追従機能がついたオートクルーズコントロールで快適な高速クルージングを楽しみましょう!
高速道路を淡々とクルージングするような状況では、クルーズコントロールはとても重宝する装備です。これで速度を設定すれば、ブレーキを踏むかキャンセルボタンを押すまで、設定速度を維持して走り続けてくれます。普通に運転するよりも燃費が向上するのもうれしいことですが、メリットはそれだけではありません。
1時間もほぼ同じ角度でアクセルペダルを踏み続ければ、足首がかなり疲れてしまいますし、急にブレーキを踏もうと思っても思ったように足に力が入らない!なんて危険も防ぐことができます。このクルーズコントロールは、ここ数年で格段の進化を遂げた装備でもあります。それは前回お話しした自動ブレーキの登場とも無縁ではないのです。
現在のクルマはガソリン車であっても、「電気で走っている」といっても良いほど電子制御のカタマリとなっています。エアコンやオーディオ、ヘッドライトなどの装備は電気で動いていることはご存じでしょう。しかし、実際にはエンジンや変速機もコンピュータが制御していて、さらにはパワーウインドウやメーターなどもモーターだけでなく小さなコンピュータが組み込まれています。これによって電気信号をやりとりすることで、配線類の簡素化が可能になって軽量化できるからです。さながらクルマ自体がインターネットのように車内の部品が通信しあっているのが、最近のクルマたち、という訳です。
ガソリン車の場合、エンジンの加速力を調整するのは空気を取り込む量を調整するスロットルバルブを開閉させることで行ない、吸い込まれた空気の量に合わせてECU(エンジンコントロールユニット)が燃料の噴射量を計算して、燃料を噴射するインジェクターに指令を出しています。
以前はスロットルバルブをアクセルペダルと直接ワイヤーで結んで、引っ張って開閉させていました。つまりこのワイヤーを固定していたのが、従来のクルーズコントロールという機能でした。スロットルを一定にして巡航するものでしたから、周囲のクルマとは常に速度が同じという訳ではありません。ブレーキを踏めば即座に解除されるとはいえ、安全のためには車間距離をかなり大きく取る必要がありました。そのため高速道路でも交通量が慢性的に多い日本では“クルーズコントロール”は、なかなか使う機会がない装備だったのです。
しかしスロットルバルブをECUがモーターによって制御するようになった今、クルーズコントロールは非常に柔軟な制御ができるようになりました。さらにブレーキも完全な電子制御になり自動ブレーキを装備するようになったことで、積極的な速度のコントロールが可能になったのです。これにより交通量の多少にかかわらず、渋滞でさえも使えるほど賢い装備になりました。このクルーズコントロールの進化型は、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)と呼ばれています。
最新のACCは、渋滞時の発進停止の繰り返し(短時間の停止に限られます)にもそのまま追従してくれるものもありますし、路線逸脱警報のステアリングアシスト機能を利用して、少々のカーブなら道に沿ってステアリングを操舵すらしてくれる車種もあるほどです。こうなるとドライバーがステアリングに手を添えているだけで、高速道路を巡航していってくれます。
このように加減速とステアリング操舵を自動的にしてくれると、このACCが高度化して完全な自動運転に発展していくと思っている方も多いのではないでしょうか。確かに完全な自動運転といわれるレベル4までのロードマップでは、これらはレベル2に定義される技術レベルではあります。
しかし完全な自動運転は、自律走行するためにさまざまな周囲の状況を判断して、人間と同じようにアクセルやブレーキ、ステアリングを操作して、安全に走行を続ける能力を要求されます。それには異なる操作系を同時に調整して操縦するだけでなく、非常に高度でありながら、曖昧さを受け入れて状況判断ができなければなりません。AI(人工知能)がさらに進化して、人間の脳と同じように複雑に絡み合う要素を取捨選択できるような判断力まで身に付ければ、実現は可能になるでしょう。それくらい、皆さんは日頃脳を使って高度な判断をして運転操作を行なっているのです。
ACCは人間の脳と比べればまだシンプルなシステムといっていいものです。とても自動運転といえるレベルではありませんが、視点を変えればこれほど役に立つ装備もありません。渋滞が珍しくない高速道路で「クルマはついにここまで進化した」と思えるほど、快適な走りが味わえるのですから。
ステアリングを自分で操作することは、運転への集中力を適度に保つためにも大事です。前述の通りステアリングのアシスト機能も装備するクルマが増えてきましたが、道路状況がまだそうした装備に対応しておらず、高速道路でも車線などのペイントが確実に施されていない部分もあるなど、まだまだ実際の使用に問題がないとはいえない状況なので、安心して任せ切ってしまうのはとても危険です。
こう書くとACCは、非常に中途半端な装備という印象を持たれるかもしれませんが、使ってみれば渋滞でのストレスは大幅に軽減して、ドライブ後の疲労感は確実に少なくなります。高速道路を普通に走っていて、ボタンをポンと押すだけで後は前走車と一定間隔で巡航を続けてくれるのですから。しかもオーナーである自分だけにメリットがあるのではなく、周囲のクルマにもいい影響を与えてくれるのです。というのも、このACCが普及すれば渋滞中の追突事故を防ぐだけでなく、自然渋滞の発生も減らせることが期待できるからです。
実は交通量が多いことに加え、適切な車間距離を保てずに走行し、前走車の速度が落ちるような場所(下り坂から上り坂に変わる地点、サグといいます)で前走車より速度を落としてしまうことが自然渋滞の発生の大きな原因なのです。さすがにACCだけで渋滞の完全解消、とまでは行きませんが渋滞が緩和されることは間違いなく、普及すればするほどその効果は明らかになっていくハズです。渋滞中のわき見運転など不注意で起こる追突事故も、自動ブレーキのおかげで確実に減っていくことでしょう。
自動ブレーキと並んで、これから普及が進むACC。個人的には、運転を支援する装備はこのあたりで十分、あとは環境性能をひたすら引き上げることに尽力してもらいたいと思ってしまいます。なぜなら、自分でアクセルを踏んでクルマを加速させたときの爽快感、これはクルーズコントロールでは味わえないクルマ本来の魅力です。これを失ってしまうのなら、もはやクルマを運転するという行為は楽しみでは無くなってしまいませんか?
クルマがこれまでと同じように人々の移動手段として、またパーソナリティを演出する道具として魅力あるモノで在り続けるためには、クルマの性能だけが課題となっている訳ではないと感じています。燃料代や自動車税などの高すぎる維持費を何とかしてくれることが、クルマを楽しんでくれる人を増やす特効薬だと思うのですが、今のところ、エコカー減税以上の政策はなかなか示されません。特に若い人への税金の免除などがあれば、一気にクルマ離れが解消なんてことになるかもしれないと、思いませんか? 私たちにできる節約に自動車保険料も含まれますが、万一に備えるのが保険ですから、故障時にも使えるロードサービスや事故時の対応など、総合的に考えて選ぶことを忘れないでください。
次回は路線逸脱警報装置を中心に、ステアリングのアシスト技術について語ります。
ではまた!
※ 本記事は著者個人の見解・意見によるものです。
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※1 当社商品・補償内容などが前契約保険会社と異なるケースも含まれますが、当社商品、保険料にご理解いただいたうえでご契約いただいた7,412人のアンケート集計結果です。比較対象は加入中の保険会社から提示された継続保険料と当社契約保険料の差額で、お客様の申告によるものです。(アンケート集計期間:2017年1月-2017年9月)