人生は入れ子人形 -Матрёшка-

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【ロシア人豪商:Алэксэй Романович Зволинский】
[Aleksei Romanovich Zvolinskii - The Russian billionaire
 (アレクセイ・ロマノヴィッチ・ズヴォリンスキー)]


「私……古代のロマンにズヴォリンスキー」
「嗚呼……穴があったら……掘りたいっ!」

「Ladies And Gentleman!さぁ本日お聞かせするのは私の華麗なる半生、
 貧しい生い立ちで幕を開ける涙、涙の物語でございまァす」
「хорошо(ハラショー)! хорошо(ハラショー)! 
 張り切ってまいりましょう! さぁ腕を組みながら足の筋を伸ばす運動!」


赤く揺らめく暖炉[печка(ペチカ)] 家にもあったのに
悲しいけれど 燃やすべき 薪がなかった
弟達はいつも 機敏に(ちょこまか)動いてた
腹は減るけど じっとしてたら 凍っちまうから

運命の贈り物 不幸を詰めた 入れ子人形[Матрёшка(マトリョーシカ)]
開けても 開けても 悲しみばかり

「хорошо(ハラショー)!хорошо(ハラショー)!
 ボルシチには黒コショー! さぁ、2番はますます涙ちょちょぎれンスキー」


白く煌めく大河[Волга(ヴォルガ)] 風を切り裂いて
走れ馬車よ[тройка(トロイカ)] 家は遠いか 空駆けろ
妹達もいつも 腹を空かせてた 「お兄ちゃん、お腹空いたよぉ…」
頑張れ末妹よ[Катюша(カチューシャ)]銀のお注射 きっと快くなるさ
       「がんばーれ!」     「いてー」

人生は贈り物 不条理詰めた 入れ子人形[Матрёшка(マトリョーシカ)]
開けても 開けても 苦しみばかり

「さぁ皆様、お手元にハンケチなどご用意くださいませ。
 ここまではほんの序章に過ぎません。本当に悲惨なのはここからでございまぁす」


臥せる少女の治療費で 貧しい家計は燃え上がり
父親(パパ)は遠くの炭坑で 岩が崩れて下敷きに
登りは険しき坂道も 転がり堕ちるは正に刹那

死せる少女の葬列に(「カチューシャ……」「パパァ…」)
愛した二人の影はなく(「ホラ、泣かないの」「ママァ…」 「カチューシャにお別れしましょうね」)
母親(ママ)も娼婦の格好で 無理が崇って旅立てり
どんなに険しき坂道も 転がり堕ちれば正に刹那

「貴方、あ・な・た!」 
「おぉ、エイレーネ!!愛しの我が妻よ…… 私、君の魅力にズヴォリンスキー!」
「何馬鹿なこと仰ってるんですか、作業のほうは如何ですの?」
「順調、快調、絶好調! 今は丁度休憩していた所です。あぁ、君たちはもう良いですよ。
 はい、ありがとう、спасибо(スパスィーバ)、спасибо(スパスィーバ)。
(「つれないわねぇ」「もう終わり?」「あたいの鉄拳がぁ!」)
 おほん、それでは諸君! 張り切って作業を再開いたしましょう!」

(「ここはズボリンに任せて帰りましょ」「待ってよカティア」「待ってぇ、お姉さまぁ」)
「「хорошо!(ハラショー)」」

掘っても掘っても砂ばかり どれだけ掘っても脈がない
拝金野郎の妄想さ 無駄な努力と他者(ひと)は言う
それでも 夫(あなた)は諦めないわ

掘っては掘っては砂埃 どれだけ掘っても切りがない
成金野郎の道楽さ 馬鹿な男と学者(ひと)は嗤う
それでも 妻(わたし)は着いてゆくわ

(眩く)輝く黄金や(世界中に)轟く名声が
(貴方は)欲しい訳じゃない(燃えるような)夢が見たいだけ
運命(ミラ)が望むのは 喜劇か 悲劇か
今もう一度【神話】を 歴史の舞台に立たせたい……

貧しい一家は離れ離れ 私は商家へ丁稚奉公
不細工な顔だと虐められたけど 誰よりも必死に働いた
(貴方)を支えたのは家族の存在と 母の形見となった一冊の【叙事詩】(本)

――"運命は残酷だ されど彼女を恐れるな
女神(ミラ)が戦わぬ者に微笑むことなど 決してないのだから"――

人生は贈り物 不条理詰めた 入れ子人形[Матрёшка(マトリョーシカ)]
それでも私(夫)は掘るだろう(でしょう) そこに穴がある限り……

「うおおお!」
「あなた…?」
「Eirene(エイレーネ)、Eirene(エイレーネ)!」
「何ですの?」
「Хорошо(Harosho)!」
「えぇ?」
「Хорошо(Harosho)!」
「まあ……!」
「Хорошоооо(Haroshoooo)!!!!」
「素晴らしいわ……!」
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