言うまでもなく、企業はネット詐欺やハッキングをはじめとしたサイバー犯罪を防ぐために斉藤を雇っていた。
「弊社の情報セキュリティに対して助言をしてもらうため」(ファーストリテイリング広報部)
「斉藤氏はサイバーセキュリティ分野の専門家としてのアドバイザー」(PwCジャパン広報部)
にもかかわらず、起きてしまった詐欺事件。もっともJALだけは次のように説明した。
「斉藤氏は'15年頃から当社の(経営)戦略アドバイザーとして、アドバイスをしてもらっていました。その中で昨年6月に非常勤の執行役員をお願いした次第です。サイバーセキュリティ部門ではなく、新たにデジタルイノベーション推進部という組織を立ち上げたため、担当役員に就任していただきました」
今度の詐欺事件における機密情報の漏洩について、斉藤の関わりや責任はないのかと問うと、
「部署も役割も全く違いますので、斉藤氏は今回の詐欺と関連がなかったと考えております」と答えながら、こうも話した。
「事件については、担当者のパソコンのウィルス感染や不正アクセス履歴をITの企画本部で調べました。が、特にそういった不正な通信先や新しいログイン履歴は確認できませんでした。私どもが確認した限りでは、そういう履歴は見つからなかったということです」
斉藤の周辺で起きた〝事件〟に関しては、日本の公安当局や米国諜報機関も関心を寄せている。
「国会事故調の報告書が横流しされていた疑惑もあるため、政府の参与としてかかわってきた内閣府のサイバーセキュリティ戦略は大丈夫なのかと不安視する声が上がっています。
実は、斉藤の経歴詐称が発覚したのと同時期に、六本木周辺で活動していた香港の14Kと呼ばれる犯罪集団のメンバーが消えたという情報がある。14Kはマフィアですが、中国の諜報機関の出先のような動きもする。斉藤自身の諜報活動は確認できていないが、彼を利用しようとする人間が周りに集まっていた可能性はある。
FBIが同盟国である日本を通じて機密情報が中国に流れてはいないかと不安に感じているのは確かで、実際にそのようなメッセージを送ってきている」(公安当局者)
当の斉藤に尋ねてみた。
「私の考えはすでにブログで公表した通り、関係者に多大なご心配とご迷惑をおかけしたことを申し訳なく思っております。なお、ジュリアーニファンドに関するご質問及び中国に日本のサイバーセキュリティに関する指針が流れたとする点についてのご質問は、私には全く心当たりがありません」
内閣府参与の経歴詐称から端を発したさまざまな疑惑。日本の安全保障への不信感を抱いているのは米国だけではない。
(敬称略)