本場越えのワインも?ニューワールドワインの魅力を紹介!【2】オーストラリア、チリ、南アフリカのワイン
前回は、ニューワールドの中でも、生産量4位のアメリカと、5位のアルゼンチンのワインを紹介しました。どちらも、広大な国土を生かして、多種多様なワインを作っています。カリフォルニアのオーパス・ワンなどは、世界のトップワインの仲間入りをすでにしている、と言っても過言ではありません。
今回は、ニューワールドと呼ばれる土地のうち、オーストラリア、チリ、南アフリカのワインについて紹介します。これらのワインは、すでに日本にも多く輸入されており、デイリーワインとして楽しまれています。
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オーストラリアのワインの魅力とは?
まずは、オーストラリアのワインから紹介します。オーストラリアは、世界第6位の生産量を誇ります。
オーストラリアワインの特徴
オーストラリアワインの歴史
オーストラリアのワイン作りは1820年ごろはじまりました。まだまだワイン200年足らずの、ワインの歴史としては浅い国になります。ヨーロッパからの移民が、ブドウの栽培に成功し、ワインを作りはじめたことがきっかけだと言われています。当時、オーストラリアはイギリスに輸出用のワインを生産していたのですが、その時主に作られていたワインは、甘口の酒精強化ワインだそうです。
その後、徐々にオーストラリアでも、赤ワインや白ワインが作られるようになり、外国から技術が導入されていく中で、オーストラリアでも質の高いワインが生み出されるようになっています。最近では、ニューワールドの旗手として、オーストラリア独自の研究やワインの開発も進んでおり、世界中に影響を与えるようにまでなっています。
多様性
オーストラリアワインを一言で表すならば「多様性」でしょう。オーストラリアは多民族主義をとっており、多様な文化を尊重しています。
その文化の影響を受けて、また、広大なオーストラリア大陸の影響もあってか、オーストラリアでは多種多様なワインが作られています。ワインの生産地域は60以上あり、また、栽培されているブドウの種類は130種類を超えています。
その中でも、最も代表的なブドウの品種はシラーでしょう。リースリングやシャルドネも栽培されています。フランスのプチヴェルド、スペインのテンプラニーリョ、イタリアのサンジョベーゼなど、様々な国の土着ブドウが栽培されているのも特徴といっていいでしょう。
風土とワイン
オーストラリアのワイン産地の多くは、比較的冷涼な大陸南部の沿岸部に集中しています。大規模な栽培を行っているところが多く、収穫量や品質は例年安定しているのが特徴です。ブドウは北半球とは反対で、3月から4月にかけて収穫されます。オーストラリアのワインは、熟成期間が短く、フレッシュな味わいが特徴と言えるでしょう。
オーストラリアワインの主な産地
オーストラリアの主なブドウ栽培地域は、南オーストラリア、ヴィクトリア、ニュー・サウス・ウェールズの3つの州です。その他にも、西オーストラリア、クイーンズランド、タスマニアなども有名です。それでは、それぞれの特徴を見ていきましょう。
南オーストラリア
南オーストラリアは、オーストラリア国内のほぼ半分を生産する、主要なワイン産地です。夏は暑く、冬に雨が多い気候は、ブドウ栽培にぴったりだと言えるでしょう。赤ワインではシラーが、白ワインではリースリングが特に有名です。主要な産地には、バロッサヴァレー、エデンヴァレー、クレアヴァレーなどがあります。
- バロッサヴァレー
- エデンヴァレー
- クレアヴァレー
ヴィクトリア
ヴィクトリアは、面積こそ小さな州であるが、ブドウの栽培が盛んで、ワインの生産量ではオーストラリア3位の規模を誇ります。海沿いの土地であり、海風の影響によりピノノワールやシャルドネが主に栽培されている一方、シラーも多く栽培されています。主要な産地には、ヤラヴァレーやモーニントン・ペニンシュラなどがあります。スパークリングワインやデザートワインなど、様々なワインが生産されており、オーストラリアのワインの多様性を物語る州であるといえるでしょう。
ニュー・サウス・ウェールズ
ニュー・サウス・ウェールズは、オーストラリアのワインの発祥の地と言われています。南オーストラリアに比べると生産量は少ないが、ワインの名産地ハンターバレーがあるなど、質の高いワインを生産しています。ニュー・サウス・ウェールズは、ハンターバレーの辛口のセミヨン白が有名ですが、他にも、州内ではシャルドネ、シラーズ、カベルネソーヴィニヨン、ヴィオニエなどが作られています。
クイーンズランド
クイーンズランドは、オーストラリアの北東部に位置します。主に、シラーズ、カベルネソーヴィニヨン、グルナッシュなどを用いた赤ワインや、シャルドネやセミヨンを用いた白ワインが醸造されています。主な産地として、グラニットベルトやサウスバーネットなどがあります。
タスマニアの特徴
タスマニア島は、オーストラリアの南東部にある島であり、その起伏に富んだ地形と海風による冷涼な気候が特徴です。主にピノノワールとシャルドネが栽培されており、スパークリングワインの生産量が多いことも特徴です。
西オーストラリア
西オーストラリア州は、オーストラリア国内で最も広大な面積ですが、ワインの産地は州内の南西の一部に固まっている。気候はボルドーに似ていると言われており、カベルネソーヴィニヨン、シラーなどが栽培されています。近年では、マーガレットリバーやグレート・サザンなど新しい地域が開発されています。
オーストラリアのおすすめワインは?
では、実際に、オーストラリアのワインのおすすめを紹介します。
ペンフォールズ グランジ
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オーストラリアを代表するワインともいえるのが、ペンフォールズの「グランジ」です。ペンフォールズは、1844年創業のワイナリーで、イギリスから移住してきた医師クリストファー・ローソン・ペンフォールズ氏が患者向けの酒精強化ワインを作り始めたことが始まりだと言われています。
このグランジは、1950年代にはじめてつくられ、世界にその名をとどろかせました。現代でも、60年以上にわたりオーストラリアワインの最高峰であり、オーストラリアのワイン界を牽引しています。
このグランジは、独自の製法によって作られています。ボルドーやブルゴーニュの場合、基本的には単一の畑のブドウのみを使用しますが、グランジの場合は、「様々な畑や地域からブドウを寄せ集めてブレンドして、最上のワインを造る」という哲学によって生み出されます。この方針だけは、60年近く変わらずに、継承されています。
グランジは、パーカーポイントで2度の100点を獲得し、さらに、2013年には、「ワイン&スピリッツ」の「ワイナリー・オブ・ザ・イヤー」を獲得するなど、世界にその名をとどろかせています。世界中にファンの多いワインになります。
チリワインの魅力とは?
続いては、チリワインについて、紹介したいと思います。
みなさまも、チリのワインは、聞きなれた方も多いと思います。なぜ、大国でもないチリのワインの名前を、ここまで良く聞くのでしょうか。
日本はお得意さん
実は、なのです。2007年に日本とチリとの間で、EPAと呼ばれる経済連携協定が発効したことで、ワインにかかる関税も減少したことから、チリワインの輸入量が急増しました。金額に換算すると、まだフランスワインの4分の1程度ですが、量ではフランスを凌駕するほどの量を輸入しているのです。
チリワインの道のり
そんなチリワインですが、チリでのワイン作りは、16世紀にはじまったと言われています。スペインの征服者と共に渡って来たカトリック宣教師の手によって、ブドウの苗木が持ち込まれたのがチリワインの起源になります。
17世紀以降も、ブドウ栽培は拡大の一途を辿りました。スペインからの独立した直後には、直後の19世紀、フランス系品種の導入がなされ、合わせて、醸造専門家が技術を伝えたことから、チリのワイン作りは更に仮想します。1887年には、チリワインがヨーロッパへ初めて輸出され、各国の博覧会で好評を博したそうです。
チリワインの今
現在では、新しい生産技術の導入も急ピッチで進み、栽培技術も進歩し、品質も向上したことから、比較的安価なテーブルワインのみでなく、国際的なワインコンクールで高く評価されるようなプレミアムワインも生産されています。
チリワインの特徴は?
チリは、太平洋側にある、南北に細長い国になっています。国全体が地中海性気候であり、太陽の恵みが多い、ブドウ栽培に適した国であると言えるでしょう。中でもセントラルヴァレーがある中央部は、昼夜の温暖差が激しく、ブドウ栽培に適した気候条件を持っているため、多くのブドウが生産されています。
チリのブドウ栽培の特徴は2つあります。1つは、害虫の心配がないこと、もう1つは、オーガニックであることです。
- 害虫の心配がない
- オーガニック
害虫を寄せ付けない土地
ワイン作りに支障をきたすのが、害虫のフィロキセラ問題です。19世紀後半から、世界中のブドウの木が、この害虫に悩まされていました。しかし、チリでは、その土地の場所柄、フィロキセラによる害を受けなかったのです。このため、フランスから持ち込まれた苗木が現在も子孫を残しています。
防腐剤不要
また、先ほどもいったように、チリは気候・土壌に恵まれています。夏は乾燥しているため、菌やカビ対策の防腐剤も必要ありません。害虫も少なく、無農薬でのぶどう栽培に適しているため、チリではオーガニックワインが盛んにつくられているのです。
フランスの影響
チリはフランスの技術の影響を受けています。よって、栽培されるブドウも、フランス系の品種が多くなっています。主なブドウ品種としては、カベルネソーヴィニヨンがまず挙がるでしょう。カベルネソーヴィニヨンは、チリでのぶどう収穫量において赤ワイン用品種の45%強を占めておりチリカベとも言われるチリを代表する品種です。
他にも、黒ブドウではメルロー、カルメネール、シラーなど、白はソーヴィニヨンブラン、シャルドネ、セミヨン、ペドロヒメネスなど、多くの品種が栽培されています。ワイン作りもフランスの影響を受けており、赤ワインは長期熟成型、白は樽貯蔵による重厚なものがよく作られていますが、近年は軽いタイプも作られています。
チリワインのおすすめは?
それでは、チリワインのおすすめワインを紹介しましょう。
コノスル カベルネソーヴィニヨン レゼルヴァ
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コノスルという名前を、一度聞いたこともある人も多いのではないでしょうか。自転車のラベルで知られるコノスルは、1993年に設立されたワイナリーで、歴史は新しいですが、常に時代を先取りする取り組みで、すでにチリ国内で有数のワイン輸出量を誇るようになりました。
スクリューキャップの採用や有機栽培、新たな土地を開拓してのぶどう栽培など、挑戦的な取り組みを続けている生産者で、「ヴァラエタル」「レセルバ」「シングルヴィンヤード」「20バレル」など、様々なシリーズを生産しています。
中でも、レゼルヴァシリーズは、豊富なタンニンと酸味があり、バランスがとれた、エレガントで深い味わいが特徴です。鮮烈なカシスやブラックチェリーの香りに、煙草のような複雑性な香り、スパイスやミントの香りが楽しめます。豊富なタンニンと酸味があり、長い余韻が楽しめるワインです。価格も1,000円前後で販売されており、デイリーにも楽しめるワインになります。
アルマヴィーヴァ
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アルマヴィーヴァは、チリにおける最高級ワインとして知られています。オーパス・ワンも手掛けたバロン・フィリップ・ロスチャイルド氏と、チリで最大のワインメーカーとして知られるコンチャ・イ・トロが力を合わせて作ったワインになります。
コンチャ・イ・トロ社が所有する、カベルネソーヴィニヨンの栽培に最適な畑で収穫されるブドウに、ムートン・ロスチャイルドがボルドーで培った技術が注ぎ込まれ、完成したワインになります。
カベルネソーヴィニヨンを主体に、チリを代表するブドウ品種、カルメネールなどを約20%ブレンドしたワインは、外観は深みのある濃いルビーレッドの色調で、ブルーベリーやカシスなど黒系果実のジャムを思わせる、果実のアロマが香ります。
味わいはスムースで、ベリー系果実の甘みが際立っており、いきいきとした酸やしっかりとしたタンニンが見事にまとまっている、余韻の長いワインになります。1本1万円を超えるものもあり、チリワインの中では最高クラスですが、スーパータスカンなどと比較されることも多いワインになります。
南アフリカのワインの魅力とは?
最後に、南アフリカのワインについて紹介します。
南アフリカの気候とワイン
アフリカという名前と、ワインとが結びつかない方も多いかもしれません。しかし、南アフリカはアフリカ最南端であり、恵まれた気候と自然豊かな土壌で良質なブドウが育ちやすく、魅力的なワインを作る産地として世界中から注目を集めているのです。生産量も多く、世界第8位になっています。
南アフリカのワインの軌跡
南アフリカ共和国でワインが初めて作られたのは17世紀で、ケープ植民地時代に作られたそうです。その後、17世紀後半に、フランスの人々が移民として移住をしたことから、南アフリカのワイン産業は発達しました。
低コストで良質なワインが作れることから、海外のワイン生産者も、南アフリカでワインを作るようになり、そのため、技術革新も進みました。1970年代以降は高級ワインにも力が入れられ、1990年代に民主化が進められてから南アフリカのワインは世界各国に輸出されるようになりました。
今では、コストパフォーマンスがよく、味わいもよいことから、世界中で親しまれるワインへと発展しています。
南アフリカのワインの特徴は?
南アフリカは、アフリカの最南端に位置し、ブドウを栽培するのに好条件の気候が揃っています。生産の中心地である西ケープ州は、夏は温暖で乾燥し、冬は冷涼で雨が降る地中海性気候であり、南フランスと同じような気候と言われています。
また、海に隣接した土壌は、ケープドクターと呼ばれる、強風で守られており、ホコリや悪い空気から、ブドウを守っています。結果、病気や害虫の心配もあまりないことがメリットの1つです。
環境への配慮
南アフリカのワインの特徴的な点として、環境に配慮したワインづくりを行っているところが挙げられます。南アフリカでは、1998年より減農薬や減酸化防止剤、リサイクル方法などを定めたガイドラインを制定しました。
約20年たった現在では、95%以上のワイナリーがこのガイドラインに沿ったワインづくりをしています。また、品質保証とトレーサビリティシステムに加え、2010年からはサステイナビリティを保証するシールを採用し、土地を大切にし、生物の多様性を保護しようと取り組んでいます。
南アフリカのブドウ
南アフリカで栽培されているもので有名なのは、白ブドウのシュナンブランです。昔から「スティーン」と呼ばれ親しまれており、辛口から甘口、スパークリングワインまで幅広く使われてきました。近年では、国際的な競合を視野に入れて、ヨーロッパ優良品種、シャルドネやソーヴィニヨンブランの人気が高まりつつあります。
黒ブドウでは、カベルネソーヴィニヨンや、ピノノワールとエルミタージュを交配して開発された、南アフリカ独自のピノタージュ、他にシラー、メルローなどが広く栽培されています。以前は白ブドウの生産量が多いのが特徴でしたが、近年は赤ブドウが輸出の増加に伴い、増えつつあり、白55%、赤45%くらいの割合で作られています。
南アフリカの主な産地
主な産地は、西ケープ州、北ケープ州、東ケープ州、クワズールナタール州、リンポポ州に分けられます。中でも西ケープ州は生産者の数、有名銘柄ワインが共に多く、ワイン産業の中心となっています。
特に西ケープ州のコースタル地域は、カベルネソーヴィニョンやメルローなど赤のボルドー系品種を造るステレンボシュ地区や、グルメタウンとしても有名なフランシュック地区、優れたソーヴィニヨンブランを産出するコンスタンシア地区など、有名なワイン生産地区がたくさんあります。
南アフリカのおすすめワインは?
では、南アフリカのおすすめワインを紹介します。
ロバートソン CR No1 シャルドネ
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ロバートソン・ワイナリーは、南アフリカで3番目に大きいワイナリーです。1941年に創業した、歴史あるワイナリーで、南アフリカ屈指のコストパフォーマンスのよいワインをつくっています。
その中でも、このCR No1 シャルドネは、3千円台と、南アフリカのワインの中では比較的高額ですが、オレンジやレモンのような柑橘の香りと、マロングラッセ、ピーナッツのような香ばしく甘い香り立ちが主体で、実際に飲むと、バターやミルキーさを感じる要素があり、ボリューム溢れるワインに仕上がっています。
ポールクルーバー シャルドネ
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ポールクルーバー・ワイナリーは、南アフリカ・ケープタウン周辺では平均気温が最も低く、良質のブドウが採れる地域として知られる、エルギン地区にあるワイナリーです。
エルギン地区をワインで有名にした立役者でもあり、下記のトップ10に選ばれるなど、世界的な評価も高くなってきています。
- 南アフリカで最も急速に伸びているワイナリーのトップ10
- ベストバリュー・ワイナリーのトップ10
- 最もエキサイティングで大発見のトップ10
オーナーのポールクルーバー氏は、徹底して質にこだわるワイン作りをコンセプトにしており、ワイン作りの工程は、ひとつひとつ丁寧な手作業で行われています。
また、所有する果樹園やワイナリーの黒人労働者、その地域の住民達の生活向上を目的としたタンディ・プロジェクトを提案し、オリジナルブランドのワイン「タンディ」を生産するなど、生活環境の改善にも力を入れています。
その代表ワインであるシャルドネは、酸味が強く、香りが複雑で、樽の感じが強いのが特徴です。柑橘類やナッツの複雑な香りと、強めの酸味、ミネラル感があとに残り、2,000円代とは思えないコストパフォーマンスの良さが特徴です。
まとめ
オーストラリア、チリ、南アフリカは、それぞれが豊かな大地を持ち、ヨーロッパからの技術を受けて、独自のワインを生産しています。また、ワインの歴史が比較的新しいこともあり、コストパフォーマンスに優れたワインが多いのも特徴です。
それぞれの地域に、それぞれの魅力があるのも、ワインのすばらしさの1つです。コストパフォーマンスの高いワインは、みんなで集まってワイワイ飲むのもおすすめですね。
次回は、日本のワインについて、その特徴を紹介したいと思います。
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