【ブリュッセル=森本学】欧州連合(EU)は2030年までに、使い捨てのプラスチック包装を域内で無くし、すべてを再利用または素材としてリサイクルすることを目指す。EUの執行機関である欧州委員会が16日公表した「プラスチック戦略」で、新目標を打ち出した。深刻さを増すプラスチックごみによる海洋汚染への対応を急ぐ。
欧州委によると、欧州では毎年、約2600万トンのプラスチックごみが排出されるが、リサイクルされるのは30%未満。商品の包装などに使われるプラスチックの多くは使い捨てで、埋め立てや焼却に回される。海を漂うごみの主な発生源でもあり、生態系の破壊やプラスチックを食べた魚介類を通じた人の健康への悪影響も懸念されている。
「プラスチックなしで生きていくことはできない。再利用やリサイクルがより利益を生み出す仕組みに変えていく必要がある」。欧州委のティメルマンス第1副委員長は16日の記者会見で、使い捨てを無くすため、プラスチック包装のリサイクルを促す新ルール導入などの検討を表明した。
EUでは、19年3月に英国がEUから離脱した後のEU共通予算の財源の穴を埋めるため、プラスチック包装などに課税する案も浮上している。予算を担うエッティンガー欧州委員は10日、「年120億ユーロ(約1兆6300億円)」規模で導入する個人案を披露していた。
ただプラスチック戦略では新税についての具体的な記述は避け、「EUレベルでの財政的手段の実現可能性を探る」と、あいまいな記述にとどめた。欧州委のカタイネン副委員長は16日の記者会見で「EUレベルでうまく機能するのか、個人的には疑問だ」と慎重な見方を示した。
欧州委は、生態系への悪影響が心配される微細なプラスチック粒子「マイクロビーズ」を人工的に加えた製品の製造も禁じる方針。マイクロビーズは汚れを落としやすくするため、洗顔料や歯磨き粉などの一部に添加されるケースがあるが、環境保護を目的に禁止する動きが欧州で広がり始めている。