中国国有企業に6000億円 伊藤忠が投じる大きな賭け
伊藤忠は昨年9月に、タイの華僑系財閥チャロン・ポカパン(CP)グループと、1000億円規模の株式を相互に持ち合う形で資本提携しており、今回はそのCPが仲を取り持った形だ。
CPと共にCITICに総額で1兆2040億円を投じ、発行済み株式の20%を保有する。うち伊藤忠の出資分は6000億円。伊藤忠によると、中国政府が進める国有企業改革に伴う外資受け入れの第1号案件だという。
1月20日に東京都内で会見した伊藤忠の岡藤正広社長は、“いい投資”であることを強調した。
その理由は三つある。まず一つ目は、新規ビジネスの創出による事業の拡大だ。世界的なネットワークを持つ伊藤忠、東南アジアで食料や農業に強いCP、そして中国で金融を手掛けるCITICの3社が組むことで、アジアにおけるさまざまなビジネスを創出するという。
そして二つ目は、連結純利益の拡大だ。今回、CPとの共同出資会社を通じて、伊藤忠は6000億円の出資に対して、CITICからの取り込み利益が700億~800億円に上る計算だ。
そして三つ目が、中国の国有企業へ出資できたこと。「誰にでも出資できる案件ではない」(岡藤社長)といい、中国における伊藤忠の実績や、CPとの関係があったからこそ実現できたという。
株式市場は評価せずところが、株式市場の評価は手厳しい。
出資を発表した20日、翌21日共に伊藤忠の株価は下がった。「集中リスクが大き過ぎることを市場が懸念している」(アナリスト)ためだという。
伊藤忠の2013年度の投資実績は4300億円。つまり過去1年の投資額を上回る額を、この1案件だけにつぎ込むことになる。しかも、伊藤忠の時価総額は2兆円弱で、6000億円はその3割に当たる規模だ。
また、CITICの事業は金融と不動産が中心。中国のいわゆる理財商品や不動産相場の先行き不透明感が拭えない昨今、「リスクしか感じられない」(同)という。
それでも伊藤忠が今回の巨額出資を決めたのは、商社業界で上位に位置する三菱商事と三井物産に追い付くには、資産規模を拡大するほかないからだ。
「三菱商事は当社の2倍、三井物産は1.5倍の資産を有しており、優良資産を持たないと人も採れないし、こぢんまりしてしまう。上位と互角に戦えるようにしないと」。岡藤社長からはこんな焦りの言葉が口を突いて出た。
これまでの慣例に倣えば、岡藤社長の任期はあと1年。そんなタイミングで大きな賭けに出たといえそうだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部須賀彩子)
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