といった「変動費」でした。まず、これらの費目の削減に取り組むことにしました。
■クレジットカードをプリペイドに切り替え
そのために私が最初にアドバイスしたのはクレジットカードの利用を控えてもらうことでした。Fさん夫婦は基本的にカード決済で買い物をしており、スマートフォン(スマホ)の家計簿アプリなども利用していないため、いくら使ったのかが見えにくくなっていました。そのことが支出が多くなりすぎる原因のひとつでした。そのため現金主義に変えてもらうことも提案したのですが、「ポイントをためたい」というFさん夫婦の意向もあり、LINE Payカードなどチャージしてから使うプリペイドカードで買い物をしてもらうことにしました。毎週決まった曜日に予算で決められた金額だけをチャージすれば、チャージ額が利用の上限額となるので使いすぎを防げます。
プリペイドカードで支出全体の上限を強制的に設定したあとは、それぞれの費目について具体的な削減方法をアドバイスしました。スマホはすでに格安スマホに切り替えていたり、生命保険も見直したりしており、Fさんなりに節約を意識しはじめているようでしたが、依然として甘いところが多くありました。
食費の削減は定番ですが、「無駄な食材を出さない」「外食に頼り過ぎない」ことを目標にしました。Fさん夫婦はネットスーパーを頻繁に利用していましたが、「予算を決めてから」という計画性がなかったため、いつも買いすぎていたのです。このため、日用品も含めて1週間の予算をきちんと設定することにしました。また、妻はもともと「夜に外食に行くと帰宅時間が遅くなり、子どもたちの翌日の生活に影響することが気になっていた」と思っていたようで、外食については少し背中を押す程度で減らすことができました。
■無駄な支出を徹底的に排除
被服費や交際費、娯楽費も「無計画な支出」で、もっといえば「無駄遣い」に近い状況でした。このため、買う前に「欲しい」「必要」のどちらの意志で購入するのかをちゃんと考えてもらいました。Fさん夫婦は「意外に無駄な支出が多かった。これからは必要なものだけを買うようにしたい」と反省したようで、少しずつですが支出を抑えられるようになってきました。それでも「後から『無駄な買い物だった』と気づくことがまだある」といい、無駄を徹底的に排除すれば支出をさらに減らせそうです。
こうした取り組みで月に9万5000円ほどの支出を削減し、毎月の収支はトントンになりました。貯蓄に回せるほどの余剰金はありませんが、毎月の赤字の補填に使っていたボーナスが残るようになりました。固定資産税や自動車の保険料を支払ってもボーナスの大部分が残り、年間で90万円ほどを貯蓄できる見込みです。このことをきっかけにFさん夫婦は「さらに支出を減らせないか」と考えはじめ、貸しマンションについても相場などを見ながら計画的に手放すことを検討し始めました。
■「特別な支出」を言い訳にしない
Fさん夫婦のように「家計を改善したいけれども、どう見直せばよいかわからない」という人がよくいます。そういう場合は一般的な家庭の家計と自身の家計とを比較して極端に支出の多い費目を洗い出し、その支出が本当に必要なのかどうかを考えていくと、家計改善のポイントを見つけやすくなります。Fさん夫婦のように貸しマンションの維持費のせいにして、ほかの費目の支出が「メタボ」になっていることに気付かない例も珍しくありません。また、一般的な家庭にはない特別な支出があるときに限って、人はそれを言い訳にするものです。そうした姿勢を改め、客観的にどこに原因があるのかを見つけることができれば、家計は良い方向に向かっていくのです。
(「もうかる家計のつくり方」は隔週水曜更新です)
横山光昭(株)マイエフピー代表、mirai talk株式会社取締役共同代表。顧客が「現在も未来も豊かな生活を送ることができる」ことを一番の目標に、独自の家計再生・貯金プログラムを用いた個別の指導で、これまで10000件以上の赤字家計を再生。著書は累計100万部を超える『年収200万円からの貯金生活宣言』シリーズ、累計65万部の『はじめての人のための3000円投資生活』シリーズがあり、著作合計88冊、累計270万部となる。講演も多数。 本コンテンツの無断転載、配信、共有利用を禁止します。