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 このままでは、携帯電話機を持ち込んで利用する多くの訪日外国人が電波法違反になってしまう。そこで、欧米の認証を受けた機器を短期間使う場合は影響が少ないと総務省が判断し、特例として認めたのだ。政府のインバウンド振興の方針が影響したのかもしれない。

日本のサービスが対応できない

 この特例により、いびつな構造が生まれた。海外から持ち込まれた機器に対し、日本企業が提供する決済などのサービスの動作を保証できなくなってしまったのだ。

 以前は、海外から持ち込まれる機器に技適マークが付いていなければ、使用は違法だった。違法なものに対して対応する義務はない。ところが、特例によって技適マークが付いていなくても合法の端末が出てくることになり、国内企業がそれに対応しなければならなくなった。

 経団連の会員企業でサービスの研究開発に携わっているあるエンジニアは「最近のスマートフォンには、様々なバリエーションがある。同じバージョンのAndroidを搭載していても、機器ごとに挙動はかなり異なる」と語る。スマートフォンのメーカーが独自の機能を搭載していたり、機能を拡張していたりすることが多いからだ。このため、「ほとんどのAndroidスマートフォンでサービスを問題なく利用できていても、特定の機器だけで障害が出るケースがときどきある」(前述のエンジニア)という。

 こうした問題に対しては二つの対応が必要になる。一つは「きちんと動作するかどうかを事前に確認すること」。もう一つは「海外から持ち込まれた機器で問題が起こったときに、その問題を速やかに解決すること」である。実際には海外には何百、何千もの機器があるため、事前にすべての製品の動作を確認するのは事実上不可能だ。標準的な機種でサービスの提供に支障がないかどうかを確認し、問題が起こった機器に対処するのが現実的だろう。

 ところが、訪日外国人には特例で使用を認められている機器であっても、日本でサービスを提供する企業は電波法により使用を禁じられている。日本国内ではサービス側の対応が不可能なのだ。

 この状況を問題視した複数の日経連会員企業は、経団連に対して2016年夏前に規制改革要望を提出。経団連はこれを取りまとめ、2016年11月に内閣府の「規制改革ホットライン」に規制改革要望を提出した。