10年前にこんなものがある!と紹介した顔ジャケラーメンだが、ミキジさんは今でも集め続けていた。
少し昔、ラーメンブームが起こり、カップ麺のフタにラーメン屋名物店主の顔写真が入りはじめた。永井ミキジさんがこれを「顔ジャケラーメン」として集めはじめたのをデイリーポータルZでも記事にした。
あれから10年、偶然再会したミキジさんが「まだ集めつづけてんですよ」という。ラーメンブームが落ち着き我々がそんなことを忘れていた頃、ミキジさんは一人集め続けていた。 空白の10年間、南洋の島に取り残された日本兵を迎えに行くつもりでミキジさんをたずねた。
1980年生。明日のアーというコントのユニットをはじめました。動画コーナープープーテレビも担当。記事はまじめに書いてます
前の記事:「姿勢矯正グッズはおれのだらだらを改善してくれるのか」 人気記事:「リカちゃん人形をダンボールで作ると泣けます」 > 個人サイト Twitter(@ohkitashigeto) 明日のアー 猫に小判、糠に釘、カップ麺のフタに顔永井ミキジさんがデイリーポータルZに顔ジャケラーメンのコレクターとして登場したのが2007年。
参考 デイリーポータルZ:顔ジャケラーメン試食会 この頃にはコレクションは100枚くらいで顔ジャケブームは「第三次」まで来ていたという。言っては悪いがラーメンブームの一発ネタと受け取ることも可能だろう。あれから10年。一体どうなったのだろうか。 10年前の記事を書いたデイリーポータルZ編集部の古賀さんとミキジさんを訪ねた。 コレクターの永井ミキジさん。最近はC級スニーカー集めでも有名。本業はデザイナー
ぼくはずっとここにいるよ大北:今でも頑張って食べてますか?
ミキジ:食べてますよ。今回あれから十年後っていう感じじゃないですか。皆さん今ご活躍されてますけど、僕はずっとまだここにいるっていう。 大北:(笑) 古賀:10年前のあそこに(笑) ミキジ:僕はただただ3分待って蓋を開けてラーメン食べてる。ループっていうか。矢沢永吉じゃないですけどあんたらの10年、俺の3分みたいな(笑) 大北:ループものから抜け出てないんだ(笑) ミキジ:みんなには安心してほしいんですよ。僕だけはここにいるからって。「昔集めてましたよね、カップラーメンのフタ」って言われるんですけど。今もだよって。 ラーメンを食べるのに「なんつッ亭の全員がなんでこんなに睨んでるのだろう」前回の記事でも紹介した名作
震災の町で売れ残る顔ジャケラーメン大北:元々はラーメンパッケージに知らない人物が出てくるのおかしいだろってところなんですよね
ミキジ:そうです。ラーメン屋の知らない店主が睨んでるジャケットになるのはどういう意味があるのかと。10年前の記事でも書いてましたけど、なんつッ亭の全員がなんでこんなに睨んでるんだろうって思ったんですよ。 古賀:食欲とは逆方向ですよね ミキジ:でも、やり続けてると色々気づくことあって。東北の震災があったとき、近所のスーパーを見に行ったら食材がほとんど売り切れてたのに、顔ジャケラーメンだけが全部残っていたとか。人は不安な時、顔ジャケラーメンは楽しめないんだなって。お化け屋敷と一緒で心に余裕がないと楽しめない。 大北:人間に余裕がある時のもの(笑) ミキジ:やっぱカップヌードルとかマジメなの買いますよ ミキジさんが「顔ジャケの中で一番良い」という理由はラーメンより前に顔が来ているから。ねじりはちまきはミキジさんが「天使系」と呼んでいるジャンル。こういうものは余裕があるときにこそ食べたい
顔ジャケ不毛の時代が来てミキジさんがパニックに古賀:2007年の記事は第三次顔ジャケラーメンブームの時で「もう飽和してます」というところまで来てたんですよね
ミキジ:あのあと第五次顔ジャケラーメンブームまでいったんですけど、顔ジャケラーメンを語る上で重要だった?工場「十勝新津製麺株式会社」が2009年に社名を「株式会社とかち麺工房」にしたあと2014年に閉鎖したんですよ。 「これは氷結乾燥ブームが来て十勝新津製麺の社長さんですね」もう顔ジャケラーメンの工場の社長が出てきているという。
ミキジ:そこを買い取った渡辺製麺ってところが結婚式や同窓会の記念品であなたのオリジナルラーメンを作りますよってサービスはじめたりもしたんですが、それは僕もう無理じゃないですか。出席できないし(笑)。そのサービスも今年で終わるみたいですけど。それでとかち麺工房がなくなってから顔ジャケ不毛の期間に入って…
大北:顔ジャケ氷河期だ ミキジ:顔ジャケ氷河期とともに僕がパニックになるという(笑) 古賀:(爆笑)精神の安定が ミキジ:そう。精神の安定がなくなって僕がカップ麺以外の袋麺とかカレーとか顔があるものを全部買い始めたんですよ 大北:(笑) 2007年の記事を書いた古賀さん。終始笑いっぱなしでインタビューが行われました。
ミキジ:もう顔がないのやばい!と思って。食べたくないのに顔がついてる食材を買いはじめて
古賀:あっ、これもう『私が作りました』系のやつも買ってるじゃないですか! 精神が不安定になりすぎて(笑) ミキジ:そうなんです。野菜の生産者とか、キリがないじゃないですか。でも今思うとあの時「私が作りました」の写真内で抱かれていた子供が大きくなって、新商品を抱きかかえて写ってるなっていうのがあるんですよ! 後を継いでる。あそこ攻めきれてなかったなって。 大北:子供が出てたらそれも買わないといけないんだ… ミキジ:今後は買おうかなと…。あとはもう韃靼そばとか餃子と顔のあるもの全部買い始めて。 大北:本当に氷河期がやってきて人類がとる行動ですね(笑) 顔ジャケラーメンが不作となり「私が作りました」系のものに手を出し始めたミキジさん
お菓子に埋まってるうどん屋の店主。広義の顔ジャケラーメンである
ラーメンを離れていく顔ジャケミキジ:もう、ただただ顔を求めていってんですよね。ぼく今パスタきてるなって思って。 海外は海外で顔ジャケラーメンがあるんですけど、まだ袋麺文化で。そうなってきたらパスタ結構やばいジャケあるぞってなって。パスタを今買うようにはしてるんですよ。これは絵なんですけど。
大北:あ、パスタのキャラクターも範囲に入ってきたんですね(笑) 広義の顔ジャケラーメンとして顔イラスト付き袋のパスタまで集め始めたミキジさん
ミキジ:やばいですよ今。こんなんもみんな見逃してるでしょ
大北:これは…味噌汁? ミキジ:見てくださいこのヒエラルキーを。寿司屋の味噌汁を売ってるから、味噌汁、寿司、店主の順番で来てるでしょ。最高でしょ。こんなの。こっちもお吸い物、うなぎ、あの店主の順なんです。名店の味巡りっていうシリーズ。 大北:(笑) 寿司屋の味噌汁は手前から「味噌汁」「寿司」「店主」の順で強調される。ここにはヒエラルキーが存在する
ミキジ:ちなみに今飲まれてるほうじ茶は僕の中で最大の接待ですから。これはダイソーなんですけど。
古賀:やばいですね。埋まってるもんねお茶にね ミキジ:たしかこれまだ売ってるはず!と思って。さっき買ってきたんですよ。 顔ジャケラーメンから、思えば遠くにきた。「茶に埋まってる顔」である。取材に来た我々にこのお茶を出してくれたそうだ。気づくわけがない
|
|
▲デイリーポータルZトップへ |