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強制連行からのテルベールへ
7巻のに関しての情報を活動報告にて掲載しております。
ぜひ見ていただけますと幸いです。
「――――ダンジョンの出現……ですか?」
「そうじゃ」
俺はバーナさんに呼ばれて学園長室を訪れていた。
そして今、ダンジョンの出現を告げられたところだ。
……うーん……ダンジョンっていうモノを、俺は【果てなき悲愛の森】と黒龍神のいた場所くらいしか知らないんだけど……。
「ダンジョンってそんな簡単に急に出現するものなんですか?」
「いや、本来ならばそう起こることではない。じゃが、この間の【魔神教団】の使徒とやらが妙な力を使って学園付近の森を荒らしたことで出現したようなのじゃ」
そういえば、アルがバーナさんの指示でその森を探索してるって聞いたな。あそこに【魔神教団】の使徒とやらがいたのか。
「出現したってことは、新しいダンジョンなんですよね?」
「いや、そうとも言い切れんのぉ……」
「え?」
俺はバーナさんの言葉に首を傾げる。
ダンジョンが出現したって言うくらいだし、新しいダンジョンなんじゃねぇのか?
そう思っていると、バーナさんは丁寧に教えてくれた。
「その様子じゃと知らんみたいじゃな。ダンジョンはもちろん新しく出現する場合もあれば、もともと存在するダンジョンに新たな入口ができる場合の二つがあるのじゃよ。新たなダンジョンならば普通に攻略すればいいんじゃが、既に存在するダンジョンに繋がる別の入り口ならば少し話が変わっての。モノによっては同じダンジョンの入り口が国をまたいで他国にそれぞれ存在することもある。その場合、戦争やらなんやらで利用される心配もあるため、早期発見と情報収集が必要になるのじゃよ」
「なるほど……」
まさか入り口が別の国に出来るとかそんなことが起こるとはな。
「そういう理由もあって、ダンジョンの出現は見過ごせない問題なんじゃよ」
「じゃあ、今回俺を呼んだのは……」
俺がそう言うとバーナさんは真剣な表情で俺を見た。
「うむ。誠一君にはそのダンジョンの攻略を頼みたいんじゃよ」
「俺にですか? いや、確かに冒険者ですけど、ダンジョンの経験とかほとんどないんですが……」
「ワシは誠一君の実力を知っておる。君は隠したいのか分からないが、少なくともテルベールを襲った魔物の軍勢を滅ぼした時点で片鱗は見せておった。そして確信に変わったのは、それこそ【魔神教団】が攻めてきたときじゃ。あの時は君がおらんかったらどうなっていたか……」
あー……最近は実力を隠すとか考えてなかったからなぁ。いや、そもそも隠す気あったのか? 俺よ。
……何か過去の自分を思い返してみると、言うほど実力を隠そうとしてねぇな。アホですね、分かります。
まあ今は隠す必要もあまりないんだけどね。
「とにかく、そんな実力者である誠一君に頼むことで、早めに情報収集をしてもらいたいのじゃ。ワシはあの事件のせいで学園を離れるわけにもいかんしのぅ……」
「なるほど……理由は分かりました。俺なんかでよければ、行ってきますよ」
「おお! そう言ってもらえると助かる。あ、誠一君はダンジョンの経験が少ないのであれば、アルトリア君も連れて行くといい。他に誰を連れて行くかも君に任せよう」
「分かりました。準備が出来次第、出発しますね」
「すまんが頼むよ」
……本当に久しぶりだな、ダンジョンなんて。
あ、でも……【冥界】も一種のダンジョンになるのかね?
何にせよ、久しぶりに冒険者としての活動だ。ダンジョンって言うからには気合を入れないとな。
なんせ黒龍神の所ではアルとはぐれるなんて事態にもなったわけだし、当然油断は禁物だ。
一緒に行くメンバーは……まあアレだな。アルはもちろん、サリアやルルネ、オリガちゃんを連れて行こう。アグノスたちはベアトリスさんに頼んでおけば大丈夫だろう。
そんなことを考えながら廊下を歩いていると、突然俺の目の前が光った。
「へ?」
あまりにも突然すぎて間抜けな表情を晒していると、やがて光は収まり、そこには父さんたちと旅に出たはずの宝箱が姿を現した。
「へ? は? な、なんで宝箱が……?」
「……見つけた。おれ、お前、連れて行く」
「はい?」
訳の分からない状況で呆然とする俺を無視し、宝箱は俺の腕を掴んだ。
「それじゃあ、行く」
「え、い、行くってどこに――――」
「収納」
「なになになになに!? ちょっ……うえええええええええええええ!?」
不意に宝箱が開いたかと思えば、宝箱は俺をその中に収納してしまった。
俺はまったく状況が理解できぬまま、漆黒の空間に放置されるのだった。
◆◇◆
「連れてきた」
「だからどういう状況!? 説明プリーズ!」
どれだけの時間が経ったのかは分からないが、またも急に漆黒の空間に光が差し込んだかと思えば、宝箱に腕を掴まれ、中から取り出された。……宝箱の中ってあんな空間になってるのね。
どこか現実逃避気味にそんなことを考えていると、不意に声をかけられた。
「元気そうでよかったぜ、誠一」
「へ? ってランゼさん!? じゃ、じゃあここは……」
「ああ、ウィンブルグ王国のテルベールだ」
よく分からないまま、俺はテルベールに強制連行されたようだ。
改めて周囲を見渡すと、ゼアノスやルシウスさんたちだけでなく、フロリオさんやルイエスの姿も見えた。
って、アレ? なんか見覚えのあるゴリラまで見えるんだけど……気のせい?
「えっと……状況が飲み込めていないので説明してもらってもいいですか?」
俺、何か悪いことしたかね?
空気が何だか重苦しいので、思わずそんなことを考えてしまう。
するとランゼさんが厳しい表情で口を開いた。
「誠一。お前さんに頼みがある」
「お、俺にですか?」
「ああ」
なんだか今日一日でやたらと頼みごとを受けてる気が……。
まあバーナさんもランゼさんもお世話になっているので、俺に出来ることなら助けたい。
そう思っていると、ランゼさんのお願いは予想以上に責任重大な内容だった。
「――――魔王の娘が『呪具』による呪いを受けた。それをどうにかしてほしい」
「魔王の娘!? それに呪いって……」
まさかの言葉に目を見開くと、ルシウスさんがにこやかな様子なのに体中から殺気をまき散らしながら俺に説明した。
「そこに転がってるゴミどもが僕の大切な仲間に手を出したんだ。それも、『呪具』なんて物を使ってね」
「ゴミ?」
ルシウスさんの視線を辿り、その方向に目を向けると血塗れの男が三人転がっていた。ええ……何、この殺人現場みたいなの。い、生きてるんだよね?
「そこで転がってるのは【魔神教団】の使徒だ」
「へっ!?」
最近身近にあった事件の主犯と同じ組織の名前であることに俺は驚く。
「そいつらが『呪具』を使って、魔王の娘を襲ったわけさ。しかもその呪いが以前俺が受けたタイプと同じで、そもそも呪いを解けるヤツはこの世に存在しねぇ。だが、お前は俺の呪いを一度解いてる。その力を使って、魔王の娘を助けてほしいんだ」
正直、話が急展開過ぎてついて行けてない。
何でそんな状況になったのかとか、【魔神教団】が攻めてきた理由とか……とにかく分からないことは多いが、それよりも魔王の娘さんとやらが先だろう。
「わ、分かりました。どうなるか分かりませんが、やってみます」
まさか再び反転魔法『良くなれ』を使うことになるとは……!
いや、今回は魔法名を口に出さなくてもいいんだ。やったぜ!
俺がそう言うとランゼさんたちは少し安心した様子を見せ、俺をとある部屋に移動させた。
「ここで眠ってる。周りにいるのは魔王の娘の家臣たちだから気にするなよ」
「はい」
部屋の中に入ると、ランゼさんの言葉通り何人かの魔族らしき人物が不安そうな顔を浮かべていたり、ルシウスさんのように殺気をまき散らしながら佇んでいたりとさっきの場所より重苦しい雰囲気が部屋全体を支配していた。
そんな空気を気にした様子もなく、ランゼさんはその場にいる全員に聞こえるように言った。
「おい、お前さんら。『呪い』を解ける人物を連れてきたぞ」
『!!』
「うおっ!?」
一斉に視線がこちらに向いたので、思わず声を出してしまった。そ、そんなに見つめなくても……。
するとなんだか露出激しめのすごい美人さんがランゼさんに聞いた。
「……その男が? 冗談でしょ?」
「冗談だという気持ちも分かるが、本当だ」
「……認めたくないけど、『呪い』なのよ? 『呪い』が今まで解けたって話は聞いたことがないわ」
美人さんがそう言うと、殺気をまき散らしながら佇んでいる白髪のすごいイケメンが俺に鋭い視線を向ける。
「今の俺たちを前にして冗談を言うってのは……よほど死にてぇらしいな?」
前にランゼさんを助けたときもそうだったけど、『呪い』っていうのはこの世界じゃ本当にどうしようもないモノなんだな。
まあそれはいいとして……。
「俺はこの国の王様であるランゼさんの友人です。いきなり信じろとは言えませんが、これでも少しも信用してもらえませんか?」
「できるわけねぇだろ? んなフードで顔隠した怪しさ満点の不審者なんてよ」
まったくもって正論ですね!
ただ脱ぐのを忘れていた俺は、すぐにフードを脱いだ。
すると魔族の方々が目を見開いた。そんなに驚くような顔してるかね?
「これでいいですか?」
「え? あ……お、おお……いや、顔を見せろとは言ったけどよ……」
何なんですかねぇ!? その反応!
でも自分の仕える主人に怪しいヤツを近づけたくないのは分かるし……もう無視して魔法使っちゃダメかなぁ?
少し乱暴な思考回路に行きつつあると、俺の後ろからルシウスさんがやって来た。
「彼のことなら心配いらないよ。この僕が保証しよう」
そうか! ルシウスさんなら初代魔王だし、相手も言うことを聞いてくれるかも!
「え!? あ、その……ずっと気になってたんですが……どちら様で?」
「おっと~、自己紹介忘れてた~」
「ダメじゃねぇかッ!」
自己紹介してなかったら俺と同じで不審者だよ!
「いやぁ、ごめんごめん。僕はルシウス・アルサーレ。魔族の国を建国した……いわゆる初代魔王ってヤツさ」
『ええええええええええええ!?』
驚愕の声が部屋中に響き渡った。そりゃそうだよ。俺も驚いたんだし。
「あの時の言葉は聞き間違いじゃなかったのか……」
「で、でもよぉ……初代魔王って言われても……」
だが、魔族の人たちもいきなり初代魔王だなんて言われても困るだろう。
実際、みんなどういう反応すればいいのか分からないって感じだし。
「んー……ここで問答してる時間が勿体ないんだよねぇ……そうだ!」
少し考える仕草をしていたルシウスさんは、唐突に何かを思いついた様子で口を開いた。
「君たち、僕が来ないと結構危なかったじゃん? つまり僕はいわゆる命の恩人で、その僕が信用していいって言ってるんだ。……信用するよね?」
ルシウスさん、それは暴論すぎる!
微かだけどルシウスさんから放たれる威圧感に魔族の面々は首を縦に振るしかなかった。
ある意味魔王……というか悪魔じみた行いのあとに、ルシウスさんはいい笑顔で俺に言った。
「さあ、存分にやっちゃって!」
「……はい」
俺も首を縦に振るのだった。
全文改稿していたものが終わり、完全新作となっております。
よろしければ読んでみてもらえると嬉しいです。
『おはようガーディアン(仮)』
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