国際・外交

斉藤ウィリアム浩幸氏に「国家機密」横流し疑惑

「霞が関のショーンK」もう一つの顔

「山本先生」「ウィリー」

斉藤は黒川の名前を使い、医師免許を持ったサイバーセキュリティの専門家として事故調に潜り込む。黒川自身は「斉藤には事故調で使うスマホやパソコンの購入を任せた」と周囲に話しており、もっぱら中国製PCのレノボやカナダ製スマホのブラックベリーを調達したという。

「斉藤氏は黒川先生とルースの名を場面に応じて使い分け、存在を大きく見せていました。事故調のCTOであると騙って議員会館の入館証を手に入れ、国会議員と接触を図っていきました」

とは霞が関の政府関係者だ。斉藤はことあるごとに自民党の有力政治家といっしょに撮った写真を見せて、親密度をアピールしてきた。とりわけ国会議員の中で斉藤が頼りにしたのが、経産大臣の世耕であり、自由民主党総裁ネット戦略アドバイザーの山本一太だった。いずれも安倍政権における重要人物だ。

「とくに山本一太さんとは親しいのでしょうね。斉藤氏と山本さんは『山本先生』『ウィリー』と呼び合う間柄でした」

 

先の政府関係者はこうも話した。

「そうして彼は外務省に中国製のソフトウェアを導入しろ、と内閣府からプレッシャーをかけていたと聞いています。また、事故調の報告書のサマリー(要約)を公式なリリースの前に、英語に翻訳し外国人記者など各所に配っていました。それらが事前に中国や北朝鮮に漏れていた危険性も否定できません」

斉藤が日本の名だたる企業・団体の役員や顧問に就き、それなりの報酬を得られたのも、その黒い経歴のおかげだった。だが、偽りが判明したサイバーセキュリティの専門家という触れ込みは、企業にとって大きなリスク要因となる。

なかでも目下、サイバーセキュリティの世界で疑惑の目が注がれている企業が、昨年ネット詐欺に遭ったJALである。7月から9月にかけ、電子メールで届いた航空機リース料と貨物地上業務委託料金のニセ請求書に乗せられ、3億8000万円も振り込んでしまった。ネット版の振り込め詐欺だ。

斉藤がJALの非常勤執行役員に就任したのが、まさにこの直前の6月。サイバーセキュリティの専門家を迎え入れた直後に起きただけに、どうなっているのか、と斯界では誰もが首を捻っているのだ。セキュリティ会社の担当者に尋ねると、こう説明してくれた。

「担当者は普段と変わらぬ様式で送られてきた請求書にだまされ、振り込んでしまった。つまり、取引の関係者しか知りえない請求書やアドレスが外部に漏れてしまっていた可能性が高い。斉藤氏がこの事件でどのような関わりがあるのか不明ですが、その解明がなされていないのです」

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