(英フィナンシャル・タイムズ紙 2018年2月14日付)
米初代財務長官アレクサンダー・ハミルトンの肖像が印刷された現行の10ドル紙幣(2009年3月29日撮影、資料写真)。(c)AFP/Karen BLEIER〔AFPBB News〕
唯一恐れるべきこと、それは恐れそのものを感じなくなることだ。
ウォーレン・バフェット氏がしばしば引き合いに出す投資のグル(導師)、ベンジャミン・グレアムは、市場のことを感情の起伏が激しい「ミスター・マーケット」というキャラクターになぞらえていた。
ミスター・マーケットが愉快な存在に思えるのは、彼が暗く沈んでいるときではなく上機嫌でいるときかもしれない。しかし、危ないのはそういうときだ。
過度な楽観は、過度なリスクを取る行為、資産価格のバブル、そして金融・経済危機へと連なっていく際に当然見られる前兆だ。
2月5日の週の市場の動揺は、まさに必要なことだった。もっと早い時期に起こらなかったことが残念だが、恐れる気持ちが戻ってきたことは大歓迎だ。
同僚のギャビン・デービスが本紙フィナンシャル・タイムズのコラムで指摘しているように、今回の相場下落はそれほど大きなものではない。2月12日夕刻の株価は、直近の過去最高値を7.5%下回るにすぎなかった。
エール大学のロバート・シラー教授が開発した長期的な株価指標である、景気循環調整後ベースの株価収益率(PER)もこれまでの水準をまだ上回っており、1929年と1998~2001年の2局面に次ぐ高みにある。
ボラティリティーの急上昇に不安を抱く人もいるかもしれないが、これは自然なことであり、有用なことでもある。おそらく市場の慢心を諫めるのに貢献してくれるだろう。