2月上旬、1頭のオランウータンが射殺されているのがボルネオ島で見つかった。1月には、首を落とされたオランウータンが川に浮かんでいた。また2017年には、パーム油プランテーションの労働者たちが、島のオランウータン1頭を殺して食べたとして捜査の対象になった。(参考記事:「オランウータンを食用捕獲、ボルネオ島」)
個々の事件で被害に遭ったのは1頭ずつだが、ボルネオ島の絶滅危惧種がこのように意図的に殺されるケースは徐々に増加している。オランウータンはこうした出来事によって確実に失われており、長期的・全体的な減少につながっているとする論文が、学術誌「セル・バイオロジー」に掲載された。(参考記事:「オランウータン 樹上の危うい未来」)
今回の研究は、38の異なる調査機関が集めたデータに基づく包括的なものだ。論文の共同筆頭著者で、ドイツ、マックス・プランク進化人類学研究所とドイツ総合生物多様性研究センターの研究者であるマリア・フォークト氏は、大量のデータを処理して驚いた。1999年から2015年までに、ボルネオ島のオランウータンが15万頭近く減っていたのだ。島にすむこの動物のざっと半分という数だった。
生息地の減少に見舞われた個体も多かったが、研究で明らかになったのは、大部分が森林地帯で姿を消しているということだった。したがって研究チームは、狩猟、つまり意図的な殺害が個体数減少に拍車をかけており、この要因は今まで過小評価されていたと結論づけるに至った。
予期せぬ結果
研究に当たり、論文の共著者で英リバプール・ジョン・ムーア大学のセルジュ・ヴィッヒ氏は、まず、密集した個体群がボルネオ島のどこにいて、どのくらいの密度なのか推定する必要があった。オランウータンのねぐらを追跡した現地調査を集計すると、16年間で3万6555頭が観察されていたことがわかった。
しかし同じ期間に、島のオランウータンは生息地全体で半分に減っていた。一部(約9%)は森林が完全に失われた地域で姿を消していたが、大多数は森林地帯で消えているという、研究者たちにとって予期せぬ結果だった。
また、アフリカでは大型類人猿がエボラ出血熱で死んでいるが、ボルネオ島の現地調査では、そうした致死的な病気の証拠は見つからなかった。次いで研究チームは、ボルネオ島全域で行われたオランウータンの駆除に関する大規模な聞き取り調査や、地元の逸話にも着目した。「1つ1つの情報をまとめていきました」とフォークト氏は振り返る。
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