37年ぶりの大雪で国道8号で車約1500台が立ち往生、自衛隊が千人以上派遣され、小中学校が連日休校となるなど、福井県嶺北地方で大きな被害が出たが、今回の降雪で気象庁から「大雪特別警報」は発表されなかった。特別警報は「数十年に1度」の現象が想定される場合に出されるが、「府県程度の広がり」が要件の一つになっており、積雪が広範囲にはならなかったためだ。関係者からは「降雪への注意喚起情報は大雨などと比べて種類が少なく、充実させるべきだ」との指摘がある。

 特別警報は2013年に導入され、気象に関しては大雨、暴風、高潮、波浪、暴風雪、大雪の6種類がある。全国で計9回発表されたが、大雪と暴風雪は1度も例がない。

 大雪での発表条件は「府県程度の広がりをもって、50年に1度の積雪深となり、かつその後も警報級の降雪が丸1日程度以上続く」となっている。今回は、越前市武生で130センチと、50年に1度の積雪深(基準値111センチ)に達し、福井市は147センチ(同160センチ)、大野市九頭竜301センチ(同308センチ)は基準値近くまで積もったが、嶺南地方は50センチ前後と、府県程度の広範囲にはならなかった。

 気象庁は「台風や梅雨前線による大雨は広範囲になりやすいが、雪は集中して同じ場所で降り続けることが多く、大雪は一般的には広範囲になりにくい」と話す。

 大雨で災害の危険度が高まっているときに気象庁が提供する情報は、「記録的短時間大雨情報」「土砂災害警戒情報」などと細分化されているが、大雪ではこうした設定はされていない。

 防災に詳しい元福井地方気象台長の饒村曜(にょうむら・よう)青山学院大非常勤講師(66)=東京都=は「除雪では、急に強く降る雪に関する情報が重要。例えば大雨のように、記録的短時間“大雪”情報の新設など、今後検討が必要かもしれない」と指摘。「東京など雪国の生活を知らない人には、雪への対応の大変さを理解しづらい。記録的大雪を経験した福井から、気象庁の制度の改善点を発信してほしい」と話していた。